2009年08月25日

●「2016年以降に米経済は破綻!?」(EJ第2641号)

 伊藤貫氏の論文の続きです。第2の理由「今後、米国の軍事力
・政治力が、東アジアから撤退」について考えます。
 既にここまでの検討において、少なくとも在日米軍基地からは
米空軍と海兵隊がグアムやハワイに撤退することについては指摘
しています。中国のミサイル攻撃に対処するための措置というの
がその表向きの理由です。しかし、世界最強の第七艦隊は神奈川
県の横須賀海軍基地に健在であるし、韓国には米陸軍を主力とす
る在韓米軍がいます。
 ここで、第七艦隊について述べておく必要があります。かつて
民主党の小沢代表代行が「米海兵隊はいらない。第七艦隊だけで
十分」といって物議を醸しましたが、どれほどの日本人が第七艦
隊について知っているでしょうか。とにかく日本人は軍事につい
て疎いと思います。しかし、小沢氏にいわれるまでもなく、米国
は海兵隊のグアム移転を決めているのです。
 さて、第七艦隊というのは、東経160度線以東の東太平洋を
担当海域とする第三艦隊とともに米太平洋艦隊を構成しているの
です。旗艦――司令部は、横須賀海軍基地を母校とする「ブルー
・リッジ」上にあります。旗艦には、海軍中将が座乗することに
なっています。現在の司令官は、ジョン・ミラー・バード海軍中
将です。横須賀を中心として、長崎県佐世保市、沖縄県、韓国の
釜山、浦項、鎮海、シンガポールなどに基地を展開しています。
 航空母艦――原子力空母は「ジョージ・ワシントン」を主力艦
とし、50〜60の艦船、350機の航空機を擁しており、水兵
は平時2万人、戦時には6万人が動員されます。
 なお、日本に関係のある米軍についての知識を得るのに、一番
手っとり早いのは次の番組です。2週間に1回ぐらいですが、か
なり内容のあるレポートを提供してくれます。日高義樹氏が直接
米軍の司令官や米国の要人に質問したり、実際に日高氏が原子力
潜水艦に乗ってリポートしたりします。確か6月だったと思いま
すが、第七艦隊の旗艦「ブルー・リッジ」に乗船してのリポート
もあったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    日高義樹のワシントン・リポート/テレビ東京
    日曜/16時00分〜17時15分
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 これだけの米兵力が東アジアに展開していることの重みは大変
なものであり、これでは中国や北朝鮮はちょっと手が出せないの
です。しかし、北朝鮮が実戦で使用可能な核兵器を持つことにな
ると、朝鮮半島に緊急事態が生じたときは、第七艦隊は北朝鮮の
ミサイル攻撃を避けて、はるか洋上に避難する体制をとるという
のです。このように、日米安保条約は完全に空洞化してしまって
いるといえます。
 伊藤貫氏の論文ではもっと重要なことが指摘されています。米
軍がこのように自国の防衛のためではなく、その国益のために世
界中に軍隊を展開するには当然のことですが、膨大なお金がかか
ります。米経済がしっかりしているときはいいのですが、現在米
経済は大ピンチなのです。
 今年の米国の財政赤字はGDP比13%程度なのです。米経済
の見通しについては楽観論と悲観論がありますが、楽観論であっ
ても毎年GDP比5%以上の財政赤字が続くといわれています。
 米国で最も優秀な投資家であるウォレン・パフェット氏は、米
経済について、次のように予測しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2016年以降のある時点で、深刻な財政危機と通貨危機が米
 国内に政治的動乱を惹き起こすだろう。
                 ――ウォレン・パフェット
―――――――――――――――――――――――――――――
 さらに不安なことがあります。中国の軍事予算の実質規模なの
ですが、2010年代後半にも米国を凌ぐようになるといわれて
います。それと同時期に、購買力平価で測定した中国の実質経済
規模も世界一になると考えられます。
 もっとわかりやすくいうと、為替レートで測定した名目GDP
の値に関係なく、中国人が実際に消費する財・サービスの総量が
世界一になるということです。
 2010年代の後半期に中国が実質的規模において米国を抜き
ちょうどその時期に米国が深刻な財政危機と通貨危機に陥る――
パフェット氏はその時期を2016年と予測しているのです。
 現在は既に2009年後半です。したがって、あと7年後とい
うことになるのです。そうすると、何が起きるでしょうか。
 きっとそのとき米統領は、次の決断を下すことが予想されるの
です。オバマ氏が再選されていれば、オバマ政権の任期中に起き
ると思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカの勢力圏を縮小させる。東アジア地域の覇権を中国に
 譲渡して、米軍を国内に引き揚げる。     ――伊藤貫氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 伊藤貫氏は、米経済が深刻な状態に陥る予測の裏に次の事実が
あることを指摘しています。
 1つは、戦後生まれのベビーブーマーが大量に引退する時期で
あるという点です。彼らの86%は、平均貯蓄率の高い白人なの
です。しかし、2000年から2007年までの人口増加統計に
よると、白人の比率は約30%――人口増加の過半数を占めるの
は、貯蓄率の低いヒスパニックと黒人なのです。
 2つは、米国の医療費の増加です。現在はGDPの17%です
が、2010年代末には24%に達すると予測されています。現
在、オバマ政権の進めている医療保険拡大策は医療費の増額をも
たらす政策なのです。
 過少貯蓄体質の悪化と医療費国家負担の増加によって、米経済
は2010代後半期に深刻な財政危機に陥るというのです。これ
が第2の理由です。      ―――[オバマの正体/31]


≪画像および関連情報≫
 ●ヒスパニックとは何か
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  日本においてヒスパニックとは、メキシコやプエルトリコ、
  キューバなど中南米のスペイン語圏諸国からアメリカ合衆国
  に渡ってきた移民とその子孫をいう。ヒスパニックは人種概
  念ではなく、自分あるいは先祖がスペイン語圏のラテンアメ
  リカ地域出身であるかどうかという出自の意識、換言すれば
  自分をヒスパニックと思うかどうかというアイデンティティ
  の概念である。           ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

第七艦隊の旗艦と空母.jpg
第七艦隊の旗艦と空母
posted by 平野 浩 at 06:41| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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