2009年08月19日

●「米空軍と海兵隊が日本を離れる!」(EJ第2637号)

 米国太平洋空軍のチャンドラー司令官は、まだ40代の若さで
あるそうです。彼がまとめた「パシフィック・ビジョン」はどう
いう内容なのでしょうか。
 「パシフィック・ビジョン」の全貌はもちろん明らかになって
いないのですが、その骨子は日高義樹氏の本に書いてあるので、
その概要をご紹介することにします。
 この新構想は、米空軍を日本本土から南に下げ、グアム島とハ
ワイ、アラスカの3つを拠点にするというものです。これについ
てチャンドラー司令官は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカ空軍の太平洋における拠点はハワイ・オワフ島のヒッ
 カムにある太平洋防空宇宙センターである。アメリカ空軍の戦
 闘部隊は、グアム島とハワイ、そしてアラスカの三つの地域に
 分散して展開される。
        ――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
                        徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 グアムとハワイとアラスカ――ハワイを頂点とし、グアムとア
ラスカを底辺とする三角形の戦略(トライアングル戦略)であり
その他の地域は米国にとっては補助的な基地になるわけです。つ
まり、日本に展開する米空軍の三大基地――青森の三沢、東京郊
外の横田、沖縄の那覇は米空軍にとって単なる前線基地ないし補
給基地に過ぎなくなります。
 なかでも横田基地は、これまで極東アジアにおける軍事的中心
とされてきたのですが、このトライアングル戦略によって、横田
の戦略指揮所の戦略的重要性はきわめて小さくなります。
 これらの事態はこれからそうなるのではなく、既にそうなって
いるのです。先の北朝鮮のテポドンミサイルの打ち上げ情報もハ
ワイやホワイトハウスに送られた後で横田に届いているのです。
そのときテポドンは日本上空を通過中だったのです。
 それは米国の軍事戦略の変更に過ぎないという人がいるかもし
れません。むしろ米軍が引き上げることによって、基地のトラブ
ルが解消するから良いと考える人もいるでしょう。
 しかし、これほど日本の国益と独立に大きくマイナスなことは
ないのです。日本の国益を害する恐れのある国といえば、中国と
北朝鮮ですが、それらの両国が核兵器とミサイルを持ち、新しい
脅威になろうとしている、まさにそのときに米軍はその航空兵力
を日本から引き上げようとしているからです。
 米空軍兵力だけでなく、米海兵隊もグアムに移転しようとして
います。これは米国のアジア極東戦略が変更された結果そうなっ
たのです。米軍が一番危機感を持っているのは、中国が台湾の対
岸に配備している3000発のミサイルなのです。そのうちの半
分は移動型車両から発射されるミサイルであるといわれます。
 これらのミサイルは、台湾有事のさいには、沖縄の嘉手納基地
の空軍部隊や補給基地、そして海兵隊基地に撃ち込まれる危険が
あるのです。もし、それによって数千人もの負傷者が出ると、オ
バマ大統領の政治責任が問われることになります。そういうわけ
で海兵隊をグアムに移そうとしているのです。
 アジア極東における唯一の地上部隊である米海兵隊がグアムに
移り、在日航空兵力である米空軍がハワイ、グアム、アラスカに
拠点を移す――そういうことになれば、日本周辺の軍事地図は大
きく塗り替えられることになります。
 こういう事態に対し、日本政府の対応はきわめて楽天的であり
能天気です。日本国民にしても、今まで長期にわたり、日本の防
衛を米国に大きく依存してきたので、「米国がついているから大
丈夫」ということで、国防意識が希薄になっているのではないか
と思われます。そのため、こうした米空軍や海兵隊の移動に関し
ほとんど無関心です。むしろ、米軍が日本本土からいなくなれば
基地をめぐるトラブルがなくなって良いことであるという声さえ
あるのです。
 ところで、「海兵隊」についてどれほどご存知ですか。陸軍と
どこが違うのでしょうか。
 米海兵隊は、米国の法律の規定に基づき、海外での武力行使を
前提として、米国の権益を維持・確保するための緊急展開部隊と
して行動するのです。また、必要に応じて水陸両用作戦――上陸
戦を始めとする軍事作戦を遂行することを目的とするので、「海
兵隊――マリーン・コーア」と呼ばれています。米国本土防衛が
任務に含まれない外征専門部隊であることから「殴り込み部隊」
ともいわれているのです。陸軍とは違うのです。
 もうひとつ韓国に駐留している米軍と在日米軍との違いについ
ても理解しておく必要があります。
 在韓米軍はかつては国連軍であり、国連軍として朝鮮戦争に参
加し、在日米軍と違って韓国を占領したかたちで、そのまま韓国
に駐留を続けているのです。朝鮮戦争はまだ終結しておらず、休
戦しているだけなのです。
 現在はその仕組みが少し変わりましたが、韓国軍は国連軍の一
部であり、実質的には国連の指揮下にあったのです。国連軍の司
令官は米軍の司令官であるので、結局のところ、韓国軍、韓国政
府、韓国国民は米軍の支配下にいることになります。
 そのため、在韓米軍の司令部は、ソウルの中心にあるかつての
帝国陸軍駐屯地をそのまま占領しているのです。当然のことなが
ら韓国民、とくに若者やリベラルな人々、それから労働組合は米
軍に対して強い不満を持っているのです。同じ不満でも在日米軍
とは根本的に異なるのです。
 在韓米軍は陸軍です。冷戦が終わって、米陸軍のほとんどは韓
国に移っており、ここからイラクやアフガニスタンに移動してい
るのです。問題は、肝心のオバマ大統領がアジア戦略をどのよう
に考えているかです。いずれにせよ、米軍はかなりの規模で日本
からどんどん離れているのです。日本はもっと主体的に自国の防
衛を考えるべきです。     ―――[オバマの正体/27]


≪画像および関連情報≫
 ●アメリカ海兵隊とは何か/超左翼おじさんの挑戦プログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  沖縄の少女暴行事件が大きな問題になっている。米軍は世界
  各地に駐留しており、事件・事故はどこでも起こるわけだが
  日本ほど事件が頻発する国はない。米兵が起こす事件の凶悪
  さという点においても、日本は特別の存在である。なぜそん
  なことになるか、その根本の問題は別に論じるが、きょうか
  ら数回は、海兵隊とは何かということをとりあげたい。海兵
  隊の大規模な部隊が駐留するのは、世界広しといえども日本
  だけである。その海兵隊が「殴り込み部隊」と言われるよう
  な性格を持っていることが、こうした事件を起こすような体
  質を生みだしている。前回の少女暴行事件に触発され、10
  年ほど前に公表したものだが、現在にも通じると思われるの
  で、紹介しておきたい。
    http://matutake-n.blogspot.com/2008/02/1_2794.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

硫黄島と米海兵隊.jpg
硫黄島と米海兵隊
posted by 平野 浩 at 04:14| Comment(0) | TrackBack(1) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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