2009年08月18日

●「冷戦期に日本は何をやってきたのか」(EJ第2636号)

 なぜ、日本の政治家や防衛関係者と在日米空軍は意見が合わな
いのでしょうか。それは、日本の防衛関係者の考え方が世界の軍
事常識からかけ離れているからです。
 それでは、世界の軍事常識とは何でしょうか。
 「現在の国際情勢のもとで、中国が日本を攻撃してくるはずが
ない」――多くの日本人はそう考えています。こういう考え方が
世界の軍事常識からかけ離れているというのです。
 昔の常識からすると、ある国を仮想敵国として想定し、政治的
決定を行ったあと、その攻撃能力を高めるために相当の時間を要
したものです。しかし、これは昔の話であって、現在の軍事常識
は大きく異なるのです。
 現代の軍事を動かすキーワードは「ハイテクの一般技術」なの
です。PCや携帯電話やスマートフォン、ロボット技術やゲーム
マシン、それに各種ソフトウェアや通信技術など――これらがハ
イテクの一般技術ですが、これらの技術は簡単に軍事用に転用す
ることができるのです。したがって、敵を攻撃しようと思えば昔
のように長い時間はかからないのです。きわめて短い時間で攻撃
体制を構築することができるからです。
 こういう時代には、仮想敵国の意図は問題ではなく、その国が
そういうハイテク技術力を持っているかどうか――すなわち、能
力を持っていることが重要なのです。つまり、その国がそういう
能力を持った時点で国防の意識を持つ必要があるのです。
 現在の国際情勢から見て攻めてくるはずがないというのは、こ
ちら側の楽観的観測に過ぎない考え方であり、そういう思い込み
は国家防衛上とても危険です。国家指導者の意図に関係なく、相
手国に相応のハイテク技術力があれば、いつでも仮想敵国になり
得るのです。なぜなら、仮想敵国の指導者の意図が変われば、た
ちまち国家の危機が生ずるからです。
 今まで日本は、42年間も続いた冷戦期(1947年〜198
9年)の間、日本の国益と独立を守るために何をやってきたので
しょうか。それは、きわめて単純にして安易な次の2つの依存主
義にしがみついてきただけなのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.護憲左翼 ・・・ 憲法九条があれば日本は安全
   2.親米保守 ・・・ 米国に依存していれば大丈夫
―――――――――――――――――――――――――――――
 国際政治アナリストの伊藤貫氏は、日本の左翼と保守派には、
国際構造の多極化・流動化を論理的に分析し、長期的な視野を持
つグランド・ストラテジーを構築する能力が欠けているとして、
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかも悪いことに日本の官僚・政治家・言論人の大部分は「日
 本には独立国としてのグランド・ストラテジーが必要だ」とい
 うことさえ認識していない。仏露中印諸国の外務官僚と国際政
 治学者は、独自のグランド・ストラテジーを認識する知性と戦
 略感覚をもっている。しかし、日本の官僚と学者にはそれがな
 い。キッシンジャーが「日本人は国際政治に関して驚くほど鈍
 感だ」と述べているが、まったくそのとおりである。
      ――「Voice/9月号」の伊藤貫氏の論文より
―――――――――――――――――――――――――――――
 米政府の国家情報会議・報告書「グローバル・トレンド202
5」というものがあります。2008年11月に公開された報告
書です。これは現在から2025年までの世界潮流の予測レポー
トで、米政府の16の情報機関の上級分析官を集めて作成された
ものなのです。
 その報告書には、2025年までの15年間の日本外交に関し
て4つのシナリオが予測されているのですが、そのシナリオの2
つは、日本の運命を次のように予測しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカに見捨てられた日本は、中国勢力圏に吸収されてしま
 だろう。    ――「グローバル・トレンド2025」より
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国の航空兵力は、1600機以上の戦闘機と600機以上の
爆撃機部隊が実戦配備されています。また、中国は航空母艦の建
造も進めています。日本海から東シナ海、そして南シナ海での軍
事活動を強化するためです。
 しかし、米軍の首脳はこのことに関する限りまったく気にして
いないのです。何しろ昨日のEJでも述べたように、F221機
で中国機50機を撃墜する能力があるからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国の空母の建造や戦闘機の数が多いことに関しては特別の対
 応策をとることはない。
        ――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
                        徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 米軍が一番気にしているのは、中国のミサイル兵力なのです。
中国はとくに移動型の車両に積み込んで発射するモービル型の近
中距離ミサイルの増強に力を入れているのです。
 その射程距離は2000キロを超えており、台湾有事のさい、
沖縄に駐留する米軍を狙い撃ちすることが可能なのです。そのた
め、これまで米太平洋軍の主力になってきた在日米空軍の基地が
安全ではなくなってしまったのです。
 そこで米軍は、在日米軍基地の米空軍をグアムやハワイに南下
させており、日本を離れているのです。なぜなら、中国のミサイ
ル兵力強化によって、在日米空軍は急速にその存在理由を失い
つつあるからです。在日米空軍、すなわち第5空軍は、カラッポ
のアパートの管理人みたいなものだという声すらあるのです。
 しかし、日本人は、相変わらず能天気に「護憲」「核反対」に
凝り固まっており、自分の国の防衛を米国にまかせ切って今日ま
できているのです。      ―――[オバマの正体/26]


≪画像および関連情報≫
 ●国際政治アナリスト/伊藤貫氏について
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  1953年生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業、コ
  ーネル大学で米国政治史・国際関係論を学ぶ。その後、ワシ
  ントンのビジネス・コンサルティング会社で、国際政治・米
  国金融アナリストとして勤務。CNN、CBS、NBC、米
  国公共放送、ITN、BBC等の政治番組で、外交政策と金
  融問題を解説。米国在住。著書に『中国の「核」が世界を制
  す』(PHP研究所)がある。
  ―――――――――――――――――――――――――――

国際政治アナリスト/伊藤貫氏.jpg
posted by 平野 浩 at 04:16| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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