2009年08月11日

●「6ヶ国協議はなぜうまく行かないのか」(EJ第2631号)

 クリントン元大統領の訪朝による米国人女性記者解放は、どう
やら北朝鮮の仕掛けであったようです。北朝鮮としては、訪朝す
る米側の交渉役は、どうしてもクリントン元大統領でなければな
らなかったのです。
 米側としては、ゴア元副大統領やリチャードソン・ニューメキ
シコ州知事を派遣したかったのですが、北朝鮮側からクリントン
氏を逆指名してきたのです。
 なぜなら、クリントン氏は現政権と同じ民主党の元大統領であ
り、現職国務長官の夫なのです。北朝鮮側としては、米側がいく
ら「私的」と強調しても、現政権にストレートにメッセージを伝
えることができると踏んだのです。北朝鮮側としては、あくまで
米国との二国間協議を望んでいるのです。
 ところで、オバマ大統領は、6ヶ国協議をどのように考えてい
るのでしょうか。
 既出の日高義樹氏は、オバマ大統領は6ヶ国協議について次の
ように考えているといっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ大統領は、ブッシュ前大統領が始めた6ヶ国協議には、
 どんなことがあっても戻りたくないと思っている。
        ――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
                        徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 そもそも6ヶ国協議は、ブッシュ前大統領が、かつてのクリン
トン元大統領の北朝鮮との二国間協議が失敗したことを受けて始
めたものです。
 二国間協議をやって北朝鮮が約束を守らないと、米国の外交政
策の失敗になってしまうので、米、日、中、韓、露が加わって協
議し、北朝鮮に約束させると、今度は約束を破れなくなると考え
たわけです。一応合理的な考え方であると思います。しかし、こ
の6ヶ国協議――ほとんど機能していないのです。北朝鮮がとこ
とん非協力であることが最大の原因ですが・・・。
 とくにブッシュ政権の末期に6ヶ国協議は有名無実になり、米
朝は事実上二国間協議をして、北朝鮮をテロ指定国家から解除し
てしまったのです。これには理由があるので、後から述べること
にします。
 ところで、オバマ大統領はなぜ6ヶ国協議をやろうとしないの
でしょうか。
 日高義樹氏によると、それをブッシュ前大統領がはじめたから
なのです。オバマ氏は「チェンジ」を標榜してホワイトハウス入
りを果たしましたが、それはブッシュ前大統領のはじめたことを
すべてチェンジしようと思っているからです。
 6ヶ国協議の枠組みに中国はもともと反対です。というのは、
この枠組みで協議が進展すると、下手をすると、6ヶ国による朝
鮮半島支配の体制が確立する恐れがあるからです。6ヶ国の中で
中国と利害が一致するのは北朝鮮だけであり、米国、日本、ロシ
ア、韓国は地政学的にみてすべて中国の敵なのです。しかし、当
時の中国には弱みがあり、米国が経済問題もからめて圧力をかけ
てきたので、しぶしぶ引き受けたのです。
 このような考え方では6ヶ国協議はうまく行くはずがないので
す。それに、ブッシュ前大統領の大きな誤算もあったのです。そ
れは、6ヶ国協議の米国の代表であるクリストファー・ヒル国務
次官補が大統領に造反したことです。
 国務省の国務次官補が大統領に造反する――ちょっと考えられ
ないことですが、日本でも霞ヶ関の役人が大臣や首相を裏切るの
は当たり前になっていることでもあり、米国でも十分ありうるこ
となのです。
 日高義樹氏は、6ヶ国協議の代表に任命された直後のクリスト
ファー・ヒル氏と会って、インタビューしたことがあるというこ
とです。そのとき彼は、日高氏に対しはっきりと次のようにいっ
ているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカの基本政策は6ヶ国協議です。私は北朝鮮と2国間協
 議をおこなうつもりはまったくありません。
        ――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
                        徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、ヒル米代表はたちまち壁に突き当たったのです。6ヶ
国協議が始まった当時の韓国は、金大中や盧泰愚が大統領ですが
彼らは親北朝鮮/反米なのです。そのため、米、日、韓の連携が
うまくいかなかったのです。
 中国は内心は反対で米に対する面従腹背、ロシアは中国が6ヶ
国協議の主催国として成功すると、隣の大国として政治的威信に
傷がつくと考えています。したがって、中国を成功させないよう
にときどき足を引っ張るのです。北朝鮮はもともと協力的ではな
いし、後ろで中国とつながっているので、勝手気ままに振る舞う
――これで協議が進展するはずがないのです。
 クリストファー・ヒル代表は、6ヶ国協議が成功すると、自分
に出世のチャンスが回ってくると考えたのです。しかし、協議が
行き詰ってしまうと、自分の出世の芽も摘まれてしまう――これ
だけは避けなければならない。そのためには、意味がなくてもい
いから協議を継続させる必要があると考えたのです。
 それに北朝鮮は米国と二国間協議を求めている――これに乗る
そぶりを見せれば6ヶ国協議は続くと考えたのです。
 実は、当時のライス国務長官からヒル代表は次のように厳しく
いわれていたのですが、彼はこれも無視したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 北朝鮮とは個別協議をしてはならない。北朝鮮の代表と二人だ
 けで会ってはいけない。必ず中国代表を同行しなさい。
―――――――――――――――――――――――――――――
               ―――[オバマの正体/21]


≪画像および関連情報≫
 ●クリストファー・ヒル氏とは何者か
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  クリストファー・ロバート・ヒルは、アメリカ合衆国の外交
  官である。東アジア・太平洋担当国務次官補。北朝鮮核問題
  の6者会合のアメリカ首席代表を務める。ボードイン・カレ
  ッジで経済学士。1994年に米国海軍軍事学校で修士号を
  取得。既婚で3人の子供あり。対北朝鮮外交の穏健派であり
  批判者からはキム・ジョンヒルと呼ばれている。
                    ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

クリストファー・ヒル氏.jpg
posted by 平野 浩 at 04:13| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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