かは一切不明ですが、とにかく米国は北朝鮮に拘束されていた米
国人女性記者2名を連れ戻すことに成功しています。
オバマ大統領は「核とは無関係」といっていますが、あの北朝
鮮が何の見返りも求めず、刑の確定した米国人女性記者2名を恩
赦で釈放するはずがないことぐらい、世界中誰でもわかっている
ことです。ですから、米国側は詳細を一切発表しないという方針
をとっています。何をいっても無駄でしょう。かならず重大な約
束をしているに決まっています。
ところでこの光景で何かを思い出さないでしょうか。
そうです。1994年のカーター元大統領の訪朝です。このと
きの米朝核枠組み合意の失敗が現在の北朝鮮の核問題につながっ
ているのです。北朝鮮に手もなく騙されたのは、クリントン元大
統領その人であったはずです。
こんな話があるのです。2009年4月5日午前11時30分
青森県の北端の高い丘の上にある米陸軍の特殊レーダーが、北朝
鮮のミサイル基地から打ち上げられたテポドンを発射と同時に察
知したのです。このレーダーは、北朝鮮のミサイルを監視するた
めに米陸軍が全技術を結集してつくり上げたものなのです。
この情報は直ちにハワイ・オアフ島にある米空軍基地の太平洋
防空宇宙センターに伝えられたのです。この防空宇宙センターを
統括するのは米第13空軍の司令官、オシャニシー大佐ですが、
オシャニシー司令官はこの情報を受け取ると、「戦争状態」を発
令したのです。
こうしているうちに、日本海や太平洋に展開している米第7艦
隊のイージス艦からもテポドンの発射の情報が入ってきたので、
オシャニシー司令官は情報を分析し、1分もたたないあいだにす
べての情報とミサイルの動きをコロラド州にある北米航空宇宙防
衛司令部に送り込んだのです。
この情報は、ネブラスカ州のオマハにある、米国戦略空軍司令
部へと送られ、30秒ほどの分析のあと、ワシントン郊外のペン
タゴンの地下にあるNMCC、全米軍事司令部に届けられると同
時に、ホワイトハウスにあるシチュエーションルームに送られた
のです。このシチュエーションルームは、ホワイトハウスの大統
領執務室の真下にあり、米国防衛のためのあらゆる軍事行動を統
括しているのです。
このときオバマ大統領は、チェコの首都プラハで、核兵器廃絶
の演説をしたあと、ホテルで休んでいたのです。現地時間は午前
4時――衛星による同時中継で、ペンタゴンとシチュエーション
ルーム、オバマ大統領が直結し、米国の即時即応体制がたちまち
でき上ったのです。この間わずか数分しか要していないのです。
北朝鮮のテポドンがハワイを攻撃するのに要する時間は約20分
ですから、米軍は余裕を持ってテポドンを撃ち落とすことができ
るのです。
米軍首脳は、このさいテポドンを撃ち落すことを望んでいたと
いわれます。2008年12月5日に米陸軍は、バンデンバーグ
基地からミサイルを打ち上げ、敵のミサイルを撃ち落とす実験に
成功していたので、撃ち落とす自信は十分あったし、貴重な訓練
になると考えていたのです。それに何よりも北朝鮮を牽制できる
からです。そこで米軍首脳は大統領の指示を待ったのです。しか
し、オバマ大統領は次のように命令したのです。
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北朝鮮のミサイルを撃ち落としてはならない
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こういう話を聞くと、これまで映像で伝えられているオバマ大
統領のイメージから、彼は核兵器廃絶を訴えていることからも、
きっと平和主義者であり、だからテポドンの迎撃を許さなかった
のだろうと考える人が多いと思います。
しかし、それは違うようです。米ハドソン研究所主席研究員で
ある日高義樹氏は次のようにいっています。
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オバマ大統領が今度の北朝鮮のテポドンを撃ち落とさなかった
のは、オバマ大統領が北朝鮮に対する基本的な政策、外交政策
をまったく持っていないからである。オバマ大統領の決定は、
現在のアメリカ政権が「北朝鮮をどうするか」という問題につ
いて何も考えていないことをはっきりと示している。オバマ大
統領とオバマ政権が対北朝鮮政策を持っていないという事実は
テポドンを撃ち落とさなかったことだけに現れているのではな
い。北朝鮮担当者すら決められないことにもよく現れている。
オバマ大統領は北朝鮮が大陸間弾道弾をアメリカに向けて発射
したら、そのミサイルを撃ち落とすべきかどうかなど、考えて
もいなかったのである。そもそもオバマ大統領は北朝鮮問題に
関心がない。 ――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
徳間書店刊
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オバマ政権では、北朝鮮の担当者として、ボスワース氏を任命
しています。しかし、この人事は深く考えられたものではなく、
ボスワース氏が元韓国駐留大使を務めたことがあるというだけの
ことのようなのです。韓国に駐在した外交官を北朝鮮問題の責任
者にすること自体異例であるといわれています。
ボスワース氏は、ボストン郊外にあるタフツ大学の国際学の専
門家であり、タフツ大学の国際研究機関とフレッチ研究所の所長
の両方を担当していてきわめて多忙なのです。
つまり、ボスワース氏は大学運営の仕事のかたわら、パートタ
イマーとして、これから難しい交渉が必要な北朝鮮担当をするこ
とになるのです。
オバマ大統領の北朝鮮問題の関心はそんな程度なのです。いや
北朝鮮はおろか、日本を含めてアジア問題にもあまり関心がある
とはいえないのです。明日からオバマ大統領の外交政策について
考えます。 ―――――[オバマの正体/20]
≪画像および関連情報≫
●クリントン元大統領/北朝鮮電撃訪問
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北朝鮮を訪問していたビル・クリントン元米大統領は8月5
日午前、5か月間近く拘束されていた米国人女性記者2人と
ともに帰国の途についた。同氏のスポークスマンが明らかに
した。ロサンゼルスに現地時間の8月5日未明(日本時間同
日夜)にも到着する。米朝間の懸案だった米国人記者拘束問
題は、15年ぶりの元米大統領の訪朝で解決し、今後、本格
的な米朝協議が再開されるかが焦点となる。
――読売オンライン
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クリントン元大統領電撃北朝鮮訪問