2009年08月03日

●「GDP比13%の財政赤字の巨額さ」(EJ第2625)

 誰もが関心があって、誰もが心配していることがあります。そ
れは米国の経済は本当に大丈夫なのかということです。米国のこ
とより日本経済の方が心配だという声もありますが、日本経済は
米国経済の動向によって大きく左右されるので、米国経済がどう
なるのかについては重要な関心があります。
 オバマ大統領は、2010年度予算教書で、次の見通しを示し
ています。
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 経済成長率は、09年後半にはプラスに転じ、年末までには、
 3.5 %成長まで回復し、10年には年間を通してこの成長が
 続く。             ――2010年度予算教書
―――――――――――――――――――――――――――――
 今までの米国では、不況期になると、かなり積極的な金融緩和
政策――金利を下げて、買いオペレーションで市場にお金を豊富
に供給する――こういう金融政策によって、住宅投資や個人消費
を刺激して、需要を急速に回復させ、生産を急増させる手法で高
成長(V字型回復)を実現してきたのです。
 しかし、今回は従来とは少し様相が異なるのです。住宅バブル
が崩壊したことと、過剰消費の見直しで、住宅と個人消費が景気
回復の牽引役になれないのです。したがって、年内に景気が底入
れしたとしても、V字回復は無理であると思われるのです。
 ガイトナー財務長官も景気のV字回復は困難であることを認め
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国経済への信頼感は改善しているが、経済回復には長い道の
 りが必要である。         ――ガイトナー財務長官
―――――――――――――――――――――――――――――
 心配なのは銀行なのです。有力アナリストであるメレディス・
ホイットニー氏は米銀について次のようにかなり悲観的な見通し
を示しています。
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 銀行の本来事業からの中核的収益力はごくわずかで、今年1〜
 3月期に黒字を計上している米銀も赤字に逆戻りする公算が大
 である。         ――メレディス・ホイットニー氏
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 バフルが崩壊した後の日本政府のやったことを思い出していた
だきたいのです。銀行のリストラや不良債権の処理を後回しにし
て、減税や公共投資を繰り返すという失敗を重ねて、金融正常化
を終えるまでに15年――失われた15年を要しています。
 ところが、日本の轍は踏まないと豪語したガイトナー財務長官
は銀行リストラや不良債権処理を先送りして財政を拡大させてい
るのです。これはEUも同様なのです。
 銀行の不良債権をそのままにしておくと、それが融資の減少の
原因になって、企業倒産が増加して、さらに不良債権が膨らむと
いう悪循環で景気の足をひっぱるのです。
 『週刊エコノミスト』7月14日特大号の「グローバル・マネ
ー」コラムでは、欧米の経済政策を次のように批判しているので
す。
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 欧米当局は今もなお、かつての日本と同じように、金融システ
 ムの病気を軟膏、絆創膏、包帯で治そうと躍起になっている。
 銀行のリストラや不良債権処理を先送りする米国、EUは90
 年代の日本と同じ失われた15年という地獄への道をまっしぐ
 らに歩んでいる。――『週刊エコノミスト』7月14日特大号
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ政権は、巨額の資金を使って景気対策に取り組んでいる
のです。TARPについては既に述べましたが、これはブッシュ
政権が決めた不良資産救済プログラム/7000億ドルのことで
す。それに加えて、オバマ政権発足後に決めた総額7800億ド
ルを景気対策資金として使っているのです。
 この巨額の資金を使って、AIGやシティグループなどの大手
金融機関に資金を投入し、さらに経営破綻したGM/ゼネラル・
モーターズを事実上国有化し、政府丸抱えで再建に取り組んでい
るのです。その他、減税や住宅ローンの借り換えなどの個人向け
の支援策もこの資金をベースとして行っているのです。
 問題は、この資金はどこから持ってきたかなのです。そんなお
金が米国にあるはずがないのです。当然のことですが、その原資
は国債なのです。米国はもともと巨額の財政赤字を抱えており、
いくら100年に一度の危機といっても、このような大盤振る舞
いをすると、後で大きな問題が生じてくることは必至です。
―――――――――――――――――――――――――――――
      2008  2009  2010  2011
 財政収支 ▲450 ▲1841 ▲1258  ▲930
 対GDP ▲ 3.2 ▲ 12.9 ▲  8.5  ▲ 3.4
        ――財政収支単位/10億ドル 対GDP%
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 上記は米政府の財政見通しです。2008年度は対GDP約3
%であった財政赤字は、2009年会計年度(2008年10月
〜2009年9月)には1.8 兆ドル――実にGDP比13%、
これは戦後最大の財政赤字なのです。
 しかもこの財政赤字は2010年度1.3 兆ドル、2011年
度も0.9 兆ドル、2012年度0.6 兆ドルと高水準で続く見
通しです。その結果、2012年度の政府債務残高は16兆56
60億ドルに達する見通しなのです。
 こうした巨額の国債発行によって、心配されるのは国債価格下
落――長期金利の上昇なのです。それまで2%台前半にまで下落
していた長期金利は、5月以降3%半ばになり、6月10日には
一時4%を超えているのです。長期金利はどのように推移するの
でしょうか。米国債と長期金利の動きについて、明日から考えて
いきます。           −― [オバマの正体/15]


≪画像および関連情報≫
 ●景気対策法案/7800億ドル
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  [ワシントン 6日 ロイター] 米上院民主党は6日、景
  気対策法案について、規模を7800億ドルに縮小すること
  で穏健派共和党議員らと合意に達した。両党の穏健派議員ら
  が法案を作成して、来週初めまでに採決される見通しとなっ
  た。上院のリード民主党院内総務は法案可決に自信を示し、
  「現在の景気後退が恐慌に向かって進むことを望まない」と
  述べた。オバマ大統領は、米経済の危機的状況を踏まえ、2
  月16日までに法案に署名したい意向を表明している。当初
  9370億ドル規模に膨らんでいた上院の景気対策法案だが
  5日間の審議で、共和党議員を中心に効果が疑わしい財政支
  出を削るべきとの声が強まり、7800億ドルに縮小するこ
  とで合意に達した。
  http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK837711320090207
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危機脱出を模索するオバマ大統領.jpg
危機脱出を模索するオバマ大統領
posted by 平野 浩 at 06:18| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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