2009年07月30日

●「政商ヘッジファンドはなぜ儲かるのか」(EJ第2623号)

 「政商」という言葉があります。政商とは、政治家や政府高官
との結びつきを利用して経済活動上の特権的利益を得たり、政策
を自己の利益に有利な方向へ誘導しようとする事業家、企業を意
味しています。こういう人たちのことを米国ではロビイストとい
うのでしょうか。
 日本においても金融機関の不良債権処理や郵政民営化などでは
そういう政商の姿が見え隠れすることがありますが、あくまで陰
に隠れてこっそりやるというイメージです。しかし、米国では政
府高官と企業が密接に結びついており、なにか堂々とやっている
という感じです。
 現在、オバマ政権においてガイトナー財務長官が中心となって
やっているTARP――不良資産救済プログラムは、国民の税金
である公的資金を使って金融機関の不良債権を一括処理するプロ
グラムです。しかし、これはある意味においてマネーゲームその
ものなのです。
 以下、そのマネーゲームのからくりを例をあげて説明します。
図は添付ファイルをごらんいただきたいと思います。
 住宅価格が下落して、金融機関が住宅ローンの担保にとってい
た不動産はピーク時の2分の1か3分の1まで下落しています。
しかし、このまま塩漬けにしておくと、金融機関が身動きが取れ
なくなるので、救済スキームを作ったのです。
 ある不良債権を買い取るとき、その14分の1ずつを政府と民
間が出し、残りの7分の6を預金保険公社が融資する仕組みなの
です。この場合、民間というのはヘッジファンドのことです。
 額面100億円の不良債権があったとします。これを42億円
で売却するとして、民間、政府、預金保険公社は次の割合で資金
を負担します。
―――――――――――――――――――――――――――――
  政府     (1/14) ・・・・・  3億円
  ヘッジファンド(1/14) ・・・・・  3億円
  預金保険公社(12/14) ・・・・・ 36億円
―――――――――――――――――――――――――――――
 ひとつの可能性について考えてみます。もし、経済が回復して
債権の価値が100億円に戻ったとします。この場合、預金保険
公社から受けた融資額36億円を返済すると、残るのは64億円
――この金額は政府とヘッジファンドで山分けをするのです。3
億円出して32億円戻るので、29億円の儲けになります。
 もうひとつの可能性です。不良債権の価値がさらに下がってゼ
ロになったとします。この場合、預金保険公社からの36億円の
融資は公的資金なので、返済する必要はないのです。したがって
政府とヘッジファンドはそれぞれ3億円の損失ということになり
ます。実際にはゼロになる可能性は少ないし、42億円もの債権
を運用して損失はわずか3億円で済むのですから、ヘッジファン
ドにとっては、ローリスク・ハイリターンでボロ儲けができる仕
掛けになっているのです。
 このマネーゲームに参加させるヘッジファンドを指名する権限
はガイトナー財務長官が握っているのです。ガイトナー財務長官
は、次のトップ10に入ったヘッジファンドの中からマネーゲー
ムに参加させるヘッジファンドを選ぶはずです。もちろんオバマ
政権に実績の高いヘッジファンドが選ばれることになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪2008年度ヘッジファンド・マネージャートップ10≫
    マネージャー名          2008年の収入
  1.ジェームズ・シモンズ ・・・・・・  2500億円
  2.ジョン・ポールソン ・・・・・・・  2000億円
  3.ジョン・アーノルド ・・・・・・・  1500億円
  4.ジョージ・ソロス ・・・・・・・・  1100億円
  5.レイモンド・ダリオ ・・・・・・・   780億円
  6.ブルース・コブナー ・・・・・・・   640億円
  7.デイビッド・ショー ・・・・・・・   275億円
  8.スタンリー・ドラッケンミラー ・・   260億円
  9.デイビッド・ハーディング ・・・・   250億円
  9.アラン・ハワード ・・・・・・・・   250億円
  9.ジョン・テイラー・ジュニア ・・・   250億円
             出典/「アルファー・マガジン」誌
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ヘッジファンド・マネージャーについて少しご紹介しておくこ
とにします。ヘッジファンドといえば、世界的な金融危機を引き
起こした戦犯企業のひとつですが、この危機によって姿を消した
ヘッジファンドは1000社に上るのです。2008年のはじめ
には1万社のヘッジファンドが存在したのです。
 生き残ったヘッジファンドの全体の3分の2は、平均して18
%の損失を計上しているのですが、そういう不利な状況をものと
もせず、利益を上げたヘッジファンドが、上記の10ヘッジファ
ンドです。2008年の第1位は、ルネッサンス・テクノロジー
ズのジェームズ・シモンズ氏です。シモンズ氏は、元数学教授で
あり、高等数学を駆使した精緻な市場分析で、25億ドルの利益
を上げてトップに輝いたのです。
 第2位は、ポールソン・アンド・カンパニーのジョン・ポール
ソン氏です。不動産価格の急落を前提として、空売りを繰り返し
て20億ドルの利益を手にしています。
 第3位は、元エンロンのトレーダーで、天然ガスのデリバティ
ブ取引を得意とするケンタウルス・エナジーのジョン・アーノル
ド氏で、15億ドルの利益を上げています。
 そして、あの有名なジョージ・ソロス氏――金融危機の到来を
先回りして得意の空売り戦略を展開して、11億ドルの利益をあ
げて、第4位につけています。ソロス氏は一時は息子に事業を継
がせて引退したのですが、2007年から復活して2008年に
は上位に食い込んでいます。   −―[オバマの正体/13]


≪画像および関連情報≫
 ●年収世界一/ジェームズ・シモンズ氏について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ルネサンス・テクノロジーズを率いる第1位のジェームズ・
  シモンズ氏の08年の報酬は2500億円だった。既に71
  歳になるが、現役として活躍。過去にも06年に1位となっ
  ており、昨年も3位とランキング上位の常連でもある。19
  82年に創業されたルネサンス社は、これまでの創業以来の
  年平均リターンは38%とも言われる。
    http://ameblo.jp/kouryu1093/entry-10246910670.html
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ●図・写真の出典/「SAPIO」/8/5号より

ヘッジファンドを代表する3人.jpg
ヘッジファンドを代表する3人
posted by 平野 浩 at 04:18| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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