2009年07月27日

●「ウォール街の守護神/ガイトナー」(EJ第2620号)

 2007年5月のことです。当時ニューヨーク連邦準備銀行総
裁であったティモシー・ガイトナー氏は、アトランタにおける講
演で次のように述べています。
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 アメリカの上位金融機関は極めて健全な財務体質であり、デリ
 バティブ取引に関しても革新的な手法を駆使し、リスク管理は
 以前に比べはるかに改善されており、まったく問題がない。大
 手金融機関は自己資本においてもリスク管理においてもかつて
 ないほど健全な状況におかれている。
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ガイトナー氏は、2003年11月からニューヨーク連銀総裁
の職についており、2009年1月に財務長官に就任するため辞
任するまで、5年以上その職にあったのです。そのことを記憶に
とどめておいていただきたいと思います。
 ガイトナー総裁の上記の講演ですが、2007年5月といえば
それまで上昇を続けてきた住宅価格の伸びが急速にダウンし、い
わゆるサブプライムローン危機が顕在化しはじめた時期に当たる
のです。そのように考えたとき、ニューヨーク連銀の総裁という
責任ある地位にある人物がこういう発言をするとは考えられない
ことです。
 彼ほどのマーケットのプロが状況を読めていないはずはなく、
おそらく投資家や市場を安心させる方便としての発言と考えられ
ますが、いずれにしても無責任のきわみです。
 ガイトナー氏は38歳のときに財務省の国際担当財務次官に昇
進していますが、そのときの財務長官がロバート・ルービン氏で
あり、続くルービン財務長官の後任であるローレンス・サマーズ
財務長官のもとで、2001年まで仕事をしているのです。
 ブッシュ政権の誕生とともにガイトナー氏は、財務省を離れて
外交問題評議会(CFR)に籍を置いています。この外交問題評
議会は米国の有名なシンクタンクのひとつですが、あのデイヴィ
ッド・ロックフェラー氏が名誉会長を務めるいわくつきのシンク
タンクであり、これについては改めて述べます。
 そして、2003年11月にガイトナー氏は、ニューヨーク連
邦準備銀行総裁に就任するのですが、それから5年間というもの
彼はウォール街の中心で、業界のトップたちと精力的に会って人
間関係を築いたのです。歴代のニューヨーク連邦準備銀行総裁の
中でも彼ほど銀行家やヘッジファンドのマネージャーたちと頻繁
に食事をしたり、パーティーに付き合ったりした総裁はいないだ
ろうといわれているのです。
 2004年のことです。ニューヨーク連銀は、シティグループ
の融資方法に問題があるとし、7000万ドルの罰金をかけたの
です。そして、その翌年、シティグループが、企業買収に伴って
使った手法に問題があるとして、企業買収の業務停止命令を出し
ているのです。
 この措置について、世間はガイトナー総裁はなかなか厳しいこ
とをやるという印象を持ったはずです。しかし、それから2年後
の2006年、ニューヨーク連銀はシティグループに対して科し
ていた規制をすべて解除してしまうのです。その理由としてシテ
ィグループは大幅な業務改善を行い、2年前の問題の再発防止に
全力を尽くしたとしているのです。
 規制を解かれたシティグループは、待っていましたとばかり住
宅ローンの証券化にさらに深入りして、とんでもない負債を背負
い込むことになったのです。2007年の春から夏にかけてサブ
プライムローンの焦げ付きが顕在化するに伴い、シティグループ
の抱える問題も表に出る可能性が出てきたのです。
 こうした状況をニューヨーク連銀が掴んでいないはずがないの
です。そこで、ガイトナー総裁は、シティグループの経営陣と何
回も会合を重ね、この問題が表面化するのを抑えたと考えられる
のです。それはガイトナー総裁が冒頭のアトランタにおける講演
の内容を見れば明らかでしょう。明らかに事実を隠蔽しようとし
ているのです。
 ガイトナー氏とシティグループは、1999年にルービン氏が
シティグループの経営執行委員会会長になってからはとくに親密
な関係にあります。シティグループのサンフォード・ウェイル会
長は、ガイトナー氏に対していずれ自分の後任として、シティグ
ループのCEOに就任してもらいたいという意向を持っていると
いわれます。それほど信頼が厚いのです。
 もともとシティグループは、ルービン氏とサマーズ氏のもとで
「グラム・リーチ・ブライリー法」によって、あらゆる規制を外
し、政府を監視の外に置くことによって、積極的にデリバティブ
を展開し、やりたい放題をして巨額の資金を手にしたのです。こ
れが結果として米国の住宅バブルを煽ることになったのです。こ
れはまさにマネーゲームそのものといえます。
 本来であれば、ガイトナー氏率いるニューヨーク連銀がそうい
うウォール街に対して警告を発し、流れを変える努力をすべきで
あったのですが、彼は何もしていないのです。それどころか「そ
のような危機はまったく存在しない」というレポートを出したり
冒頭のような講演で危機感を払拭するなど、金融機関と一緒に米
国の住宅バブルを加速させたのです。
 そして、金融危機が顕在化した2008年10月3日、時のポ
ールソン財務長官は「市場が驚くほど大きな金額でなければなら
ない」と主張して要求したTARP――7000億ドルの前半部
分3500億ドルが議会で承認されたのです。
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 不良資産救済プログラム/ Troubled Asser Relief Program
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 この3500億ドルは、100日以内に急速に使われ、すべて
使い切ってしまったのです。一体何に使われたのでしょうか。そ
れがはっきりしないのです。   −―[オバマの正体/10]


≪画像および関連情報≫
 ●TARPは世界不況を招く/2009.3.19
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  著名投資家のジム・ロジャース氏はこのほど、米政府が進め
  る不良資産救済プログラム(TARP)について、「健全な
  企業の資本をむしばみ、世界を同時不況に陥れるものだ」と
  述べた。同プログラムの支援対象となったアメリカン・イン
  ターナショナル・グループ(AIG)は08年第4四半期、
  米国史上最大となる赤字を計上した。ロジャース氏は「米政
  府は能力のある者から資産を吸い取り、無能な者にその資産
  を投入している。AIGを破たんさせるべきだった」と米政
  府を強く批判した。また、「米政府は1990年代のバブル
  崩壊時に日本が犯した過ちと同じ道をたどっている」と指摘
  し、本来は破たんすべき金融機関に資金をつぎ込むも、再建
  は失敗。こうした金融機関が「吸血銀行」へと化していると
  形容した。(編集担当:服部薫)
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ガイトナー財務長官とTARP.jpg
ガイトナー財務長官とTARP
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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