からといえども連邦政府の予算から出すべきです。その代わりに
質素に行うべきです。もし、それができないなら、幅広く企業や
団体から資金を集めるべきです。いかに経済が疲弊しているとは
いっても米国には世界に冠たる企業がたくさんあり、就任式の費
用ぐらいはすぐ集まるはずです。
問題は、オバマ大統領自身が連邦政府の予算を使わないことと
特定の業界からの資金は受け取らないと公式に宣言しながら、そ
の裏で結果としてヘッジファンド業界という特定の業界から資金
援助を受けて大統領就任式を行ったということは好ましいことで
はないと思います。
そのようなことをすれば、どうしても大統領はヘッジファンド
業界に対して断固たる態度がとれなくなるはずです。現実にオバ
マ大統領は、次のようにヘッジファンド業界を擁護するような発
言を行っているのです。
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私はヘッジファンドそのものが悪いとは思っていない。数ある
金融ツールの1つにすぎない。その意味ではヘッジファンドは
極めて有益な存在といってもいいだろう。ただ一部のウォール
ストリートのプライベート・エクイティ・ファンドやヘッジフ
ァンドのマネージャーたちが高額の利益や収入を得ていながら
適正な税金を納めていないのは問題だ。
――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
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実はオバマ政権はヘッジファンド業界とズブズブの関係なので
す。昨日のEJで「グラム・リーチ・ブライリー法」の成立を推
進したのはクリントン政権で財務長官を務めたたロバート・ルー
ビン氏とローレンス・サマーズ氏の2人であると書きました。こ
の法律こそ今回の金融危機を引き起こした元凶である――こうい
っても過言ではないと思います。
まず、ローレンス・サマーズ氏は、現在ホワイトハウスの経済
諮問会議議長に就任しています。今さらいうまでもなく、ローレ
ンス・サマーズ氏はヘッジファンド業界の完全なる擁護者です。
そういう人をオバマ大統領は重用しているのです。
もうひとつ、ロバート・ルービン氏はどうでしょうか。
そのルービン氏の愛弟子であるティモシー・ガイトナー氏が財
務長官に就任しているのです。ガイトナー財務長官は、クリント
ン政権で国際金融担当の財務次官を務めているのです。そのとき
の財務長官はロバート・ルービン氏なのです。したがって、ガイ
トナー財務長官は、ルービン氏の子飼いであり、その基本体質は
変わらないと考えられます。
このローレンス・サマーズ氏はどういう人物なのでしょうか。
ローレンス・サマーズ氏についての日本人の一般的イメージは
ハーバード大学学長という米国のアカデミックを代表する学者と
いう印象です。そこから見えてこないのは、サマーズ氏の飽くな
き金権体質なのです。
このサマーズ氏はハーバード大学で大きな不祥事を起こして大
学を追われています。その事件について浜田和幸氏は著書で次の
ように紹介しています。
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前代未聞の投資スキャンダルも起こしている。それは、ハーバ
ード大学がアメリカ政府の国際援助庁(USAID)から委託
を受けたロシアの株式市場育成プロジェクトに関し、サマーズ
学長の子飼いとされる経済学の教授が、インサイダー取引にか
かわっていたことが判明した事件である。結局、ハーバード大
学は政府に対して、2700万ドルもの賠償金を支払う羽目に
なった。――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
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ハーバード大学を追われたサマーズ氏を受け入れたのは、ヘッ
ジ・ファンドのD.E.ショーだったのです。紹介したのは、ルー
ビン元財務長官です。
D.E.ショーにおける勤務は、週に1回出社するだけで520
万ドル(5億2000万円)の給与を得ていたのです。そのかた
わら、ウォールストリートの金融機関で講演を行っていますが、
年間270万ドル、1回の講演料が約2000万円〜3000万
円あったというのですから驚きです。
ロバート・ルービン氏は、クリントン政権入りする前はゴール
ドマン・サックスのCEOであり、クリントン政権を離れてから
は、今度はシティグループの経営執行委員会会長を務めているの
です。前財務長官のポールソン氏もゴールドマン・サックスのC
EO出身であり、このように政府と金融機関を行き来する人が多
いのです。浜田氏によると、これを「リボルビング・ドア」とい
うのだそうです。
ルービン氏やサマーズ氏、そしてポールソン前財務長官――彼
らのように民間から政府の閣僚級のポストに就任すると、税金を
免除される特典が与えられるのです。具体的にいうと、そういう
人は「米国のノンレジデント/非居住者」になれるのです。
ポールソン前財務長官を例にとります。彼は財務長官になる前
はゴールドマン・サックスのCEOをしているので、辞任した現
在、非居住者になれます。非居住者とは、海外に出ると、大使な
どのように治外法権の扱いになるので、当然税金はかからないの
です。したがって、民間時代に蓄えた株券や債券を海外に行って
売却すると、税金はかからないのです。
『フォーチューン』誌によると、ポールソン前財務長官はこれ
を利用して、保有していたゴールドマン・サックスの株を売り、
5億ドル(500億円)をノータックスで懐に入れたとされてい
るのです。こういう特典が得られるので、彼らは「リボルビング
・ドア」を繰り返して、自分の蓄財を増やしているのです。オバ
マ政権はこういう人物と深くつながっていることになります。こ
れでいいのでしょうか。 −―[オバマの正体/08]
≪画像および関連情報≫
●「リボルビング・ドア」とは何か
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「リボルビング・ドア」という言葉を聞いたことがあるでし
ょうか。回転扉のことなのですが、アメリカでは政府機関の
要職を指すことがあります。○○省長官、副長官、長官補な
どを務め、そこで箔をつけて民間セクターで魅力的なポスト
を見つけて去っていく姿を回転扉に例えたわけです。副長官
補以下のポストを経験し、一旦民間セクターに戻った後、再
び副長官や長官になる場合もあります。彼らは、ポリティカ
ル・アポインティ(政治任用)ですから、共和党系、民主党
系と色分けができ、共和党大会、民主党大会に出席し、コネ
クションを広げ、政治活動や献金をしながら猟官運動をしま
す。公職時代の報酬は決して高くないのですが、仕事の中身
が魅力的なのと、その後の「アメリカ版天下り」まで考える
と政府の要職を求めることは十分割に合うようです。
http://dndi.jp/00-ishiguro/ishiguro_55.php
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サマーズ&ルービン