に演説の最後で使っていたフレーズです。演説の中でせいいっぱ
い「夢」や「希望」や「明るい未来」を語り、最後は「イエス・
ウイ・キャン」――われわれはできるでしめくくるのです。
ところが、大統領選の最中にヒラリー陣営は、オバマ候補の演
説は「パクリ」だとクレームをつけたのです。何のパクリかとい
うと、マサチューセッツ州知事のデバル・パトリック氏の演説と
そっくりだというのです。
既出の浜田和幸氏の本から、オバマ氏とパトリック氏の演説の
一部を比較すると、次のようになります。きわめてよく似ている
というより、そっくりです。
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≪オバマ氏≫
Don't tell me words don't matter."I have a dream".
Just words ? "We hold these truths to be self-evident,
than all men are created equal". Just words ?
"We have nothing to fear but fear itself".
Just words ? Just speeches ?
≪パトリック氏≫
"We hold these truths to be self-evident, that all men
are created equal".Just words ?
"We have nothing to fear itself". Just words ? "Ask not
what your country can do for you, ask what you can do
for your country". Just words ? "I have a dream".
Just words ?
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これは当然なのです。なぜなら、同じスピーチ・ライターが書
いたからです。選挙の演説をスピーチ・ライターに依頼すること
はよくあることです。このスピーチ・ライターが、ジョン・ファ
ブローなる27歳の青年であることはよく知られています。
しかし、それは演説をする本人がスピーチ・ライターに演説し
たい内容を話し、それをスピーチにまとめてもらうのが普通なの
です。オバマ氏とパトリック氏の2人がたまたま同じスピーチ・
ライターに依頼したのであれば、スピーチのトーンは似てくるか
もしれませんが、内容は違ってくるのが当然です。しかし、この
2人は演説の内容まで同じです。どうなっているのでしょうか。
それは、オバマ氏もパトリック氏も、同じ人に選挙をプロモー
トしてもらっているからです。その陰の選挙プロモーターは次の
人物です。
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デイビット・アクセルロッド
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アクセルロッド氏は元新聞記者で、現在はシカゴ政界の黒幕と
いわれる人物であり、政治コンサルタントとして隠然たる影響力
と資金力を持つ民主党寄りの選挙プロモーターです。
オバマ氏もパトリック氏もアクセルロッド氏がスピーチ・ライ
ターのジョン・ファブロー氏に書かせた原稿を暗記して話してい
るだけであるといわれているのです。アクセルロッド氏は世論を
動かす天才プロモーターです。
そのアクセルロッド氏の現況について、浜田和幸氏は次のよう
に伝えています。
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その天才演出家アクセルロッド氏は、いまやホワイトハウスの
奥深い執務室で、オバマ大統領の顧問として、日々新たなメデ
ィア対応に采配をふるっている。現在の最大のターゲットは、
金融再生策や経済刺激策をどう国民に売り込むかである。ブッ
シュ前政権時代に「影の大統領」とも椰掩されたカール・ロー
プ顧問と同じ立場といえそうだ。このアクセルロッド氏こそが
「夢と希望の政治」のシナリオライターである。
――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
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しかし、これはおかしな話です。オバマ大統領は人前に出て何
かを話すときは、どうやらすべてアクセルロッド氏の考える文案
をスピーチ・ライターが演説原稿にまとめていると思われるから
です。これでは自分の考えそのものがないということになってし
まいます。
まさかそんなことはあるまいと誰でも考えますが、それを裏付
ける事実はいくつもあるのです。そのひとつが、「テレプロンプ
ター疑惑」です。
テレプロンプターというのは、普通、演壇の前の左右両側に設
置される透明なガラス板で、演説の文章が電子的に表示されてい
くのです。演説する側は左右の表示を順番に読むわけですが、テ
レビには板が映らないため、自然に発言しているようにもみえる
のです。オバマ大統領は、どんな短い演説においてもこのテレプ
ロンプターを使うので、「テレプロンプター・プレジデント」と
呼ばれています。
2009年2月25日、ロック商務長官の指名発表という短い
スピーチにおいてもプロンプターを使ったのです。それに対して
ロック商務長官はポケットから取り出したノートだけで演説をす
る姿が対照的だったと新聞は報道しています。
話す内容から話す原稿まで人手を借り、しかもそれをプロンプ
ター映してしゃべる――これでは自分というものがまったくない
ということになります。
記者との一問一答でもオバマ大統領はプロンプターを見ながら
話しているというのです。記者から質問が出て、オバマ氏が答え
る前に、瞬時に答えの基礎となる資料や答えそのものが背後のス
タッフから提供され、プロンプターに映るというのです。オバマ
氏は自由自在の質疑応答であるはずのやりとりでも、他者によっ
て既に書かれたスクリプトを読み上げるだけだといいます。
−―[オバマの正体/05]
≪画像および関連情報≫
●オバマ大統領とテレプロンプター
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同報道によると、この依存度は歴代大統領でも異例なほど高
い。大統領歴史研究家のマーサ・クマー氏は「他の大統領は
だれもこれほど一貫してプロンプターを使ったことはない」
と述べ、その理由の1つはプロンプターが演説者と聴き手の
障壁になるためだと指摘した。ブッシュ前大統領は主要演説
以外ではまず使わず、簡単な声明や地方遊説ではせいぜい小
さなノートを使用する程度で、他の大統領も使用の頻度はず
っと低かったという。オバマ大統領のプロンプター依存には
「演説が不自然で人工的になりすぎる」という批判がある一
方、ホワイトハウスでは「大統領が国民に訴えることはその
内容が最重要であり、伝達の方法は問題ではない」と反論し
ている。
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どこでもプロンプターがないと話せない大統領の風刺画