超過である」と発表したあとの話を続けます。
続いて、2003年9月に財務省は「日本国は最大844兆円
の債務超過である」と額を増加させています。このように、見合
いの資産をすべて無視して債務だけを過大に評価すれば、世界中
の国はすべて債務超過になるはずです。
しかし、2004年9月には、急にトーンダウンさせ、「日本
国は最大252兆円の債務超過である」と額を大幅に下げていま
す。一体どうなっているのでしょうか。
2003年度末の日本国の資産と負債の状況は次のようになっ
ています。
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資 産 負 債
金融資産 441兆円 国債など 593兆円
固定資産 331兆円 その他 227兆円
土 地 128兆円 正味資産 80兆円
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900兆円 900兆円
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小泉政権になってからの経済不振を反映して正味資産は大幅に
減っています。それでも負債を差し引いて80兆円の正味試算が
あるのです。なぜ、これが債務超過になるのかというと、財務省
は、追加債務として次の332兆円を加えているからです。
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郵便貯金 ――I
保険準備金 I―――332兆円
その他 ――I
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この332兆円を負債の820兆円に加えると負債総額は11
52兆円になり、252兆円の債務超過になるのです。しかし、
わからないのは、なぜ公的年金債務と公務員給与/退職金を債務
額に加算するのをやめたのでしょうか。こんな財務省の数字を信
用できるでしょうか。
さて、日本の新聞やテレビで国の債務を報道する場合、次の式
を使っています。
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粗債務 ÷ 名目GDP
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これによると、1995年には80.4%であった数字は20
01年には142.3%、2004年には157.6%に達して
います。この数字だけを見ると、日本はすぐにもアルゼンチンの
ように国家破綻してしまうように思ってしまいます。
しかし、OECDの統計では純債務を使って次のように計算し
ているのです。
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純債務 ÷ 名目GDP
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純債務のGDP率で日本の債務を計算した結果を次に示してお
きます。
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≪純債務のGDP率≫
1995年 ・・・・・ 16.9%
1997年 ・・・・・ 27.9%
2000年 ・・・・・ 50.4%
2001年 ・・・・・ 65.1%
2004年 ・・・・・ 78.4%
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1997年といえば、橋本首相が財政改革をやった年です。し
かし、純債務のGDP率はわずかに27.9%――これに対して
当時のゴア副大統領は次のようにいっているのです。
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純債務でみれば日本は健全財政であるのに、どうして増税と緊
縮財政をするのか。 ――ゴア副大統領
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しかし、2001年から急に比率が増加しています。これは財
務省のやった債務のかさ上げの結果なのです。財務省はどうして
も大増税と緊縮財政をやりたいため、国民に債務を大きく見せる
必要があったのです。そして、このたくらみは見事に成功してい
ます。なぜなら、国民の多くは増税やむなしと考えるようになっ
たからです。
しかし、菊池教授は、このかさ上げ分を調整すると日本の純債
務のGDP比率は60%程度――これはユーロ地域やドイツ並み
の数字であり、日本だけが突出しているわけではないといってい
ます。財政再建はすべきですが、財政危機ではないのです。
重要なことは、政府債務のGDP比率に影響を与えるのは債務
残高などではなく、名目GDPの成長率であるということです。
GDP成長率を1995年を100として2004年の数値をみ
ると、英国の161.3%に対して日本は101.5であって、
この10年間日本の名目GDP成長率は増えていないのです。
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イギリス ・・・・・ 161.3
アメリカ ・・・・・ 155.5
ド イ ツ ・・・・・ 123.6
日 本 ・・・・・ 101.5
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とくに小泉政権になってからは、名目成長率は増えるどころか
マイナスなのです。それはデフレを無視してひたすら緊縮財政を
続けた結果なのです。問題なのは、ここにいたってもなおかつ財
政再建の名の下にさらなにる緊縮財政と大増税を実施しようとし
ていることです。 ・・・[日本経済04]
≪画像および関連情報≫
・コロンビア大学デビット・ワインシュタイン教授の分析
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2002年度末の日本政府の粗債務(中央・地方政府)は国
内総生産(GDP)の161%にのぼる。しかし政府の持つ
金融資産を単純に引いて純債務を計算するとGDPの64%
にすぎない。この数字はOECD諸国と比べても、とくに悪
いわけではない。純債務でみるなら日本の財政事情はOEC
D諸国並みであって、破綻とは程遠く十分維持可能である。
菊池英博著、『増税が日本を破壊する/「本当は財政危機で
はないこれだけの理由』
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とても勉強になる記事を書いておられて、今後も参考にさせていただこうと思います。