2006年01月25日

なぜ粗債務だけで財政をみるのか(EJ1760号)

 はっきりしていることがあります。日本は財政危機ではなく、
政策危機であるということです。1997年の橋本政権の大増税
の失敗に何も反省することなく、2001年からまるで親の仇の
ように緊縮財政を6年も継続し、その結果、税収が激減して政府
債務が増えてしまったのです。
 そうすると、これを逆手に取って今度は「このままでは国が破
綻する」として、2006年には国を破綻させないようにと再び
大増税をはじめています。失政を何も反省しないのです。
 この路線を継続していくと、日本の経済は一段と低迷化し、国
家が破綻してしまいます。そういう意味では、日本の国家破綻説
は間違っていないことになります。現在のままの政策を続けてい
くと本当に国家が破綻してしまうからです。
 財務省が2005年6月末に発表した政府債務は795兆円で
すが、その内訳は次のようになっています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      国債・・・・・・・・・・ 510兆円
      財投債 ・・・・・・・・ 124兆円
      政府短期証券 ・・・・・  97兆円
      政府保証債務 ・・・・・  64兆円
      ――――――――――――――――――
                   795兆円
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 一般に国債というのは2つの種類を含んでてます。政府が税収
不足を補うために発行した国債と財政投融資の原資として発行す
る国債の2つです。この2つの国債で634兆円になります。
 政府短期証券というのは、主として円高回避のために政府が外
国為替市場で円売り・ドル買いを行うために発行した短期の国債
のことです。政府保証債務とは、金融機関に公的資金を注入する
ために預金保険機構が発行した債券の保証のための資金ですが、
実損はきわめて少ないのです。
 これらの債務の合計は「粗債務」といいます。財務省は日本の
財政を粗債務だけで把握しようとし、負債に見合う金融資産を完
全に無視するのです。
 これはおかしな話です。どこの国でも粗債務から金融資産を控
除したネットの債務――純債務で把握するのが常識なのです。粗
債務だけで財政危機を煽っているのは日本だけです。
 まして日本は世界一の金持ち国家であって、多額の金融資産が
あるのです。なぜ、これを無視して借金の大きさだけを強調する
のでしょうか。危機をあおって大増税を正当化する財務省の策略
に国民は乗せられているのです。
 困ったことにこうした財務省の策略に政府が簡単に乗せられて
しまっていることです。かつての橋本政権しかり、小泉政権しか
りです。わかっていて乗せられたフリをしているのか、本当に乗
せられているのでしょうか。
 橋本政権の例を上げましょう。1997年度に橋本首相は、財
政改革と称して、消費税の引き上げを行い、社会保険の個人負担
の増加などで、9兆円の国民負担を負わせたのです。このときの
橋本首相の判断は、次の事実を重く見たからです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 1996年の日本の政府債務のGDP比率は、86.5%で
 あり、主要国のなかで最悪の数字である。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 しかし、この86.5%という数字は粗債務だけでみた数字な
のです。このときの純債務はわずか21.6%に過ぎず、何ら問
題がなかったのです。これらの明らかに正しくない数字に基づい
て緊縮財政と大増税は実施され、日本経済は金融恐慌に巻き込ま
れることになったのです。
 どうして金融恐慌になったかですが、GDPデフレータがマイ
ナスで、明らかにデフレ傾向にあるときに、緊縮財政と大増税を
やったからなのです。自他ともに経済が強いことをトレードマー
クにしていた橋本首相のことです。まさか知らなかったことはな
いと思いますが、その後の橋本氏の言動――自らの経済運営に関
して謝罪するなどを見ていると、単に財務省(当時大蔵省)のい
いなりになったとしか考えられないのです。
 税収が激減する――これは明らかに時の政権の経済政策・経済
運営が間違っていた結果であるといえます。それなのに小泉政権
は自らの経済政策に何ら反省することなく、大増税政策の路線を
引いています。DGPデフレータは依然マイナスのままなのにで
す。その小泉政権に国民は多くの信任を与えているのです。
 ところで、日本の財政規模は、OECDの主要国のなかで最低
です。予算規模を80兆円とすると、名目GDPの16%でしか
ありません。OECDの主要国の平均でみると、中央政府の予算
規模は名目GDPの20%です。少なすぎるのです。
 文京学院大学教授である菊池英博氏はその著書のなかで、次の
ようにいっています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  日本の予算規模(名目国内総生産、GDP)に比べて小さすぎ
 る。本当は、財政規模が「小さすぎる政府」なのだ。GDPと
 の対比でみると、日本の現在の財政規模(財政支出額)は主要
 国のなかで最低であり、主要国平均でみれば、日本の予算規模
 は100兆円程度の水準が妥当である。
       ――菊池英博著、『増税が日本を破壊する』より
                     ダイヤモンド社刊
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 2005年度の税収は44兆円――これは20年前の1986
年並みの規模です。これは予算規模が小さ過ぎることが原因であ
ると考えられます。「小さい政府」を目指すのと、予算規模を小
さくするのとは必ずしも同じことではないはずです。
 純債務で財政をみる――これが正しいことは素人でもわかりま
すが、日本では実は少数派なのです。 ・・・[日本経済02]


≪画像および関連情報≫
 ・OECDとは何か
  Organization for Economic Cooperation and Development
  OECD(経済協力開発機構)はヨーロッパ諸国を中心に日
  ・米を含め30ヶ国の先進国が加盟する国際機関である。本
  部はフランスのパリに置かれている。

1760号.jpg
  『増税が日本を破壊する』
posted by 平野 浩 at 08:40| Comment(0) | TrackBack(1) | 日本は本当に破綻危機なのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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