2009年03月30日

●「部分兌換紙幣という手がある」(EJ第2540号)

 今回のテーマ「大恐慌後の世界はどのようになっていくか」に
ついて58回にわたって書いてきましたが、今回と明日で一応終
了します。
 ここまで見てきたように、米国の傷み方は想像以上に激しく、
先行きが懸念されますが、米国は実にしたたかな国であり、その
逆襲が考えられます。
 今回のテーマの冒頭(EJ第2483号)で「オバマがデフォ
ルト宣言をする日」と書いたのですが、それに近いことを本気で
米国は仕掛けてくる可能性があるのです。
 2003年に米国は、新しい「新20ドル札」を発行している
のですが、ご存知でしょうか。
 米国の造幣局の発表によると、その目的は「偽造防止」である
そうです。近年のデジタル技術の発達により、偽ドル札は本物と
ほとんど見分けがつかなくなっているのです。確かに北朝鮮など
は偽ドル札を製造しており、「偽造防止」は一応納得のいく目的
のように見えます。
 1995年の時点で米国において発見された偽造紙幣のうちデ
ジタル技術を使ったものは1%以下だったのですが、2002年
までにはその比率は40%以上に向上しているのです。
 さて、「新20ドル札」ですが、これには3つの最新技術が使
われているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      第1の技術:精巧な透かし模様の挿入
      第2の技術:特殊な偽造防止線の採用
      第3の技術:カラーシフティング利用
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の技術は「精巧な透かし模様の挿入」です。
 お札を光にかざすと、肖像画に似た透かし模様が両面から見え
るようになっているのです。
 第2の技術は「特殊な偽造防止線の採用」です。
 お札を光にかざすと、お札に埋め込まれた縦に走るプラスチッ
クの線が見えるのです。しかも、その線の中に次の文字と小さな
旗が描かれているのが見えます。
―――――――――――――――――――――――――――――
            USA TWENTY
―――――――――――――――――――――――――――――
 第3の技術は「カラーシフティング利用」です。
 紙幣の印刷にはカラーシフティング・インクを利用しているの
です。このインクは見る角度によって色が変化するのです。「新
20ドル札」の場合、紙幣の右下の「20」の数字は、紙幣の角
度を変えると赤褐色から緑色に変化するのです。
 しかし、造幣局の発表と裏腹にデジタル技術の進歩に反比例し
て偽造紙幣は減っているのです。北朝鮮は別として、2000年
前後に世界市場に出回っていた偽札はドル紙幣全体の0.01 〜
0.02 %に過ぎないことがわかったのです。それでは、米国が
「新20ドル札」を作った本当の目的とは何でしょうか。
 国際政治経済学者の浜田和幸氏によると、ドルの兌換通貨のた
めの布石ではないかというのです。実は「米国が金本位制に戻る
のではないか」といううわさはここ数年来ずっと出続けているの
です。そのため、昨年6月から8月にかけて、EJでは「金」の
問題を次のように取上げて47回にわたって書いたのです。興味
があったら参照してください。
―――――――――――――――――――――――――――――
  「金」をコントロールする米国の長期金融戦略を探る
   ―― このままでは日本は3度の敗戦になる ――
http://electronic-journal.seesaa.net/category/5295267-1.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、新ドル札を金の兌換紙幣にした場合、旧ドル札とどの
ように交換するのだろうか――まともにやると損をしてしまうこ
とになります。実はそこに凄いトリックを仕掛けているのです。
以下、浜田和幸氏の説をご紹介します。
 米国が新ドル札を作ったとします。仮にその新札は、額面の5
分の1を「金」と交換できると発表します。この場合、別に5分
の1でなくても、10分の1でもいいのです。10分の1とする
と、100ドル紙幣の場合、10ドル分は「金」と交換できるこ
とになります。そうすれば通貨の価値は確実に増します。
 ここでオバマ米大統領は、かつてニクソン大統領がやったよう
に次のように宣言します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 今までの旧ドル札は米国民であれば、いつでも無制限に新ドル
 札に交換します。ですから、旧ドル札はそのまま持っていてく
 ださい。ただし、国外の旧ドル札については、新札ドル札には
 交換できません。
―――――――――――――――――――――――――――――
 つまり、この宣言の直後から米国内外のドルは切り離されるこ
とになります。外国――例えば日本や中国のドルは「金」との交
換ができないただの紙切れになり、部分兌換紙幣(新ドル札)と
の間に為替レートができます。
 そうすると、当然外国のドル紙幣の価格は下がり、1ドルが1
ドルではなくなってしまいます。どうでしょう。当然国際的な非
難は浴びるでしょうが、この手を使うと、米国の対外債務はほと
んどをチャラにできるのです。
 米国は、今回の米国発の金融・経済危機について、一切謝罪し
ていないのです。そのことを考えると、このような手を米国が使
わないとは断言できないのです。国が潰れるよりマシであるとし
てやりかねないのです。考えてみれば、ニクソン・ショックもこ
れと同じことなのです。
 これが、本テーマの冒頭で述べた「オバマがデフォルト宣言を
する日」の本当の意味なのでしょうか。日本はそういうことも視
野に入れるべきです。     ――[大恐慌後の世界/58]


≪画像および関連情報≫
 ●新20ドル札/流通開始/2003.10.9/共同通信
  ―――――――――――――――――――――――――――
  【ワシントン9日共同】偽造防止に工夫を凝らした米国の新
  20ドル紙幣の流通が9日始まり、ニューヨークのタイムズ
  スクエアでイベントが開かれた。20ドル札は最も流通枚数
  が多い。新紙幣は初めて黒と緑以外の色を背景に用いたのが
  特徴で薄い桃色や青などの配色。プラスチックの垂直線が埋
  め込まれているほか、透かしや傾けると色が変わって見える
  数字で偽造防止を図った。ジャクソン第7代大統領の肖像や
  紙幣の大きさは変わらない。米国では2004年以降、新デ
  ザインの50、100ドル札が登場する予定で5、10ドル
  札の変更も検討されている。        ――共同通信
  ―――――――――――――――――――――――――――

新20ドル紙幣.jpg
posted by 平野 浩 at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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