2009年03月24日

●「国策捜査ではなく官僚組織の牽制」(EJ第2536号)

 現在の検察のトップは、樋渡利秋検事総長です。この人はどう
いう人物なのでしょうか。
 検事任官は1970年、大分地検などの地方を回り、法務省刑
事局長、法務事務次官、東京高検検事長と着実なステップでトッ
プへ上り詰めています。重要なポイントは、樋渡氏が今年5月か
ら開始される裁判員制度の強力な推進者であるということです。
 樋渡利秋氏がどういう考え方の持ち主であるかについて、次の
ブログ「池内昭夫のヤフーブログ」を読んでみてください。
―――――――――――――――――――――――――――――
   裁判員制度:樋渡検事総長の訳の分らぬ訴え
   http://blogs.yahoo.co.jp/akio_i1960/37162206.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 今回の小沢事務所の強制捜査を民主党筋は「国策捜査」といっ
ていますが、現在の麻生政権は国策捜査をやれる力など持ってい
ないと考えます。検察が主体的に動いて政権がそれを黙認したと
いう構図ではないかと考えます。それでは、今回の強制捜査はど
のような意図の下に行われたものでしょうか。
 これはオール官僚組織による政権交代に対する牽制ではないか
と考えます。検察に関していうと、裁判員制度について民主党は
政権を取ったら見直すと言明しているし、その他の野党は全面反
対の姿勢です。そういう野党が政権を取ったらどうなるか――こ
ういう危機感を検察トップが持つことはありうると考えます。
 『週刊新潮』3月26日号では、司法記者による次のコメント
を紹介しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察の当初のシナリオでは、小沢代表のケースと同じ政治資金
 規正法違反で二階経産相の秘書を検挙し、与野党のバランスを
 取る予定でした。ところが、急遽、小沢代表の疑惑をもっと捜
 査する方針に切り替わった。 ――『週刊新潮』3月26日号
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在、検察は全国の地検から検事の応援を求め、東北地方の捜
査を進めています。その原因は、西岡武夫・参議院議運委員長に
よる「検事総長を証人喚問すべし」という発言に検察側が激怒し
「小沢集中捜査」がはじまったというのです。
 これに関して、既出の郷原信郎氏は、裁判員制度スタートの準
備に忙殺されている地検に無理やり検事の応援を求める検察の異
常な事態について次のように説明しています。こういう記事は新
聞には掲載されないのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 それは、強制捜査に着手したところ、民主党サイドの猛反発、
 強烈な検察批判などによって、予想外に大きな政治的・社会的
 影響が生じてしまったことに驚愕し、批判をかわすため、泥縄
 式に捜査の戦線を拡大しているということではないか。当初か
 ら、他地検への応援要請が必要と考えていたのであれば、強制
 捜査着手を別の時期に設定していたはずだ。民主党サイドだけ
 への偏頗な捜査と言われないように自民党議員にも捜査対象を
 拡大させる一方、小沢氏側に対しても、何かもっと大きな容疑
 事実をあぶり出すか、秘書の逮捕事実が特に悪質であることを
 根拠づけることが不可欠となり、その捜査のために膨大な人員
 を投入しているというのが実情だろうと思われる。
                    ――郷原信郎弁護士
―――――――――――――――――――――――――――――
 上記の記事は、2009年3月17日付の次の「日経ビジネス
オンライン」に掲載されたものです。内容の濃い記事であり、一
読の価値があると思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「ガダルカナル」化する特捜捜査/「大本営発表」に惑わさ
 れてはならない/郷原信郎氏
 http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090315/189047/
―――――――――――――――――――――――――――――
 郷原氏は、検察のリークを「大本営発表」になぞらえています
が、この手法が明らかにおかしいと思ったのは、小沢事務所の元
秘書であった石川知裕・民主党代議士の参考人としての事情聴取
のリークです。
 検察が参考人としての事情聴取をやるのは検察の仕事ですから
問題はありませんが、容疑者ではないのですから、極秘に行うべ
きであり、メディアに対してリークするなどもってのほかです。
まして石川知裕氏の選挙区は北海道第11区で、酔っ払い会見で
辞任した中川昭一・自民党代議士と同じ選挙区なのです。政治広
報センターの宮川隆義氏の予測によると、石川氏の方が△で優勢
なのです。こういう事情から考えると、検察のこのやり方は民主
党から見ると、選挙妨害以外の何物でもないでしょう。しかし、
この不条理さを指摘するメディアはほとんどないのです。
 別に民主党を応援するのではありませんが、現在の日本の状況
を考えると、政権交代をさせることによって、ほとんど50年以
上も続いている自民党政権を一度終わらせるのが一番良いと考え
るからです。
 今回の小沢ショックが響いて、仮に次の衆議院選で自民党が勝
利を収めたとしてもギリギリで過半数を占めることは間違いない
でしょう。もう3分の2は使えないのです。そうなると、いかに
直近の民意であると自民党が主張しても政局は安定せず、重要法
案は何も通らないでしょう。政治状況は今よりも一層ヒドクなる
だけです。
 宮川隆義氏の予測によると、小沢続投の場合、民主党は47議
席を失い、逆に自民は42議席、公明は6議席回復するが、自公
政権維持に必要な241議席には26議席不足する――つまり、
それでも政権維持は困難であるというのです。
 なお、そういうことはまずないと思いますが、自公が一番恐れ
ているのは岡田でも菅でもなく、長妻昭を代表に立ててくる場合
であるといわれています。   ――[大恐慌後の世界/54]


≪画像および関連情報≫
 ●検察リークについて/池田信夫・ブログ
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  西松建設事件をめぐって、「検察のリークが政治的だ」とい
  う批判が民主党から出ているようだが、これは検察報道の実
  態を知らないのではないか。私もそういう仕事につきあった
  けど、検察も警察もそんな簡単にリークなんかしてくれない
  よ。捜査によって知りえた情報を漏らすことは守秘義務違反
  だから、よほど信頼関係を構築した記者が、自分で調べたネ
  タをもってきて、夜回りで検事に「こういうことでいいです
  よね?」と当てて、それに検事が目で答える、といった微妙
  なものだ。最終的な責任は、あくまでも報道するメディアに
  ある。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/0bce4d02eec626a945145fc13698fa91
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樋渡検事総長.jpg
樋渡検事総長
posted by 平野 浩 at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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