よると、就任直後に69%あったオバマ大統領の支持率がわずか
1ヵ月で10ポイントダウンして59%となっています。同時に
13%だった不支持率も25%に上昇しているのです。
これは何を意味するのでしょうか。
日本では、麻生政権がモタモタやっているせいもあって、オバ
マ大統領はよくやっているというのが大方の評価ですが、米国民
は厳しく現実に目を向け始めたのです。そこではっきりし出した
のは、オバマ大統領の変節ぶりです。支持率ダウンはこれに反応
したものと思われます。
そもそもオバマ氏はなぜ米大統領になれたのでしょうか。
オバマ氏勝利のかぎになったのは、選挙直前の2008年9月
15日にリーマン・ブラザーズが倒産したことです。これは、世
界中に大きなショックをもたらしましたが、米国民にとってはわ
れわれの想像以上の大ショックだったのです。
それは、共和党系の世論調査機関ワースリング・ワールドワイ
ドによる大統領選の出口調査で、84%の人が「経済問題を考え
て投票した」と答えているのを見ても明らかです。
リーマン・ショック以後、オバマ氏は「アメリカ経済に危機が
来る」とさかんに訴え始めたのですが、米国人はこのオバマ陣営
の宣伝に敏感に反応したのです。
銀行――といってもリーマン・ブラザーズは投資銀行ですが、
米国人と銀行との関わりは、日本人とはかなり異なるのです。こ
れについて40年近く米国に住み、生活をしている既出の日高義
樹氏は次のように述べています。
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アメリカの人々は、まず資金を貯めて商売をするという意識が
ない。銀行から借金するのが当然だと考える。アメリカの人々
にとって貯金をするのは無駄なことで、商売をするために資金
を借り、金利を払ったとしても、それ以上に稼げばよいと考え
ている。私の友人がこう言ったことがある。「アメリカでは、
その日の朝に1ドルもなくても商売をしている者が大勢いる。
毎朝銀行に電話し、資金を借りて商売する。――日高義樹著
『不幸を選択したアメリカ/オバマ大統領で世界はどうなる』
PHP
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こういう米国人にとって、2008年の金融混乱はまさに大事
件だったのです。そういう風潮を巧みに利用したのがオバマ陣営
であったといえます。
それでは、どうしてオバマ大統領の支持率が下がっているので
しょうか。
オバマ政権は、米国民が経済問題の解決を託した政権といえま
すが、それに十分応えていないということです。それは、ワシン
トンDC在住で、マーケティング・マネージャーを務める35歳
のラテン系黒人女性の次の声にあらわれています。
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彼のメッセージを信じようとしているわ。でも政府を国民に開
こうという兆しが一向に見えないの。相変わらず、企業に喜ん
でもらおうというスタイルだわ。CEOに最も近いところにい
るアドバイザー以外の声を問いていないんじゃないの。
――SAPIO/3/25より
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オバマ政権は、総額2兆ドルを超える金融対策、7872億ド
ルの景気対策、750億ドルの住宅ローン対策を矢継ぎ早に打ち
出しているのですが、同時にアフガニスタンに1万7000人の
兵を送り込むことを発表しています。
結局、景気対策よりも軍事費優先であり、右旋回の政策に黒人
リベラル派が「チェンジしたのは公約の方ではないか」とブーイ
ングをしているのです。
黒人解放のために尽力して暗殺されたマルコムXという急進的
黒人指導者がいます。彼が設立した政治グループ「アフリカ系ア
メリカ人統一機構」に所属するジェームズ・スモール氏はオバマ
政権を次のように批判しています。
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今日の状況は、マルコム]が生きていた時代よりもはるかに悪
い。黒人の高校中退率は50%で、黒人の失業率はこの国の歴
史が始まって以来の高さだ。状況はますます悪くなつている。
華々しく登場した大統領には重い責務がある。だが、彼は黒人
のための大統領ではないのだ。彼はたまたま黒人であった大統
領なのだ。言い換えれば、アメリカの黒人が抱えている問題を
解決しようとする内在的動機が欠けているのだ。(中略)大統
領は入れ替わる一方で軍やCIAは成長し続ける。そして軍産
複合体はマルコムが生きていた時と何ら変わらず、この国に深
く根を張っているのだ。 ――SAPIO/3/25より
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100億ドルの公的資金を注入されてバンカメに救済合併され
たメリルリンチは、昨年12月に36億ドルものボーナスを幹部
に支払っていることが発覚しています。
ボーナスは一月に支給されるのですが、それを前倒しして私腹
を肥やしたわけです。さすがにオバマ大統領は、就任早々、これ
に対して怒って見せましたが、それはあくまでポーズのようにし
か見えなかったのです。
オバマ大統領は、そういうサブプライム問題に端を発するウォ
ール街の金融体制を追及するために、親友のホールダー司法長官
を任命しましたが、本当にウォール街の不正を追求できるのでし
ょうか。もし、できないと、オバマならやってくれると期待して
ホワイトハウスに送り込んでくれた保守穏健派の怒りを買うこと
になるでしょう。しかし、本当にとことんやると、米国の陰の勢
力と激突することは必至であり、オバマ大統領はケネディと同じ
轍を踏むことになります。 ――[大恐慌後の世界/50]
≪画像および関連情報≫
●マルコムXとは何か
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1960年代アメリカの代表的な黒人運動の指導者としてキ
ング牧師とマルコム=X の名が挙げられる。 前者が白人と
黒人とが手を取り合うこと(人種統合)を目指したのに対し
後者は黒人が白人社会と訣別し独立すること(人種分離)を
訴えた。マルコムは「白人は悪魔だ」と説き、黒人は白人と
一緒にいるかぎり平和に暮らすことはできないと主張した。
自分はアメリカ人である前に黒人であるという意識が強かっ
たマルコムは、黒人に決して関心を持とうとしないアメリカ
という国に興味はなかった。
http://www.k3.dion.ne.jp/~chah/x.htm
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マルコムX