2009年03月16日

●「オバマは午前3時の電話になる?」(EJ第2531号)

 EJ第2530号で、現在米ドルが何とか持ちこたえているの
は、次の2つの要因によるものということを指摘しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.GCCがドルペッグ制を維持していること
    2.AAAの米国財務省証券(米国債)の存在
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の要因については既に述べているので、第2の要因につい
て考えます。
 米国債――これは現在においても世界で最も流動性が高く、安
全な金融商品としての地位を失っていないのです。しかし、それ
は世界が、というより貿易黒字国である日本と中国が大量に買い
続けているからなのです。この状態が続く限り、米ドルは安定し
続けることができます。
 米国は、双子の赤字を抱えており、その赤字の補填を外国の資
金に依存しているのです。かつてはこの役割を担ってきたのは日
本なのですが、今では圧倒的に中国が米国債を買っています。こ
れまで、中国は米国の市場に依存してきたのですが、現在、米国
は中国の資金に依存するようになっているのです。
 中国が保有する米国債は、2008年9月に日本を上回り、初
めて米国の最大の債権国となっています。昨年の11月末現在、
中国の米国債保有額は6819億ドルまで増加し、外国保有額の
22.1 %を占めるに至っています。
 日本はというと、実はこのところ外国保有額のシェアが減少し
ているのです。昨年の11月末現在で18.7 %なのですが、こ
の減少ぶりはどうやら意図的にシェアを落としているようにも感
じられます。不思議なことにこのことはメディアでは報道されて
いないのです。
 大前研一氏によると、福井俊彦前日銀総裁は、米国の逆鱗にふ
れないように慎重に少しずつ外貨準備をユーロにシフトさせてい
たということです。これこそ通貨の番人である日銀総裁の仕事で
あり、福井前日銀総裁は良い仕事をしているといえるでしょう。
 米国は景気対策を実施するため、国債をさらに増発せざるを得
ない状況にあります。そこで頼るのは中国と日本なのですが、中
国は金融危機後も積極的に米国債を買い増しており、昨年末には
中国が保有する外貨準備の36.2 %を米国債が占めるにいたっ
ているのです。中国はさらに買い増す余力を持っています。
 明らかに中国はこの米国債を戦略的に使おうとしています。米
国債を日本が大量に保有するのと、中国が保有するのとでは意味
が大きく違うのです。
 日本は安全保障を米国に依存しており、米国に相当無理なこと
をいわれても断り切れない弱さがありますが、中国は安全保障面
では自立しており、膨大な米国債保有を戦略的に使える立場にあ
るからです。つまり、中国はいつでも「米国債を売るぞ!」とも
いえるし、「米国債は買わない!」ともいえるのです。
 現に、昨年12月に開かれた第5回米中経済戦略対話では、米
国が要求している人民元高要請を切り出せず、逆に中国に在米資
産の安全確保という要請を突き付けられてしまう始末です。
 ところで、日高義樹氏という人をご存知でしょうか。
 元NHKのワシントン支局長で、現在ハドソン研究所首席研究
員をされています。私は、毎月1回放送されるテレビ東京系の番
組「日高義樹のワシントンレポート」を欠かさず見ています。米
国の現状を追い、共和党政権を支える論客メンバーを招き、毎月
のテーマに沿って、対談方式で放送されています。
 日高氏の著書によると、キッシンジャー博士は、今回の金融危
機についての中国の考え方について、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国はアメリカが政治的にとんでもないことをすることは知っ
 ていたが、金融体制については信用してきた。だから、アメリ
 カの金融危機には大きな衝撃を受けた。中国政府はこれまでの
 やり方を考え直す必要があると思っている。
                  ――日高義樹著/PHP
 『不幸を選択したアメリカ/オバマ大統領で世界はどうなる』
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国も今回の金融危機では大きな打撃を受けています。そのた
め、中国としては輸出一辺倒の政策を変更し、国内投資を増やし
て内需拡大をしようとしています。そうしないと、輸出に頼る中
国経済はやっていけないのです。
 この政策が取られると、中国政府は国内企業を保護し、輸入を
制限するようになります。これを米国サイドから見ると、中国か
らの資本が減少するとともに、中国への輸出も困難になることを
意味します。
 こういう状況下において、オバマ大統領率いる米国は、減税を
行い、デトロイトの自動車産業を助け、不良債権を肩代わりしよ
うとしています。しかし、この政策を進めるためには莫大な資金
がいりますが、それは現在米ドルを支えている2つの要因に変化
がないことが条件になります。とくに中国の出方が大きなかぎを
握るのです。
 オバマ大統領の力量についてはまだ未知数です。日高義樹氏は
オバマ大統領については厳しい意見を持っており、「午前3時の
電話」になる恐れがあるといっています。
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 夜中に電話が鳴る。電話をとったヒラリーは頭にカーラーを巻
 き、顔はべたべた美容マスクで覆われている。ひとしきり相手
 のいうことを聞いたあと、ヒラリーが言う。「落ち着きなさい
 よ、バラク。私が何とかするから。 ――日高義樹著/PHP
 『不幸を選択したアメリカ/オバマ大統領で世界はどうなる』
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、ヒラリーが国務長官に任命された直後に作られたお笑
いのコントです。未経験の大統領に対する最大の皮肉をこめたも
のです。           ――[大恐慌後の世界/49]


≪画像および関連情報≫
 ●米民主党・ヒラリー陣営の選挙CМ/午前3時の電話
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  スーパーチューズデー以降11連敗を喫し、追い込まれたヒ
  ラリー陣営は、あらゆる手段を用いて相手を攻撃するという
  意味の「キッチン・シンク」作戦に出た。その一環として2
  月29日、予備選を4日後に控えたテキサスで、CM「午前
  3時の電話」を流し始めた。寝室ですやすや眠る子供たち。
  そこに鳴り響く電話。不安げに子供部屋を覗く母親──。低
  い男の声が語る。
      http://08race.blog37.fc2.com/blog-entry-8.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

日高義樹氏.jpg
日高義樹氏
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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