たちは、オバマ大統領が著名な政治家や学者など、選り抜きの優
秀な人材をスタッフとして発表することに対して「ベスト・アン
ド・ブライテスト」という言葉を何回も使っています。
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The Best and the Brightest.
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これを見た日本のマスコミも、これも「称賛」の意味で使った
のです。しかし、米国のマスコミはこの言葉を必ずしも「称賛」
の意味で使ったのではなかったのです。
「ベスト・アンド・ブライテスト」というのは、1972年に
米国のジャーナリストであるデビッド・ハルバースタムの手にな
る本の題名なのです。この本は、米民主党ケネディ政権のベトナ
ム戦略を分析しています。
ケネディ政権といえば、今回のオバマ政権と同様にハーバード
などの優秀な大学を出た人材を政権スタッフに集めたのですが、
彼らは自分たちの能力を過信し、ベトナム戦争に関する国務省や
国防総省などの現場からの意見を軽視して取り上げず、現実にそ
ぐわない戦略を展開して戦争を泥沼化させたのです。
ハルバースタムはこの事実を最大限の皮肉をこめて、本の題名
に「ベスト・アンド・ブライテスト」とつけたのです。優秀な人
ばかり集めても、チームとしてよい仕事は必ずしもできないとい
うぐらいの意味でしょう。
これについて、既出の田中宇氏はなかなか印象的なことを書い
ています。久しぶりの民主党政権であるオバマ政権が、かつての
ケネディ政権と同じように優秀な人ばかりを集めようとしている
傾向――まさに「歴史は繰り返す」です。
「歴史は繰り返す」は哲学者ヘーゲルの言葉ですが、この言葉
にあのマルクスは次の言葉を付け加えたのです。
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歴史は繰り返す――
一度目は悲劇として、二度目は茶番劇として
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このマルクスの付け足し部分を巧みに使って、田中宇氏は全米
の期待を担って発足したオバマ政権は「二度目は茶番劇」を演じ
ることになるとして、次のように述べています。
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ハルバースタムも指摘しているとおり、実はこの言葉は賛辞で
はなく、この言葉を使ってオバマを賛美した気になつているの
は明らかな誤用である。そして、誤用であるばかりでなく「二
度目の茶番劇」であると私が感じるのは、オバマ政権は非常に
高い確率で失敗すると予測されるからだ。オバマが就任する前
のブッシュ政権時代に、米国を破綻させるようないくつもの仕
掛けがセットされているため、オバマの大統領就任後1〜2年
間で、経済、軍事、政治という国家戦略の全分野で、次々と崩
壊が起きるだろう。最優秀の人々を集めても、それを防ぐこと
は、ほとんど無理である。オバマ政権は、就任する前から失敗
を運命づけられている。それなのに「最優秀の人材を集めたか
ら、きっとうまくいく」と喧伝されるのは、まさに「二度目の
茶番劇」である。 ――田中宇著/光文社
『世界がドルを棄てた日/歴史的大転換が始まった』
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現在米国では、ニューディール論争が盛んです。公共事業を柱
とするオバマ政権の景気刺激策に対して強い批判が出ているわけ
です。とくにネット上では論争がさかんです。
保守派のシンクタンクにケートー研究所というのがあります。
2009年1月9日、ケートー研究所は、オバマ政権の景気政策
を批判する新聞広告を出したのです。そこには、220人の著名
な経済学者が署名しているのです。
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私たちは政府支出が経済情勢を改善する方法とは信じない。フ
ーバーとルーズベルトの政府支出増大は、米国経済を大恐慌か
ら救い出すことはできなかった。 ――ケートー研究所
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米コラムニストのアミティ・シュラーズ氏は、次のようにニュ
ーディール政策を批判し、ニューディル政策は効果よりも副作用
の方が多いと主張しています。
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米国は信頼できない場所になった。ルーズベルト政権下では、
最もよかったときでも失業率は9%以上あった。この数字は、
人々に希望を与えるものではなかった。
――「週刊エコノミスト」2/17号
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こうしたニューディール政策批判に対して真っ向から反論して
いるのは、昨年のノーベル経済学賞受賞者、ポール・クルーグマ
ン・プリンストン大学教授です。クルーグマン教授は、ニューデ
ィール政策が思ったほど効果を上げていない理由について次のよ
うに主張しています。
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ルーズベルト大統領はモルゲンソー財務長官が均衡財政にとら
われ、思い切った支出をしなかったからだ。
――「週刊エコノミスト」2/17号
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クルーグマン教授は――これはサマーズ国家経済会議委員長も
同じ意見ですが――需要不足下での財政政策の有効性を説いてお
り、オバマ政権の景気対策は減税よりも公共事業を増やすべきで
あると提言しています。
しかし、公共事業の場合、何をやるのかを決めるのに時間がか
かる点が問題です。何しろコトは急を要するからです。のんぴり
やっているときではないのです。――[大恐慌後の世界/44]
≪画像および関連情報≫
●デビッド・ハルバースタムとニュージャーナリズム
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ベトナム戦争を知る世代にとって『ベスト&ブライテスト』
(1972年)は忘れられない作品だ。当時最高の知性と見
識を持っていたはずの、米国政財官のスーパーエリートたち
が自分たちの傲慢さに気付かないまま、大勢の米国の若い兵
士を戦地に駆り立て、死を強いる。その愚かしくも空虚な政
策決定プロセスを、500回にも及ぶ関係者へのインタビュー
を積み上げて暴いたのが、ジャーナリストで作家のデビッド
・ハルバースタム氏だった。
http://waga.nikkei.co.jp/enjoy/book.aspx?i=MMWAe1034011062007
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