2009年03月04日

●「米国はなぜ気前よく市場開放するのか」(EJ第2523号)

 昨日のEJで「米国の気前の良い市場開放」について少し言及
しました。米国は戦後一貫して国内製造業を保護しないで、自国
の消費市場を外国企業に開放してきています。
 この恩恵を一番受けたのは、世界の民主主義国家であり、中で
も日本はもっとも恩恵を受けた国であると思います。古くは、ソ
ニーのラジオからはじまって、パナソニックのテレビ、トヨタの
自動車などなど。もし、米国の市場開放なかりせば戦後の日本の
発展はなかったはずです。
 日本だけではありません。西ドイツも、韓国も、台湾も、東南
アジア諸国も、そして中国も、米国が商品やサービスを受け入れ
てくれなかったら、現在の繁栄はあり得なかったでしょう。
 しかし、その結果、米国の貿易赤字は拡大し、製造業は危機に
瀕しているのです。どうして米国はかくも寛大なのでしょうか。
 これについて、歴代米政権の国際主義に反対し続けている米の
言論人パット・ブキャナン氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 昔の愛国的な共和党政治家は、必要なら輸入品に高関税をかけ
 ても、米国の労働者に世界一の豊かな生活をさせることを最重
 視した。今や、こうした経済愛国主義は死滅し、自由貿易体制
 こそが正しいと信じ込んだ連中が多数派となり、世界経済が重
 視され、米経済は軽視されている。その結果、米国の製造業は
 死滅し、米政府は大赤字になっている。
                   ――田中宇著/光文社
     『世界がドルを棄てた日/歴史的大転換が始まった』
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国のこのような「気前の良い市場開放」の秘密は何でしょう
か。これはまさに謎なのですが、これについて考えるとき、次の
2つの視点に立ってみる必要があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
      1.米国経済を優先に考える
      2.世界経済を優先に考える
―――――――――――――――――――――――――――――
 普通は1の視点に立って考えます。つまり、国の利益という視
点に立って考えると、米国の気前の良い市場開放は米国にとって
あまりにもマイナスです。ブキャナンも「世界経済が重視され、
米経済は軽視されている」と嘆いています。
 しかし、2の視点に立って考えると、米国の市場開放はきわめ
て合理的なのです。つまり、われわれの住む世界には、国という
レベルで物事を考えて遂行している人たちだけでなく、そのひと
つ上の視点、世界というレベルでも物事を考えて決めている人た
ちがいるという考え方です。
 世界というレベルで物事を考えて決めている人――こういう人
たちというか、グループの存在をアカデミックの人たちは、一切
認めようとはしませんが、世界中で起きているさまざまな事件の
根っこの部分をていねいに調べていくと、そういう存在を否定で
きなくなってくるのです。そういう存在についてEJでは何回も
取り上げています。
 国際ジャーナリストの田中宇氏は、そういう存在を認めている
一人と思われますが、田中氏は自著やメールマガジン、ご自身の
ウェブサイトにおいて、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国の最上層部にいる人々が自国より世界を重視するのは、彼
 らが「資本家」だからであり、1970年代以来、発展が鈍化
 して投資の利回りが下がった米国よりも、これから発展しそう
 なアジアなど利回りの高い海外に投資することを好んだ結果、
 米国には海外の製品を積極的に輸入する市場としての役割を担
 わせる政策を30年間続けてきたのではないか、というのが私
 の分析である。           ――田中宇著/光文社
     『世界がドルを棄てた日/歴史的大転換が始まった』
―――――――――――――――――――――――――――――
 さて、五重苦の米経済としてひとつずつ検討してきていますが
五重苦の最後は「金融危機」です。
―――――――――――――――――――――――――――――
       1.米経済の不況
       2.米政府の財政赤字の急増
       3.世界的なインフレ
       4.ドルの信用不安
    →  5.金融危機
―――――――――――――――――――――――――――――
 今回の「金融危機」は、日を追うにつれて深刻さの度合いを深
めています。果たして日本や米国はこの金融危機を乗り切ること
ができるのでしょうか。
 4000兆円――この数字は、2007年10月のピーク時を
起点とした場合、株式を含む世界全体の金融商品の下落で失われ
た富なのです。これは、世界のGDP(国内総生産)の一年分が
消滅した計算になるのです。
 欧米の金融機関の抱えるクレジット商品――貸出債権、社債、
証券化商品の合計――の含み損は約5.8 兆ドル、約522兆円
に達し、最終的には1000兆円に膨らむ可能性があると予測さ
れています。
 欧米の主要金融機関だけでも潜在損失額は約300兆円、うち
未処理額はまだ約200兆円あるので、基礎収益力から判断して
不良債権処理には少なくとも14年はかかると思われるのです。
 これに対して世界各国の政府が460兆円の財政出動に乗り出
しています。まさに史上最大規模の財政出動なのですが、金融機
関の損失だけで1000兆円もあるのです。それに対して460
兆円の財政出動では「焼け石に水」ではないかという意見も出て
いることは事実です。
 本当に世界各国の金融当局は現在の施策でこの危機を乗り切る
ことができるのでしょうか。 ―――[大恐慌後の世界/41]


≪画像および関連情報≫
 ●パット・ブキャナンの復活/宮崎正弘の国際ニュース
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ブキャナン派の孤立主義的思想は、とりわけ経済政策に顕著
  だ。自由貿易に反対し、たとえば「鉄鋼ダンピング(不当廉
  売)問題で解雇された鉄鋼労働者はグローバル経済の犠牲者
  だ」とする。米国産業の保護や孤立主義的な外交方針を表明
  した。また同時に共和党が公言できないような「妊娠中絶禁
  止、保護貿易、孤立主義」を堂々と掲げるため、地方では人
  気が高く、共和党のキリスト教原理主義派の票を浚うのであ
  る。ブキャナンの歴史観は、大胆且つ率直で、「第二次世界
  大戦での米国の対ドイツ・対日戦開始は戦略的な誤り」とす
  る。ただこれは正しくとも、アメリカ人の平均的意識からか
  け離れている。そのため広い支持がブキャナンには集まりに
  くいのも事実である。
      http://www.melma.com/backnumber_45206_1459177/
  ―――――――――――――――――――――――――――

パット・ブキャナン.jpg
パット・ブキャナン
posted by 平野 浩 at 04:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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