2009年02月24日

●「『虚構の繁栄』の米国経済」(EJ第2517号)

 米経済は「五重苦」に陥っているといわれます。そのうちの2
番目は「米政府の財政赤字の急増」です。
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       1.米経済の不況
    →  2.米政府の財政赤字の急増
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 経済評論家の高橋乗宣氏によると、米国経済は今日まで30年
間にわたって「虚構の繁栄」を続けたといっています。米国は基
軸通貨国としての特権をフルに活用し、「虚構の繁栄」を作り出
すことによって、経済の実力とは大きくかけ離れた「強いドル」
と「強い米国」を今まで維持してきたのです。
 米国の「虚構の繁栄」は、次の3つの基本的な経済政策によっ
て30年間維持されたということができます。
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   1.2つの思想に裏打ちされたレーガノミックス
   2.永遠の成長が続行するニューエコノミー神話
   3.最先端金融技術/証券化を使った金融バブル
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 「虚構の繁栄」を作る基礎となったのは「2つの思想に裏打ち
されたレーガノミックス」です。1981年から1988年まで
のロナルド・レーガン大統領政権下で推進された政策です。
 2つの思想とは「新自由主義」と「小さな政府」の2つです。
これはケインズ主義とは対極に位置する経済政策であり、供給側
――サプライサイドを強化する政策手法なのです。
 企業や家計の大幅減税、規制緩和、そして歳出削減のための金
融引き締めを実施するというのがその主な柱です。企業の減税を
すれば、企業は設備投資や生産増加などの経済活動を積極的に行
うはずであるという読みがあり、あわせて、家計部門の税負担を
下げることによって消費が活性化し、企業の業績は向上し、税収
が増えると考えていたのです。
 しかし、消費は拡大したものの、税収は伸び悩み、財政を悪化
させる結果となり、歳出削減にも失敗したので、財政赤字はさら
に拡大したのです。
 しかし、大幅減税とインフレ退治のための金融引き締めを同時
に行ったところ、金利上昇とドル高を招く結果となり、その結果
ドル高は米国の製造業を壊滅状態に陥れ、多くの企業が倒産する
ことになったのです。
 このレーガノミックスがいかに失敗であったかについて高橋乗
宣氏は次のように述べています。
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 1980年に1万1000件余りだった企業倒産件数は、82
 年には2万5000件近くまで急増した。特に鉄鋼や自動車な
 ど主要な製造業の業績悪化は著しく、多くの企業で工場閉鎖や
 労働者の解雇が行われた。そして1983年の失業者数は10
 71万人と、戦後初めて1000万人の大台を突破したのであ
 る。          ――高橋乗宣著/東洋経済新報社刊
 『世界恐慌の襲来/日本経済は「最悪の10年」に突入する』
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように、このサプライサイド経済学は明らかに失敗といえ
るのですが、その後日本の小泉政権が「改革」と称して家計の減
税抜きでこの経済政策を導入し、これによって日本経済にさまざ
まな問題を残す結果となったのです。
 続いて、「虚構の繁栄」を継続させる結果となったのは「永遠
の成長が続行するニューエコノミー神話」なのです。1990年
から2000年代初頭にかけての経済繁栄期です。
 そもそも経済というものは、景気の上昇と後退を繰り返しなが
ら成長していくものなのです。しかし、このような景気循環は過
去のもので、景気は後退しないまま成長が続くというのがニュー
エコノミー論なのです。
 米国の場合、前の時代からの規制緩和や経済のグローバル化、
労働市場の流動化などがニューエコノミーを支える要因になり、
米国は空前の好景気を謳歌したのです。
 しかし、これはバブルだったのです。ニューエコノミー景気を
あのグリーンスパン元FRB議長は次の言葉で表現したのです。
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      根拠なき熱狂/irrational exuberance
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 高橋乗宣氏は、ニューエコノミーの評価として次のように述べ
ているのです。
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 米国は2000年まで長期的な経済成長ができたのは、新たな
 経済理論が発明されたからでは決してなく、積極的な個人消費
 や海外からの資金流入によって、内需が拡大したためにすぎな
 かった。国内純投資の対GDP比率が急上昇したが、表裏一体
 の関係として経常収支の赤字は拡大していくばかりであった。
             ――高橋乗宣著/東洋経済新報社刊
 『世界恐慌の襲来/日本経済は「最悪の10年」に突入する』
―――――――――――――――――――――――――――――
 続いて米国では、空前の住宅・不動産投資ブームがサブプライ
ム問題が顕在化するまで続くのです。そしてこの時代の経済を支
えたのは「最先端金融技術/証券化を使った金融バブル」であっ
たのです。
 最先端の金融技術を使った証券化の手法は「ハイリスク・ハイ
リターン」ならぬ「ローリスク・ハイリターン」を可能にする夢
の金融商品を実現させたかに思われたのですが、そのようなうま
い話が長続きするはずはなく、リーマン・ショックによって証券
化商品自体の信頼性が失われると、売りが売りを呼ぶパニックと
なり、金融危機へと突入してしまったのです。
 米国経済は、以上の3つの経済政策によって30年の「虚構の
繁栄」を築いたのです。   ―――[大恐慌後の世界/35]


≪画像および関連情報≫
 ●レーガノミックス/再生する米国経済
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  1998年8月のロシア金融危機と引き続く金融市場の混乱
  は順風満帆の米国経済に冷水を浴びせる事件であった。ロシ
  アで金融危機が勃発するや米系ヘッジファンドの中にはかな
  り大きなダメージを被るところも出てきた。特にマートンシ
  ョールズという二人のノーベル経済学者を有するロングター
  ム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が九月に破たん
  の危機に瀕した際は、ニューヨーク連銀が音頭を取ってLT
  CMの清算を回避するなど極度に緊迫した場面も見られた。
    http://homepage2.nifty.com/tanimurasakaei/re-ga.htm
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高橋乗宣氏.jpg
高橋乗宣氏
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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