2009年02月23日

●「借金して消費してきた米国」(EJ第2516号)

 現在、米国はどのようになってしまっているのでしょうか。
 2月18日に配信された田中宇氏のレポート「揺らぐアメリカ
の連邦制」は、次のような衝撃的ニュースを伝えています。
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 2月1日、米国カリフォルニア州政府が、財政破綻(支払い不
 能)を宣言した。加州政府の会計責任者はこの日、州政府の手
 持ち資金が底をつき、同日に支払われるはずだった州民に対す
 る福祉手当、奨学金、税の還付金など総額37億ドルが支払え
 ないと発表した。支払いを受けるべき人々に対して借用書(I
 OU)を発行し、いずれ支払い可能になったら払うことになり
 州職員の人件費を浮かすため、平日に2日間、役所を閉めるこ
 とにした。     ――「田中宇の国際ニュース解説」より
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 米カルフォルニア州といえば、国家に例えると、世界第8位の
経済規模を持つ国なのです。もっともシュワルツネッガー知事の
率いるカルフォルニア州は、金遣いの荒いことで有名であり、い
ずれこうなることを予測する向きは多かったのです。
 しかし、カルフォルニア州以外にも財政破綻しそうな州はたく
さんあるのです。昨年の12月の段階で41州、1月末の時点で
46州が大幅な財政赤字状態に陥っているのです。全米50州中
46州がそういう状態なのです。
 現在の米国では、貧富の差が拡大しつつあります。それも半端
なものではなく、極端なものになっているのです。ニューヨーク
タイムスによると、2003年から2005年にかけての米国の
上位1%の高額所得者の所得増加分の総額――5248億ドルは
2005年の米国の下位20%の低所得者の所得総額――383
4億ドルよりも多いという異常事態なのです。
 さらに深刻な事態は、国家発展の要であった中産階級では、ク
レジットカードの破産が増えているのです。2007年度の1年
間で、カード債務を30日以上遅延している人は26%も増えて
いるのです。クレジットカードは米中産階級を象徴する生活のツ
ールであり、これを失うと中産階級は貧困層に転落してしまうこ
とになります。
 前回述べたように、現在米国は五重苦を負っています。その第
1は「米経済の不況」ですが、米経済は今まで旺盛な経済成長に
支えられてきたのです。米国の経済成長の要因の70%は米国民
の「消費」で成り立っていたのです。その米国の「消費」に赤信
号が灯っているのです。
 希代の投資家であるジョージ・ソロス氏は、米国がこうなるか
なり前から今回の金融危機を「世界的な超バフルの崩壊」として
次の本で警告を発していたのですが、リーマン・ブラザーズやメ
リルリンチなどの米金融機関は警告を聞き入れなかったのです。
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  ジョージ・ソロス著/徳川家広・訳/松藤民輔・解説
   『ソロスは警告する/超バブル=悪夢のシナリオ』
                      講談社刊
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 ソロス氏は、この本の冒頭で、超バブルの世界的爆発の元凶に
ついて、次のように分析しています。
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 私の分析では、この超バブルには他のすべてのバブルと同じく
 人々が誤った投資行動を続ける原因になった「支配的なトレン
 ド」と「支配的な誤謬」とが存在した。「支配的なトレンド」
 とは信用膨張、つまり、信用マネーのあくなき肥大化であり、
 「支配的な誤謬」とは、19世紀には自由放任と呼ばれていた
 市場にはいっさい規制を加えるべきではないという考え方――
 すなわち市場原理主義である。過去25年間に発生した金融危
 機の数々が、それなりにうまく克服されてきたおかげで、信用
 膨張のトレンドも市場原理主義という誤謬も、かえって強化さ
 れてしまった。そのために、われわれは超バブルがここまで大
 きく育つことを許してしまったのである。だが、これ以上の信
 用膨張がもはや不可能となり、しかも市場原理主義の誤りが余
 すところなく暴露されてしまった今回の危機は、歴史の大きな
 転換点とならざるをえないだろう。
            ――ジョージ・ソロス氏の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ソロス氏のいう「支配的なトレンド」は「信用膨張」のことと
されていますが、これは個人の預金もないのに高級車を買うよう
な行為を大勢の人がやっていることをいうのです。
 何しろ米国では、無職・無収入の人に対しても所得があるよう
に書類を偽装して住宅ローンを組んだりすることはごく普通に行
われていたのです。こういう行為全般を「信用膨張」といってい
るのです。サブプライム問題の根本原因としてこの信用膨張があ
るのです。
 米国では、収入のある人に対しては、その多寡にかかわらず、
比較的緩い審査でクレジットカードが発行されるのです。現在、
米国では民間雇用が収縮しており、インフレもひどいので、米国
民の実質収入が減っているのです。
 そのため人々は食糧やガソリンなどの生活必需品をカードで購
入し、カードローンの限度がいっぱいになるまで使い、やがて支
払えなくなって、カード破綻する人が増えているのです。
 今や全米の総世帯数(約1億1000万人)の約7%に当たる
800万世帯が、既に債務超過になっているといわれます。それ
に加えて多くの人が職を失い、失業率が上昇しています。
 米国民の多くの人々は、職と住宅を奪われ、クレジットカード
も取り上げられる――これによって中産階級が貧困層に没落し、
米国の消費は大きく落ち込みつつあります。これを回復させるの
は容易なことではないのです。オバマ政権は米国のこの状況を改
善できるのでしょうか。経済成長の要である消費を回復させるこ
とはできるのでしょうか。  ―――[大恐慌後の世界/34]


≪画像および関連情報≫
 ●予言/米国は内乱で6つに分裂する
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  2008年末、以前から米国の崩壊予測を言い続けてきたロ
  シアの著名な学者(Igor Panarin)が「1010年6−7月
  に、米国は内乱で6つに分裂する。東部諸州はEUに加盟し
  中西部はカナダと合併し、南部はメキシコが、加州は中国が
  とり、ハワイは日本か中国のものになり、アラスカはロシア
  領に戻る」という予測を述べて話題になった。
           ――「田中宇の国際ニュース解説」より
  ―――――――――――――――――――――――――――

「ソロスは警告する」.jpg
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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