2009年02月19日

●「ベネズエラが石油を売る未来型方式」(EJ第2514号)

 現在ロシアはイランと組んで、他の天然ガス産出国を巻き込み
長期的なガス国際価格の釣り上げを狙う「ガスOPEC」を作ろ
うとして動いています。「ガスOPEC」は正式には「ガス輸出
国フォーラム/GECF」というのです。
 2006年10月、プーチン政権が天然ガス生産国による国際
同盟の創設を提唱したのが発端であり、参加国にはアルジェリア
イラン、リビアのほか中央アジアのカザフスタンやトルクメニス
タンなどが上げられ、これら諸国の天然ガス埋蔵量は世界の73
%を占めるといわれています。
 この構想は、生産量で2位の米国や3位のカナダ、4位の英国
を排除して形成されており、ロシアがその盟主となることが想定
されているので、欧米諸国から強い懸念を持たれています。
 しかし、今回の国際金融危機と世界不況によって、当初予定し
ていた計画が相当遅れるとみられています。なぜなら、昨年10
月と11月に開催する予定になっていたガスOPECの設立会議
が相次いで延期されているからです。
 原油価格の下落でロシアの経済状況が相当深刻な状況になって
いるのは確かですが、ロシアの経済状況を正しく把握するために
は、次の田中宇氏の意見を参考にするべきです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ロシアの経済難の理由の一つは地政学的なものである。ロシア
 は石油ガスの輸出力を武器に、欧州や中国、インドなどが反ロ
 シア的行動を採ることを抑制し、石油ガス収入をテコにルーブ
 ルを国際基軸通貨の一つに押し上げ、米英の世界支配を崩した
 いと考えている。これに対して米英の軍産複合体などは、金融
 投機の技能を駆使してロシアの株式市場を暴落させたり、最近
 では原油価格の下落に拍車をかけている。また軍産英複合体は
 世界のマスコミ論調を引率する米英マスコミの論調を、有事機
 能を使って操作している。米英や日本のマスコミはプロパガン
 ダ戦争の道具であり、ロシアをことさら悪く描く傾向がある。
 だから石油ガス価格の下落で今にもロシア経済が破綻しそうだ
 という記事を読む際は、まず眉に唾をつけた方が良いのだが、
 それでも最近のロシア経済をめぐる状況は、かなり悪化してい
 るのは確かなようだ。      ――原油安に窮するロシア
          http://tanakanews.com/081231russia.htm
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、相対的にみると、経済的に米英両国の力が落ちてきて
いる現在、ロシアをはじめとする反米的な国々が石油や天然ガス
を売る新しい方式が少しずつ登場しはじめていることを知る必要
があります。
 ガスOPECに加盟を予定している国で、反米的なベネズエラ
のチャベス政権が、ロシアと組んで実施している方式についてご
紹介します。
 2008年7月のことです。ベネズエラのチャベス大統領は、
スペインに石油を「1バレル=100ドル」という低価格で売る
代わりに、販売代金をマドリッドのベネズエラ政府名義の銀行口
座に置き、ベネズエラ政府がスペインから医療機器、食糧、風力
発電関連施設などの戦略物資を購入するさいの代金に当たる新方
式を実験的に実施すると発表したのです。
 この方式は、石油価格自体はドル建てですが、販売代金はドル
ではなく、購入する側の国の通貨、すなわち、スペインの場合は
ユーロ建てで、購入する側の銀行口座に置かれるのです。この方
式では、まったくドルが使われないのです。
 この方式を応用してロシアが中国に石油や天然ガスを売ること
を考えてみます。ロシアの通貨ルーブルと中国の通貨人民元を加
重平均したバスケット通貨建てで石油や天然ガスの価格を決定し
中国の銀行口座に人民元建てで代金を備蓄するのです。そして、
ロシアが中国から工業製品などを購入するときにその金が使われ
るという仕組みです。この方式の場合、中国は人民元で決済しな
がら、人民元を海外に流出させずに済むメリットがあります。
 こういう試みが現在少しずつ世界ではじまっているのです。こ
の方式が普及すると、ドルを決済に使わないので、世界はドルの
信用不安によって起きつつある世界的なインフレの心配はなくな
りますが、米国は深刻な事態に陥ります。国際的なドル離れが起
こり、経済覇権からの米国の離脱は必至になるからです。
 ところで、このロシアという国、われわれ日本人のイメージで
は大国と考えています。それはおそらく領土の広さからくる印象
であると考えます。
 しかし、なぜロシアが、BRICsのなかでG−8のメンバー
になれたのでしょうか。
 ロシアは民主主義国でもなければ、経済大国でもないのです。
そのGDPは、2006年のデータによると、世界4位の中国や
第10位ブラジルよりも低く、インドよりも少し上の第11位で
あるし、一人あたりのGDPとなると、さらに小さく、リビア、
レバノンに次いで世界第60位なのです。
 それでは、なぜ、G−8のメンバーになれたかというと、木村
汎教授は次の3つの要因を上げています。
―――――――――――――――――――――――――――――
       1.米国に次ぐ核の保有国である
       2.地政学的な位置を占めている
       3.超エネルギー大国であること
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで2については、国際的な反テロ闘争などで西側が協力を
求めなければならない存在ということを意味しています。しかし
このなかで一番大きな要因は3なのです。
 要するにロシアはそのまま「放置しておけない国」なのです。
西側としては、こちら側に取り込んでおかないと、心配な国であ
ると同時に、いろいろな意味で協力を得なければならない存在が
ロシアという国なのです。そういう国をG−8として処遇するメ
リットがあるのです。    ―――[大恐慌後の世界/32]


≪画像および関連情報≫
 ●プーチンはイワン雷帝に似てきた?/宮崎正弘氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  プーチンは、2007年2月1日の年頭記者会見で内外から
  1232名もの記者をクレムリン宮殿に集め、ひとりで熱弁
  を振るうこと3時間半(新記録)に及び、しかも69の質問
  に理路整然と答えた。
   とくに西側ジャーナリズムを前にしての「ソフトな顔」の
  演技ぶりを見ていると、この大統領なかなかの役者である。
  EUならびに欧米諸国の記者から飛び出した質問は、
  (1)来年の大統領選での後継者選定問題と
  (2)ガスOPECの結成、ありやなしや、
  という問題に集中した。
      http://www.melma.com/backnumber_45206_3535275/
  ―――――――――――――――――――――――――――

ベネズエラ/チャベス大統領.jpg
ベネズエラ/チャベス大統領

posted by 平野 浩 at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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