2009年02月16日

●「ウクライナの強みと弱みとは何か」(EJ第2511号)

 2月10日のEJ第2508号からグルジア問題について考え
てきましたが、ロシア問題のしめくくりとして、ウクライナ問題
について述べることにします。
 佐藤優氏は、ウクライナをどのように見ているのでしょうか。
佐藤優氏は、副島隆彦氏との対談で、ウクライナに関して次のよ
うに述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 副島:ポーランドとウクライナについてはどのようにお考えで
    すか。
 佐藤:ロシアは一応、ポーランドを西側の勢力圏であると認め
    ています。他方、ウクライナは基本的にロシアの勢力圏
    だと考えています。エネルギーに関しては、ロシアはい
    つでもこの2つの国の寝首をかくことができると考えて
    います。副島さんが先ほど説明なさったように、ロシア
    が天然ガスのパイプラインの元栓を締めると、途端にこ
    の2つの国は困り果てます。このことを裏返して考える
    と、石油と天然ガスをヨーロッパ側が買ってくれなけれ
    ば、ロシアは外貨がまったく入ってこないので困るので
    す。天然ガスにしても買い手がいなければ、油田で空に
    放出することになります。  ――副島隆彦×佐藤優著
      『暴走する国家/恐慌化する世界』/日本文芸社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ポイントは「エネルギーに関してはロシアはいつでもこの2つ
の国の寝首をかくことができる」という点にあります。つまり、
ウクライナにはロシアに対して大きな弱みがあるということにな
ります。
 それはウクライナが自国内で消費する必要な天然ガスのわずか
26%しか生産できないという点です。したがって、残りの74
%をロシアとトルクメニスタンに大きく依存しているのです。必
要な74%のうち、ロシアに依存しているのは21%です。
 トルクメニスタンには52%依存しているわけですが、この国
はロシアのいいなりなのです。トルクメニスタンは南隣のイラン
を恐れており、いざというときロシアの助けが必要であると考え
ているのです。こういう事情ですから、ウクライナがロシア抜き
にトルクメニスタンと話をつけることは不可能なのです。
 もうひとつウクライナには深刻な弱みがあるのです。これにつ
いて、木村汎北大名誉教授は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウクライナの努力不足のゆえに、ウクライナ経済は国際的競争
 に伍していくに足る実力をまだ身につけていない。世界を見渡
 すと、ウクライナ一国だけが資源に恵まれないわけではない。
 資源に恵まれない国は、「比較優位」の原則にしたがい資源以
 外の分野で奮闘努力に努める必要があろう。たとえば日本は、
 ウクライナ同様に資源小国であるとはいえ、たとえ原油価格が
 1バレル90ドル以上となってもサバイバルできる強大な経済
 力を身につけるにいたっている。そのような観点からみると、
 ウクライナには自助努力が著しく欠けていると評さざるをえな
 い。  ――木村汎著『プーチンのエネルギー戦略』北星社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、ウクライナにはロシアに対して地理的な優位性がある
のです。それは、地図を見るとわかるように、ウクライナはロシ
アとヨーロッパの中間点に位置しており、しかも黒海にも面する
絶好のポジションを占めている点です。まさに、流通や運送の重
要地点に位置しているのです。
 ウクライナの首都はキエフです。ムソルグスキーの名作『展覧
会の絵』の第16曲に「キエフの大門」――現在実際にこの門は
なく、かつて存在したという――という曲がありますが、キエフ
といえばロシアそのものです。
 かつてのソ連の時代において、まさかウクライナが親欧米・反
ロシアの外国になるなどということを考えた人はいなかったと思
われます。そのため、1954年にあのニキタ・フルシチョフ第
一書記が、クリミア半島をウクライナ共和国に割譲することを冗
談としてほのめかしたことが、後になって問題化し、結果として
クリミア半島はウクライナに帰属することになったのです。
 資本主義経済学においては、「生産」「消費」「流通」は3大
重要活動ですが、マルクス主義経済学では、「生産」が物理的価
値を生み出す源泉であるとして、どちらかというと、「流通」を
軽視する傾向があったとされるのです。このことがウクライナを
重要な流通拠点として意識することが希薄であったのではないか
と木村汎教授は述べておられます。
 重要なポイントになるのは、天然ガスの輸送なのです。天然ガ
スは石油と違って運搬する場合、液化天然ガス(LNG)にして
タンカーで運搬する場合を除くと、パイプラインで運ぶしかない
のです。
 しかし、パイプラインは多くの場合、複数の国を通過すること
になり、生産国としては通過国の事情に配慮する必要が出てくる
のです。パイプラインの通過国としてのウクライナの場合、ロシ
アのパイプライン輸出量の70%を占めているのです。まさにウ
クライナは「エネルギー通過大国」といえます。
 現在、ロシアは何とかウクライナを経由しないパイプラインの
ルートを必死になって模索しています。そのひとつに、「ノード
・ストリーム」という海底パイプラインがあります。
 ノード・ストリームは、サンクトペテルブルグの北に位置する
都市ヴィボルグとロシアにとって欧州最大の顧客であるドイツを
直接結ぶ海底パイプラインです。
 現在ドイツには、ウクライナやポーランドなどの親米の国を経
由しています。しかし、ノード・ストリームにも問題点があるの
です。それは、スウェーデンの経済水域を通るため、現在スウェ
ーデンと協議を重ねており、完成は2010年以降になるとされ
ています。         ―――[大恐慌後の世界/29]


≪画像および関連情報≫
 ●ウクライナは「小ロシア」の意味
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  ウクライナは、以前は「小ルーシ/小ロシア」と称されてお
  り、この名称は現在でも一部で使用されることがある。しか
  し、この「小」という名称は「大ロシア」であるロシアに比
  べ侮蔑されているような印象が感ぜられることから、ウクラ
  イナ人には好まれていない。ところが、本来は「小」とは文
  化の中心であるアテネからの距離が「小さい」ということを
  表しているのであり、むしろ「大ロシア」の方が「大田舎の
  ロシア」を意味しているのである。  ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

エネルギー通過大国ウクライナ.jpg
エネルギー通過大国ウクライナ
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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