ナー次期米財務長官の次の発言に対して、中国が激しく反発をし
ているというのです。
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オバマ大統領は、中国が自国通貨を操作していると信じ
ている ――ガイトナー次期財務長官
――2008.1.25付、日本経済新聞
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かつてのクリントン政権のときは、日本が米国債を一番多く保
有していた関係から、日本が米国の直接のカウンターパートであ
るため米国から激しく叩かれたものですが、現在では米国債の最
大保有国は中国であり、早速中国とのバトルがはじまったという
わけです。
もちろんこれに中国は「こうした発言は事実に合わない」とし
て激しく反発し、中国国内では今回の金融危機対応で米国債の値
下がりリスクは高まっているとして、その保有額を減らすべきで
あるという声が高まっているといわれます。
しかし、ガイトナー次期財務長官――といってもこのEJが配
信される28日時点ではガイトナー氏は米上院本会議で財務長官
になっているはずですが、中国経済のさらなる減速は世界経済に
大きな影響を及ぼすとして、米中は協調して内需拡大に取り組む
必要があるとも述べているのです。
もともとの中国の不満は、FRBが2006年3月からマネー
サプライの指標の一つである「M3」の発表をやめたことにある
のです。この間の事情についてお話しすることにします。
マネーサプライとは何でしょうか。
簡単にいうと、マネーサプライとは世の中に出回っているお金
の流通量のことです。その指標として、M1、M2、M3がある
のです。
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M1 ・・・ 現金+要求払い預金(普通預金など)
M2 ・・・ M1+10万ドル未満の定期預金+個人所有
の投資信託など
M3 ・・・ M2+10万ドル未満の定期預金+機関投資
家の保有する投資信託など
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この分類によると、M1とM2は、米国国内に暮らす普通の米
国人の持っているお金の量をあらわしており、M3は金融資本家
を筆頭にした投機的マネーを含めてカウントしており、投資する
機関にとっては絶対に開示してもらうべき数値なのです。
ところが、FRBのバーナンキ議長は就任直後の2006年3
月に次のように述べてM3の発表を中止してしまったのです。
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理事会では、M3の集計を中止しても、FRBの金融政策立案
にとって有益な情報が奪われることにはならないとの判断を下
した。 ――バーナンキFRB議長
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この措置は、2001年以降に激しく増え続けているドルの供
給量を隠したいという意図が感じられるのです。もし、それが表
沙汰にされると、ドルの価値が急落することを恐れているものと
思われます。
フリージャーナリストのベンジャミン・フルフォード氏は、こ
のことに関して次のように自著で述べています。
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そもそも連邦準備制度とFRBという仕組みによって、金融資
本家の都合次第で、いくらでも紙幣の流通量を調整できる。ブ
ラックマンデーや通貨危機、ITバブルの崩壊、サブプライム
ローン問題き、金融資本家が儲けに走りすぎ、市場の信用その
ものが崩れかけた時、連邦準備制度とFRBはドルの大量供給
で彼らの失敗の尻拭いをしてきた。しかし、それは世界経済を
支える意味で正当だと思われるギリギリの線を越えてはいなか
った。 ――ベンジャミン・フルフォード著
『アメリカが隠し続ける金融危機の真実』/青春出版社刊
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北京オリンピックが終わると、中国の実体経済は急速に減速し
ています。しかし、それ以後も中国の投資意欲はとどまるところ
を知らない様相を呈しているのです。まさに中国は、世界中の金
融機関に投資しているのです。
2008年9月には、中国銀行はフランスで投資銀行ロスチャ
イルド・グループ傘下のエドモンド・ロスチャイルド銀行の株式
の20%を2億3630万ユーロで買収する契約を結び、さらに
モルガン・スタンレーが株式の49%をCICに売却するという
情報が出ているのです。
また、中国工商銀行は、南アフリカのスタンダード銀行に56
億ドルを投資し、インドネシア、香港、マカオでも相次いで銀行
を買収しているのです。
どうやら中国は、今回の金融危機を人民元の国際化のチャンス
ととらえているフシがあり、オリンピック以降も、こうした一見
すると無謀に見える投資事業を続けています。何とかして、この
機会に米国を追い抜いて、金融において世界覇権を狙っているよ
うなところがあるのです。
しかし、中国の現状は、そんなことができる状況ではなくなり
つつあるのです。ついこの間でまで、「世界の工場」と称された
工場が激減しているからです。広東省では、2007年に200
0あった工場が2008年になると1000以下に減少しており
労働集約型産業の生産性は大幅にダウンしているのです。
労働賃金はアップして輸出は減少し、中国の韓国企業や台湾企
業も逃げ出しつつあり、日本企業も生産拠点を中国からベトナム
やカンボジアに移しつつあります。これは中国にとって大ダメー
ジになります。 ――――[大恐慌後の世界/17]
≪画像および関連情報≫
●マネーサプライについて
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マネーサプライは物価や名目GDPあるいは実質GDPなど
の経済活動に関係があり、マネーサプライが多いとインフレ
が進行しやすい。このため、中央銀行はマネーサプライを金
融政策を実施する際の指標として利用している。日本銀行は
マネーサプライを金融政策の目標や金融調節の操作対象とし
ていないが、マクロの金融情勢を表わす代表的な指標の一つ
として金融政策の判断材料に利用している。
――ウィキペディア
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ティモシー・ガイトナー財務長官