るものです。GDPに占める輸出関連の比率は40%を超えてい
たのです。これは主要国ではドイツと並ぶ大きな比率です。
日本だって同じではないかという人がいるでしょう。しかし、
日本はGDPに占める輸出額の割合――輸出依存度は16.3 %
(2007年度)であって、そんなに高くないのです。それに主
要7ヶ国の輸出依存度の平均は22%ですから、日本の輸出依存
度はむしろ低いといえます。
それなら日本は大丈夫なのかというとけっしてそうではないの
です。なぜなら、その根拠は、中国がわが国の最大の貿易相手国
であるからです。したがって、もし、中国経済が崩壊すると、そ
の影響は今回のウォール街の崩壊の比ではないからです。
中国が日本の最大の貿易相手国になったのは2004年からで
す。それまで日本の企業は続々と生産拠点を中国に移し、食料品
なども大量に購入するようになったのです。そして今や日本の食
のかなり多くの部分を中国製品が占めるまでになったのです。
その間の中国の経済発展はすさまじく、バブル崩壊後の「失わ
れた15年」の只中にあった日本は低成長ながらも、中国経済の
急成長に助けられて不況を脱出し、戦後最長とされた好景気を続
けてきたのです。
したがって、もし中国経済が減速すると、米国と中国の経済に
大きく依存している日本は他の国とは比較にならないほどのダブ
ルパンチを受けることになるのです。
最新のデータによって中国経済の現況を分析してみることにし
ましょう。中国は「世界の工場」といわれていますが、中国経済
の要ともいうべき工業生産が大きく落ち込んでいるのです。
昨年の12月15日に発表された中国の11月の工業生産は、
前年同月比で5.4 %増となっています。これは統計開始以来の
もっとも低い伸び率になったのです。
ちなみに、2007年12月は17.3 %増であったのです。
中国の工業生産の伸び率というと、かつては実質GDP成長率を
5〜6%上回るのは当たり前であったのですが、11月は実質ゼ
ロかマイナス成長だったのではないかといわれているのです。昨
年の上半期の工業生産の伸び率が10.4 %であったことを考え
ると、相当の急ブレーキがかかっているといえます。
この11月の工業生産統計で、とくに落ち込み幅が目立ってい
るのは、次の3つです。
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1.粗 鋼 ・・・ 12.4 %
2.自動車 ・・・ 15.9 %
3.電 力 ・・・ 9.6 %
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この中で、注目すべきは粗鋼生産の落ち込み幅です。粗鋼とい
うのは、圧延、鍛造、鋳造という加工法でさまざまな形の鋼材と
なる鋼の総称ですが、国や企業、製鉄所単位の鉄鋼生産を示す代
表値となっています。そして、粗鋼生産の数値は、景気の変化を
典型的に反映しているのです。
1995年頃まで粗鋼生産では日本が第1位だったのですが、
それ以降は中国に抜かれ、とくに2000年以降はグラフで示す
と、ほとんど直線で天井知らずで伸びていたのです。これについ
ては添付ファイルのグラフを参照してください。
その粗鋼生産で中国は、2008年6月に過去最高の4694
万トンを記録して以来続落しているのです。これでわかるのは、
中国の不動産市場の停滞です。11月までの住宅販売累計は、次
の通りマイナスになっているのです。
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≪住宅販売累計≫
面積ベース ・・・・・ 18.3 %のマイナス
金額ベース ・・・・・ 19.8 %のマイナス
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中国の昨年上半期までの粗鋼生産の急速な伸びは、ビルの建設
ラッシュやマンションブームが背景にあったからですが、政府当
局による数次にわたるデベロッパー規制やインフレを抑え込むた
めの金融引き締め政策によってマンションブームなどは終焉を迎
え不動産市場は冷え込んできているのです。
このように内需の急減に動揺した中国の製鉄会社は、余剰生産
力を輸出に振り向け、8月の鋼材輸出は過去最高の807万トン
を記録したものの、その後の世界的な需要減退を受けて、11月
には、295万トンに減少してしまうのです。
輸出依存度の高い中国としては、輸出の落ち込みは深刻であり
それを打開するには13億人を超える国内市場を活性化し、内需
拡大をはかるしかないのです。そのため、胡錦濤体制はこれまで
採ってきた経済抑制路線を変更し、大規模な景気刺激策を導入す
ることにしたのです。
それが中国政府が昨年11月に打ち出した総額4兆元(約57
兆円)の景気刺激策なのです。その4兆元の内訳は、次のように
なっています。
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1.交通インフラ、都市農村送電線 ・・ 1兆8000億元
2.震災復興建設 ・・・・・・・・・・ 1兆0000億元
3.農村での民生、インフラ ・・・・・ 3700億元
4.生態環境 ・・・・・・・・・・・・ 3500億元
5.低所得者向け住宅 ・・・・・・・・ 2800億元
6.自主イノベーション構造調整 ・・・ 1600億元
7.医療衛生、文化教育 ・・・・・・・ 400億元
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4兆0000億元
――国家発展改革委員会
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――――[大恐慌後の世界/14]
≪画像および関連情報≫
●中国経済ジャーナリスト/柏木理佳のレポート
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上海総合指数の下落はまだ始まったばかり」。現地の証券会
社のアナリストたちは、中国株の今後の株価を、そう予想し
ている。そもそも上海総合指数は2006年まで1000ポ
イント台を推移していた。ところが2005年に、会社法、
証券法などが改正されてからはいっきに6000ポイントま
で上昇。銘柄によっては1年で4倍以上に資産が膨らんだ。
株式市場を活性化させるための会社法、証券法政策は成功し
たといえる。
http://diamond.jp/series/china_rika/10007/
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●グラフ出典
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5500.html