2009年01月22日

●「今回の金融危機で中国経済はどうなる!?」(EJ第2495号)

 サブプライム問題によって米国の金融経済が破綻しつつある現
在、中国経済が今後どうなるかについては今後の世界経済を展望
するうえにおいて重要なテーマになりつつあります。そこで、中
国について考えてみることにします。
 「デカップリング論」というのをご存知でしょうか。
 デカップリング論とは、中国をはじめとするBRICs諸国の
経済は欧米先進国経済と非連動である――こういう考え方をいう
のです。
 デカップリングとは、何かと何かを離す、あるいは分離するこ
とを意味しています。つまり、欧米先進国経済が一時的にダメー
ジを受けてだめになっても、それと非連動で新興国経済が高い成
長率で世界経済を牽引するだろう――こういう考え方です。
 デカップリング論は、サブプライム問題が起きると盛んにいわ
れるようになりましたが、現状を見る限り非連動ではないようで
す。そのためか、最近ではデカップリング論に言及する人はいな
くなっています。
 実は、北京オリンピックがはじまる前から、オリンピックが終
わったら、中国経済は急速に減速すると盛んにいわれていたので
す。とにかく北京オリンピックにかける中国政府の意気込みは尋
常ならざるものがあったのです。
 15日間の北京オリンピックのために中国政府が用意した公的
資金は、実に430億ドル(4兆3000億円)なのです。最近
は巨額な数字がよく登場するので、430億ドルといってもビン
ときませんが、この金額は過去5回のオリンピックに主催都市が
費やした金額の合計をはるかに上回るといったら、その巨額さが
わかると思います。
 1日当たり29億ドルの資金が使われ、競技ごとにとらえると
1億4000万ドルずつかかる計算になるのです。しかも、これ
は、オリンピック競技に直接関連する資金であり、それ以外の地
下鉄網の整備であるとか、新空港の建設であるとか、北京とオリ
ンピックの共催都市天津を結ぶ高速鉄道――京津城際鉄路までい
れると、途方もない資金を投入したことになります。
 深刻なのは株式の下落です。上海総合指数(SSEC)の終値
は、一時は6000ポイントあったものが、2008年10月に
は2000ポイントを割り込み、中国株は3分の1に落ち込んで
しまっているのです。
 2008年10月11日に急遽ワシントンDCで開かれた「G
20」で、IMFのストロスカーン専務理事は中国について次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国は世界の金融危機の影響から逃れられないが、全体の経済
 成長率は引き続き高水準を維持するだろう。
            ――IMFのストロスカーン専務理事
                 ――浜田和幸著/光文社刊
    『「大恐慌」以後の世界/多極化かアメリカの復活か』
―――――――――――――――――――――――――――――
 このストロスカーン氏の発言は、中国に関する単なる予測を述
べたものというよりも、中国経済に対する願望であるという見方
があります。そうならないと、世界はもたないといっているのだ
というのです。
 一般的にオリンピックが終了した後は、その反動によって、経
済は低迷するといわれています。東京オリンピックの後も「昭和
40年不況」という経済の落ち込みがみられたのです。しかし、
北京オリンピックの場合、開催前からそういう兆候がたくさん出
ていたのです。
 繊維産業の輸出が大幅に減少し、全般的に輸出が頭打ちになり
不動産価格も下落しつつあったのです。上海の株式については、
2007年2月の上海発の世界同時株安を起こしたときから、下
落に下落を重ねていたのです。
 中国に関しては、ゴールドマン・サックスが深く関与しており
中国経済の事情に精通しているといわれますが、同社の中国経済
専門家のホン・リアン氏によると、中国経済は今後景気後退が一
層深刻化すると予測しているのです。
 当面2009年の中国の経済成長率に関しては、多くのエコノ
ミストは次のように予測しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2009年には中国の経済成長率はこれまでの2桁から9%に
 低下する。         ――多くのエコノミストの予測
―――――――――――――――――――――――――――――
 9%の経済成長率――大方の国々から見ると、この成長率は驚
異であり、うらやましい限りですが、中国にとっては2桁から1
桁への下落の影響は深刻なのです。
 中国の場合、経済成長率が1桁台に落ちると、数百万から数千
万人単位で雇用の機会が失われることが予測されます。とくに貧
しい地方から都会に職を求めて出稼ぎにくる数億人の貧しい労働
者にとって、そのダメージは計り知れないものがあります。
 中国政府が何よりも恐れるのは、これらの貧しい労働者たちに
よる不満の噴出なのです。ひとたびこれらの労働者による暴動が
起こると、政府としては抑え切れないからです。
 これまで、胡錦濤国家主席は、伸び続けるインフレで、過熱気
味の経済を抑制するためこの5年間引締め政策に主眼を置いてき
たのです。なぜなら、政府の定めたインフレ目標が4.8 %であ
るのに2008年6月の時点で7.1 %になっていたからです。
 しかし、オリンピック後に起こった米国発の金融危機に対処す
るため、経済政策を大幅に見直さざるを得なくなってきているの
です。しかし、下手にやるとインフレを発生させるし、バブルを
はじけさせてしまうことにもなります。
 そういう意味で現在中国経済はそのコントロールが非常に難し
くなっています。そして、この中国の変化に対して一番影響を受
けるのは日本なのです。  ――――[大恐慌後の世界/13]


≪画像および関連情報≫
 ●「上海総合指数」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  上海総合指数は中国の上海証券取引所が公表しているA株と
  B株の日中価格パフォーマンスを表すインデックスをいう。
  1990年12月19日を基準日とし、その日の時価総額を
  100として時価総額加重平均で算出される。本指数は、上
  海証券取引所の上場銘柄の値動きを示す代表的なインデック
  スである。              ――金融用語辞典
  ―――――――――――――――――――――――――――

胡錦濤国家主席.jpg
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
RDF Site Summary