2009年01月21日

●「オバマ政権はイラク撤退を実現できるか」(EJ第2494号)

 昨日の20日、米国ではオバマ新政権が発足しました。まさに
米国の命運を担っての新政権の発足です。しかし、これほどの困
難を背負って発足する政権は珍しいでしょう。
 昨日の話を続けます。2009年1月17日の朝刊に、米大手
銀シテイグループが金融総合化路線を撤回し、生き残りをかけて
事業の解体に乗り出す記事が掲載されています。
 このシテイに対して米政府は、昨年10月3日に金融安定化法
が成立すると、同月29日に250億ドル、さらに11月23日
にも200億ドルの資本注入を発表しています。途方もない巨額
の資金が湯水のように使われているのです。
 米国は基本的には「小さな政府」の国なのです。その国が今回
の金融危機対策で投入すると約束したお金は第2次世界大戦に次
ぐ出費になるといわれます。
 大前研一氏は、米国が出すと約束している巨額な資金に関連し
て次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 言い換えれば、それほど未曽有の出費をポールソン財務長官ら
 国家の数人が議会の承認を得ることなく、超法規で勝手に決め
 るという国家管理の国になってしまったのである。今やアメリ
 カは、根本的に変質して私たちが知っているアメリカではなく
 なり、「リーダーの資格」も「風格」も全くない国に成り下が
 った、といっても過言ではないだろう。
     ――大前研一氏/『週刊ポスト』1・16/23より
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ新大統領は本当に米国をチェンジできるのでしょうか。
 大統領が取り組む課題はいろいろありますが、大きなポイント
は、新大統領がイラクから米軍を撤退できるかどうかです。オバ
マ氏は、大統領選の間に次のようにいっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 イラク戦争を終わらせるだけではなく、そもそもアメリカをイ
 ラクに侵略させた考え方そのものに挑戦する。   オバマ氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ氏が人気を集めたのはこの主張であったと思います。米
国民の多くはイラク戦争には辟易しています。何とかこれから脱
却したいと思っているのです。
 そういうときにオバマ候補者が上記の主張をしたのです。「オ
バマはイラク戦争を終わらせようとしている」として支持者が大
幅に増えたのです。
 国際政治学者の浜田和幸氏は、オバマ大統領になっても米国は
イラク戦争から撤退できないであろうというのです。米国がイラ
ク戦争から撤退することは、イラクでの石油利権を半ば放棄する
ことを意味するのです。そんなことができるでしょうか。
 もし、これが実現すると、原油価格は少なくともブッシュ政権
時代よりは安定化するはずです。しかし、オバマ政権でもイラク
撤退はできないと浜田和幸氏はいうのです。その理由として、副
大統領のジョー・バイデン氏の存在を上げます。
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 バイデン氏は、ブッシュ大統領が登場する前(9・11)テロ
 以前)から、アメリカがイラクを攻撃するよう主張してきた人
 物だからだ。外交の専門家と言われるが、「サダム・フセイン
 は間違いなく大量破壊兵器を持っている」と、バイデン氏は長
 年にわたって主張してきたのである。しかも、2002年にお
 ける「武力行使容認決議案」には、真っ先に賛成していた。バ
 イデン氏は、副大統領候補になって、イラク戦争を容認した決
 議案に賛成したことを「後悔している」と語った。そうして、
 ブッシュ政権のイラク政策批判に転じたので、オバマ新大統領
 と政策的な齟齬は起きないと見る向きがある。しかし、彼の存
 在をブッシュ政権におけるチェイニー副大統領のように捉える
 と、先のことはわからないとも言えるだろう。
                 ――浜田和幸著/光文社刊
    『「大恐慌」以後の世界/多極化かアメリカの復活か』
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党の代表を決めるオバマ対ヒラリーの対決で、ヒラリーは
オバマ候補の外交の未経験さを強く非難したのです。それに対し
て最終的にオバマ候補が副大統領に指名したのは、ジョー・バイ
デン氏だったのです。
 このバイデン氏は、日本ではジョセフ・バイデンとして紹介さ
れていますが、どうやらジョー・バイデンというのが正しいよう
です。バイデン副大統領については、「白人、カトリック、民主
党中道派、外交経験豊富、労働者階級出身という経歴が評価され
た」と紹介されていますが、彼が副大統領に決まったとき、「オ
バマは裏切った」という声が聞かれたことは事実なのです。実際
問題として考えても、イラクからの撤兵がそれほどスムースに行
くとはとても考えにくいことです。
 大前研一氏がいうリーダーの資格も風格もなくしている米国を
オバマ新政権はチェンジできるのでしょうか。
―――――――――――――――――――――――――――――
 残念ながら、私の見方ほ悲観的だ。なぜなら、市民運動家出身
 のオバマ次期大統領は、基本的に「富の創出」ではなく「富の
 分配」にカを入れると思うからだ。実際、オバマ氏や彼を支え
 ている人たちの頭の中は富の分配の議論だけで、富の創出の議
 論は片鱗もない。
     ――大前研一氏/『週刊ポスト』1・16/23より
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在の米国にとって深刻なのは、消費の減速であり、それによ
る経済の縮小です。これを解決するには、「富の創出」が不可欠
です。しかし、オバマ大統領の率いる米国は「富の創出」ができ
るのでしょうか。それどころか、米国人自身が低金利になったド
ルを見限って、米国からの巨大な資本逃避という事態が起きる可
能性もあるのです。    ――――[大恐慌後の世界/12]


≪画像および関連情報≫
 ●イラク戦争に関するバイデン氏の発言
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  2003年から始まったイラク戦争においては、ブッシュ政
  権が武力行使を表明した際には、これを容認する姿勢を示し
  「イラクに対する武力行使容認決議」にも賛成票を投じてい
  る。しかしながら、ブッシュ政権が目指したサダム・フセイ
  ン独裁体制の排除には反対を表明していた。また、ブッシュ
  政権の一国主義的な行動や、「自衛のための先制攻撃」を許
  容するブッシュ・ドクトリンについても批判している。この
  ように、ブッシュ政権を批判しつつも、当初はイラク開戦に
  肯定的だったバイデンだが、その後イラク国内の情勢が泥沼
  化の様相を呈してくると、一転して反対に転じ、2007年
  初めに政府が提案したイラクへの米軍増派法案についても反
  対した。              ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

ジョー・バイデン副大統領.jpg
ジョー・バイデン副大統領
posted by 平野 浩 at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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