2009年01月20日

●「『第四権力』が暴走する米国の危機」(EJ第2493号)

 原油の供給を不安定にする――こういう状況はブッシュ政権に
よって既に出来上がっていたのです。その状況において風説や情
報は乱れ飛んだのです。
 こうして、有力な米国のヘッジファンドは、巨大な投資銀行の
資金供給を受けながら原油価格を釣り上げていったのです。風説
の内容も原油価格を釣り上げる意図のものばかりではなく、価格
を下落させる情報もときどき流して下がった価格で買い注文を入
れ、さらに価格を上げるというようにして、結果として原油価格
を空前の高さにまで高騰させたのです。
 これは、ブッシュ政権にとってきわめて都合が良い状態といえ
るのです。それに、米国はレーガン政権以来、原油先物市場に新
規参入を認めていないのです。そういう意味で米国における石油
ビジネスというものは、米国歴代政権の息のかかったきわめて限
定された企業と投機筋にのみ法外な利益を提供してきたのです。
 原油価格の高騰を仕掛けている複数のヘッジファンドは、仕掛
けている間は途中で下りることはできないのです。しかし、20
08年夏になると、少しずつ綻びが出始めたのです。オランダの
ある投機筋が原油価格操作の疑いで摘発されると、それがきっか
けになって、原油先物市場にかかわるヘッジファンドに対して世
界中の批判の目が厳しくなってきたのです。
 当時原油価格は十分に釣り上がっており、「バレル200ドル
もあり得る」という状況になっていました。しかし、そうなる前
にウォール街が崩壊してしまったのです。株価は世界中で大暴落
し、それによって投資銀行からのヘッジファンドへのマネーの供
給は止まり、原油価格も大暴落したのです。そして、2008年
10月末の時点で、1バレル60ドル台に落ち着いたのです。
 これが原油価格が高騰し、その後未曾有の金融危機が表面化し
あっという間に暴落したいきさつなのです。しかし、その裏側で
こっそりと大儲けしていたのは、ブッシュ政権中枢の人間なので
す。そして、現在米国は国運をかけて、史上空前の公的資金を注
ぎ込もうとしているのです。
 こういう米国の現況に関して、大前研一氏は次のように述べて
います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2008年9月以降のアメリカは、私たちが知っているアメリ
 カではなくなった。まず、三権分立ではなく、“四件分立”に
 なってしまった。「第四権力」は、ヘンリー・ポールソン財務
 長官だ。彼は金融危機対策という大義名分のもと、国家権力の
 上を行くようなことを唯我独尊でやっている。
     ――大前研一氏/『週刊ポスト』1・16/23より
―――――――――――――――――――――――――――――
 大前氏がおかしいと首を傾げるのは、金融大手のシテイグルー
プをめぐる救済策です。日本の麻生首相も定額給付金など政策を
めぐる“ブレ”が激しいですが、ブッシュ政権による金融安定化
法運用のポールソン財務長官への丸投げもきわめて異常なことで
あるといえます。ポールソン財務長官はこれによって金融業界に
対する生殺与奪の権を持つ第四権力という大前氏の表現はその通
りであると思います。実際に彼は超法規的なことを独断で次々と
やっているのですが、議会もそれに手を出せないという空恐ろし
い事態になっているからです。
 シテイには、「レベル3」の資産が4000億ドルあり、それ
を2〜3年かげて売却していく方針だったのです。「レベル3」
というのは、「流動性がほとんどない」という意味であり、売ろ
うと思ってもなかなか売れない資産のことです。
 資産の売却については、4000億ドルのうち1000億ドル
については大きな損失を出さないで売れたのですが、3000億
ドル分は売れないで残っているという状況になったのです。
 これに対してポールソン財務長官は、次のようなおかしな決定
をしているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米政府は、2008年11月23日、シテイが抱えている30
 60億ドル分の不良資産を一定期間保証し、損失は290億ド
 ルまではシテイが、それ以上の50億ドルまでは財務省が、次
 の100億ドルをFDIC――連邦預金保険公社がそれぞれ負
 担する。保証の手数料としてシテイは70億ドルの優先株を発
 行して8%の配当を支払う、という救済策を発表した。
     ――大前研一氏/『週刊ポスト』1・16/23より
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは要するに3060億ドルのシテイは10%だけを処理し
あとの90%は政府が面倒を見るという大甘の救済策なのです。
不良資産は売ってみなければわからないものであり、売却前から
金額を保証するというのはリスクの多い話です。
 どうして、ポールソン財務長官は、これほどシテイに甘いので
しょうか。これについても大前研一氏はその事情を次のように明
らかにしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカは本来、こんな無節操な国ではなかったはずだ。もし
 かするとブッシュ大統領がイタチの最後っ庇でファイヤー・セ
 ールをやっているのかもしれないが、今回のシティの救済策は
 もっと臭いものがある。というのも、シティの前会長はロバー
 ト・ルービン元財務長官であり、バラク・オバマ次期大統領が
 財務長官に起用するニューヨーク連銀のティモシー・ガイスナ
 ー総裁と国家経済会議(NEC)委員長に起用するラリー・サ
 マーズ元財務長官は、ともにルービン元財務長官の愛弟子
 だからである。つまり、シティが潰れたらルービン元財務長官
 が責任を取らねばならなくなるので、弟子の2人がシテイを救
 ったのではないか、と疑われているのだ。
     ――大前研一氏/『週刊ポスト』1・16/23より
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             ――――[大恐慌後の世界/11]


≪画像および関連情報≫
 ●米シテイ・会社を二分割
  ―――――――――――――――――――――――――――
  (ニューヨーク=丸石伸一、鈴木暁子)米金融大手シティグ
  ループは16日、82億9400万ドル(約7500億円)
  の純損失となった08年10〜12月期決算とともに、会社
  を事実上2分割する抜本的な事業再編計画を発表した。中核
  事業とそれ以外の事業に分ける。非中核事業には日興コーデ
  ィアル証券など日本での証券事業も含まれ、他社への売却な
  ども検討する。          ――アサヒ・コムより
  http://www.asahi.com/business/update/0116/TKY200901160272.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

大前研一氏.jpg
大前研一氏
posted by 平野 浩 at 04:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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