2009年01月19日

●「原油価格高騰のからくりを探る」(EJ第2492号)

 2008年7月には147.27 ドルの最高値をつけた原油価
格がこのところ急速に下落しています。1月16日の「ヤフー!
ニュース」は次のように伝えています。
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 15日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相
 場は、石油輸出国機構(OPEC)が世界の原油需要見通しを
 下方修正したことを受け続落、米国産標準油種WTIの中心限
 月2月物は一時1バレル=33.20 ドルと約4週間ぶりの安
 値をつけた。終値は前日比1.88 ドル安の35.40 ドル。
       ――2009.1.16/「ヤフー!ニュース」
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは一体どういうことなのでしょうか。急速に下がった理由
について考えてみたいと思います。
 基本的なことを考えてみましょう。世界における原油の需要は
どのくらいだと思いますか。日量8700万バレルです。しかし
先物取引においては、その500倍以上の原油の売買が繰り返さ
れているのです。その額は、2003年には130億ドルに過ぎ
なかったのですが、2008年のピーク時では、2600億ドル
になっていたのです。
 これは使うために原油を買うのではなく、金儲けのために原油
を弄んでいるグループがいることを示しています。こういう連中
がのさばる原因を作っているのが、原油先物市場のからくり――
レバレッジなのです。
 レバレッジとは何でしょうか。
 原油先物市場では、買い注文を入れるとき、手付金は6%支払
えばよいのです。具体的な例でいうと、1バレル128ドルの先
物を買うとき、その6%――7.68 ドル、つまり、手付金であ
る見せ金は8ドル以下でよいのです。
 約8ドルで、バレル128ドルの先物が買えるので、「128
=8×16」ですから、16倍のレバレッジがかかっていること
になります。
 このレバレッジ――「テコの理論」というのですが、これを利
用して投機集団――ヘッジファンドは天井知らずの価格でも平気
で買い注文が出せるのです。
 実はこのヘッジファンドは、サブプライム危機が発生し、損失
が出始めたかなり初期の頃――2007年夏の頃からその損失を
取り戻そうとして、いっせいに原油先物市場になだれ込み、巧妙
な方法で原油価格を釣り上げていったのです。
 その先頭に立って動いたのは、ゴールドマン・サックスなので
す。これにモルスタやリーマン・ブラザーズがヘッジファンドと
組んで原油先物市場に加わったのです。
 原油先物取引で儲けるにはどうしたらよいでしょうか。
 需要供給の関係から見れば、原油は60ドル〜70ドルが適正
価格なのです。しかし、これではヘッジファンドは儲からない。
それではどうすればよいかです。
 それは「原油の供給不安」の状態を作り出すことです。そのた
め、ヘッジファンドは日々の取引終了のタイミングを計って、原
油の供給不安を煽る風説を流し続けたのです。原油の供給が不安
になると、当然原油価格は上がります。風説にはいろいろありま
すが、一番多く流されたのは次の内容です。
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   ブッシュ大統領はイランと戦争するかもしれない
―――――――――――――――――――――――――――――
 もともとブッシュ政権が率いる米国は、これまでイランやイラ
クに対する政策を通じて意図的に原油供給の不安感を煽る政策を
強引に進めてきていたのです。
 どうしてかというと、イランとイラクの石油の埋蔵量は世界で
群を抜いており、なかでもイランは、原油と天然ガスに関しては
世界最大規模の埋蔵量を有しているといわれるのです。
 もし、イランとイラクが安定して世界に原油を供給したとする
と、当然価格は安定してしまいます。そうなってしまうと、価格
を釣り上げようとしているヘッジファンドとしては困るのです。
しかし、いくらヘッジファンドでもイラクやイランをどうこうす
ることなどできません。いったいヘッジファンドの裏で糸を引い
ているのは誰なのでしょうか。これについて、既出の浜田和幸氏
は、述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 それは、ヘッジファンドを中心とする投機筋の向こう側に隠れ
 ている集団である。となるとまず指摘しなければならないのが
 ブッシュー族とチェイニー副大統領を筆頭とするその取り巻き
 連中にほかならない。      ――浜田和幸著/光文社刊
    『「大恐慌」以後の世界/多極化かアメリカの復活か』
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 つまり、ブッシュ政権にとってイランとイラクが平時で原油を
生産されると原油価格は安定して原油で儲けることはできないの
です。そこで、イラクについては戦争を仕掛けて現在の状況に追
い込み、原油供給を不安定にしているのです。
 イラクは世界最大級の埋蔵量を誇る油田を有しているのです。
しかし、1999年に発動された国連の経済制裁によって原油生
産量は日産260万バレル、その後のイラク戦争によってさらに
減産し、日産190万バレルになってしまっています。供給を不
安定化しようとするブッシュ政権の目的は達成されています。
 イランに対しては、核問題で揺さぶり、イランは自力で油田開
発ができない状況に追い込まれています。経済制裁も受けている
ので、日本をはじめヨーロッパの他の国も米国の反発を恐れて手
を出せないでいます。
 そのため、イラン革命の起こった1979年当時の産油量であ
る日産600万バレルに遠く及ばない430万バレルにダウンし
ています。この土壌の上にヘッジファンドは風説を仕掛けて、供
給不安を増幅させたのです。――――[大恐慌後の世界/10]


≪画像および関連情報≫
 ●ヘッジファンドとは何か
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  ヘッジファンドの正確な定義は難しいが、公募によって一般
  から広く小口の資金を集めて大規模なファンドを形成するこ
  とを目指す通常の投資信託と異なり、通常は私募によって機
  関投資家や富裕層等から私的に大規模な資金を集め、金融派
  生商品等を活用した様々な手法で運用するファンドのことを
  指す。代替投資の一つ。       ――ウィキペディア
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チェイニー副大統領.jpg
チェイニー副大統領
posted by 平野 浩 at 04:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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