ア監督が「ウォール街救済プラン」なるものを発表し、注目を集
めています。それは、今回の米国発の金融危機で、多額の税金が
ウォール街を救済するために使われることに対する米国民の怒り
を代弁していると思うのでご紹介します。
マイケル・ムーア監督といえば、2002年に「ボウリング・
フォー・コロンバイン」という作品で銃社会の真実をアピールし
2004年の「華氏911」では、ブッシュ現政権に切り込み、
2007年には「シッコ」で医療問題を取り上げ、大きな話題を
提供する名物監督として知られています。
今回、マイケル・ムーア監督は、金融危機に関して次の一文を
ネット上に公開しています。
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How to Fix the Wall Street Mess
「ウォール街の混乱のおさめ方」
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このレポートの冒頭に次の一文を置いています。「なぜ、彼ら
はブッシュ政権の時代に手に入れた7000億ドルを自らの救済
のために使わないのか」という趣旨の一文です。
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400人のアメリカの最裕福層、そう、「たったの400人」
が底辺の1億5千万人を全部合わせた以上の財産を持っていま
す。最裕福400人が全国の資産の半分以上を隠匿しているの
です。総資産は正味1兆6千億ドルになります。ブッシュ政権
の8年間に彼らの富は「7千億ドル近く」膨らみました。7千
億ドルはちょうど救済資金として我々に支払いを要求している
のと同額です。披らはなぜブッシュの下でこしらえた金で自ら
救済しないのでしょうか。 ――マイケル・ムーア
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ムーア氏は次のようにもいっています。「ブッシュ政権はクリ
ントン政権から1270億ドルの黒字を引き継ぎながら、9兆5
千億ドルの負債を国民に押し付けて退陣しようとしている。どう
してこんな盗人貴族に追い銭を与えねばならないのか」と。
このあと、マイケル・ムーア氏は、次の10ヶ条の「ウォール
街救済プラン」を提示しています。読みやすくするため、本文そ
のままではなく、私なりに手を加えて文章を直しています。
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1.ウォール街で、承知のうえで今回の危機到来に加担した
者を犯罪者として起訴するため特別検察官を任命せよ。
2.ウォール街救済のためのコストについては、富裕層が自
ら次の4つの方法によって負担すべきであると考える。
3.緊急に救済すべきは住居を失う人々である。8つ目の住
宅を建築しようと企む連中ではないことは確かである。
4.あんた達の銀行や会社がわれわれからの「救済金」を少
しでも受け取れば、われわれはあんた達の主人である。
5.規制はすべて元に戻すべきである。規制を撤廃した元凶
であるレーガン革命は既に死んで終焉したからである。
6.「大き過ぎて潰せない」という事態にならないよう、失
敗が許されないような巨大なものは存在も許されない。
7.いかなる会社重役も従業員の平均賃金の40倍を超える
報酬を受け取ってはならず、「落下傘」も不可である。
8.連邦預金保険公社をもっと強化して、国民の預貯金にと
どまらず、年金と住宅の保護モデルとするべきである。
9.深呼吸し、落ち着いて、恐怖に日々を支配させないこと
が米国民の誰にも必要であり、報道メディアは心せよ。
10.国策としての救済策で政府系住宅金融会社やAIGを国
有化したのだから、それを生かして国民銀行を作ろう。
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上記のうち、2に関しては具体的には次の4つのことをムーア
氏は提案しています。
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1.年収100万ドル以上のすべての夫婦と年収50万ドル
以上の独身者は、5年間10%の追加所得税を支払う。
2.ほとんどの民主国家のようにすべての株取引に0. 25
%を課税する。これで、毎年2千億ドル以上ができる。
3.愛国米国人の株主に期待して、四半期の間配当の受領を
辞退し、その分を財務省による救済資金の足しにする。
4.企業からの連邦税収は現在GDPの1. 7%であるが、
1950年代の5%に戻すと、約5千億ドルができる。
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かなり、乱暴と思える提案もありますが、その怒りや気持ちは
よくわかります。米国の格差はこんなに広がっているのです。金
融救済法案に対する「われわれの税金を使うな」という市民の怒
りをよく代弁していると思います。なお、「落下傘」とは倒産寸
前の企業から逃げ出すときに受け取る退職金のことです。
ところで、このマイケル・ムーア監督は一度も日本にきたこと
はないのです。なぜ、日本に来ないのかについて本人を直撃した
とき、彼は次のように答えています。
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いつか、日本に行けることを楽しみにしています。私は、今ま
で日本に一度も行ったことはなく、日本には素晴らしいヘルス
ケアのシステムがあるのを知ってます。映画『華氏911』の
日本での興行収入は、アメリカを除いた世界の興行収入の中で
ナンバーワンでした。正直、あの映画が、これほど日本で受け
るとは思いもしませんでした。だってイギリス、フランス、ド
イツより多かったわけですから・・・。なぜ日本で撮影しなか
ったかと言うと、行くまでの時間が長過ぎるからです。要する
に、アメリカ人の典型的な怠け癖で、日本人みたいなワ−ク・
エシック(労働観)を持ち合わせていないのです(笑)」。
――――――――――――――――[大恐慌後の世界/09]
≪画像および関連情報≫
●ムーアはオバマ支持か/大統領選中の発言
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ムーア監督は、「善行や福祉に人生を捧げてきた人間が、今
や愚かな考えを焚きつける偏狭な人間になりさがっている」
とクリントン候補を断罪。「アメリカには、黒人には絶対に
投票してやるものかという白人がいる。ヒラリーはそのこと
を理解していてあえてそれを利用する戦術を展開している」
と痛烈に批判した。一方、オバマ候補に関しては、「現在、
我々が目撃しているのは、単なる候補者ではなく、変革への
深遠な市民運動だ。私はオバマ候補よりも、むしろムーブメ
ントとしてのオバマを支持する」と述べている。
http://eiga.com/buzz/20080425/7
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マイケル・ムーア監督