チ、リーマン・ブラザーズ、ベア・スターンズ――これだけあっ
た米国の投資銀行が今回の金融危機ですべて姿を消しています。
ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは商業銀行に
看板を書き換え、メリルリンチはバンク・オブ・アメリカに買収
リーマン・ブラザーズとベア・スターンズは破綻――この中で商
業銀行にはなったものの、一番が傷が浅いという印象なのがゴー
ルドマン・サックスです。
それは生殺与奪の権限を持っている財務長官が、ゴールドマン
・サックスのCEO出身ということと無関係ではない――誰でも
そう思っていると思います。もちろん、ポールソンが財務長官で
なければ、ゴールドマン・サックスがどうなったかわかりません
が、そうかといって、ポールソンがあからさまにゴールドマン・
サックスに身びいきをしたわけではないのです。
そのことは少し置き、モルスタ――モルガン・スタンレーにつ
いて少し触れておきます。もともとJPモルガンという金融機関
があったのです。昨日、グラス・スティーガル法について解説し
ましたが、この法律は1933年に成立しています。この法律の
趣旨は「証銀分離」にあります。
そのためJPモルガンは、銀行部分は、JPモルガン・チェー
ス、投資銀行部分はモルガン・スタンレーとして分離独立したの
です。1935年のことです。それが今回の金融危機で投資銀行
の看板を外し、商業銀行――正確には金融持株会社に業務変更を
いることになったのです。モルガン・スタンレーは、三菱東京U
FJフィナンシャル・グループと資本提携をしています。
さて、ヘンリー・ポールソン財務長官に話題を戻すことにしま
す。ウォール街の再編は、ポールソンの手に委ねられたといって
過言ではないのですが、そのシナリオはかなり前から練られてい
たフシがあります。
国民の税金を使う以上、投資銀行のどこかに責任をとってもら
う必要がある――その生贄的役割を負わされたのがリーマン・ブ
ラザーズなのです。その生贄になる投資銀行はCDSなどのこと
も十分配慮して決められたのです。
そしてゴールドマンとモルスタは、最初から商業銀行に移行さ
せるシナリオがあったのですが、とくにゴールドマンについては
財務の健全性をアピールする必要があったのです。
そこで、ポールソン財務長官が目をつけたのは、世界一の大富
豪といわれるウォーレン・パフェット氏なのです。ポールソン氏
は必死にパフェット氏を口説き、50億ドルの投資を引き出すこ
とに成功したのです。これは、知られざるポールソンの最大の功
績ということができます。
当時ゴールドマン・サックスに対しては、オイルマネーをバッ
クにしたSWF(政府系国富ファンド)のクウェート投資庁やア
ブダビ投資庁が買収に乗り出していたのです。しかし、ゴールド
マン・サックスがそれらのSWFに買収される事態は、ブッシュ
政権としても避けたかったのです。
果せるかな、パフェット氏がゴールドマンに50億ドルの投資
を行うことを知ったSWFは一斉に矛を収めたのです。驚きべき
パフェット氏の実力です。投資した50億ドルの金額もさること
ながら、世界で最も市場の先読みができるとされるパフェット氏
が乗り出したことで、ゴールドマン・サックスの健全性は証明さ
れることになったのです。
ウォーレン・パフェット氏とはどういう人物なのでしょうか。
ウォーレン・パフェット氏は、世界最大の投資会社「バークシ
ャー・ハザウェイ」の最高経営者であり、2007年には世界ナ
ンバーワンの大富豪となった人物で、その個人資産は620億ド
ル――6兆2000億ドルにも及ぶといわれます。
パフェット氏の個人投資家としてのスタートは11歳のときで
あり、それ以来彼の買うのは株ではなくて会社という哲学を貫い
て、今日の地位を築いたのです。
しかし、個人生活は非常に質素であり、1958年に3万15
00ドルで購入したオマハの郊外の住宅に現在でも住んでいるの
です。そのため、彼は「オマハの賢人」ともいわれています。そ
して、生活費は、バークシャー・ハザウェイから毎年に受け取る
10万ドルでまかなっているといわれます。
パフェット氏の投資方法は、成長性のある企業に長期投資をす
ることであり、実にシンプルです。パフェット氏が現在でも投資
を続けている企業の一部を上げると次ような企業になります。誰
でも知っている有名な企業であり、その企業の業績が多少落ち込
んでも絶対に手放さないことが特色です。
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・コカ・コーラ(コカ・コーラの会社)
・ジレット(ひげ剃りの会社)
・ウォルト・ディズニー(ディズニーの会社)
・アメリカンエクスプレス(クレジットカード会社)
・ブラウン(電気カミソリの会社)
・ワシントンポスト(新聞の会社)
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これを見ると、パフェット氏は髭剃りの会社が好きなのかなと
思ってしまいますが、これらは安定した優良企業ばかりです。そ
れでいて、パフェット氏の投資目的の第1条は、あくまで「儲け
る」ことであり、第2条は「第1条を忘れない」ことなのです。
彼にとって今回の金融危機は投資の最大のチャンスなのです。
そのため、彼はゴールドマン以外の企業にも次々と巨額投資を行
っています。ゴールドマンに続き、ゼネラル・エレクトリックに
30億ドル、コンストレーション・エナジーに10億ドルという
ようにです。1年前に比べると、4分の1の値段で傘下に収める
ことができるからです。
そして、ゴールドマンに投資したことで、政府の進める企業再
編に深く関わっています。 ――[大恐慌後の世界/08]
≪画像および関連情報≫
●ウォーレン・パフェット氏の名言
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『投資のルールはシンプルで、他の人が欲張っているときに
は恐れを抱き、他の人が恐怖にさいなまれている時に強欲に
なることだ』、『多くの健全な企業の長期的な成長に不安を
抱くことはナンセンス。5年や10年、20年先には利益の
記録を塗り替えているはずだ』 ・・・パフェット氏
http://rich-ojisan.com/Buffett.html
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ウォーレン・バフェット氏