2009年01月09日

●「CDS/金融版大量破壊兵器」(EJ第2487号)

 ここで、今後の予測を確かなものにするためにも、CDSとい
うものについて知る必要があります。
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         CDS/Credit Default Swap
      クレジット・デフォルト・スワップ
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 CDSは、リスクを回避するために開発された金融派生商品の
一種ですが、企業の債務不履行を対象にしています。どちらかと
いうと、日本の保証人制度に似ているのです。
 お金の貸し手(A)と借り手(B)がいるとします。Bから融
資を申し込まれたAは、貸し倒れを心配して貸そうかどうか迷っ
ています。ここで、AでもBでもない信用のある第三者の(C)
がAから一定の金額(プレミアム)をとって、CDSを提供した
とします。これによってAはBに融資を決断します。
 この場合、もし、Bが支払い不能になると、CはAに対して損
金を補填するのです。
 要するに貸し倒れ補償というか、信用保証というか、一種の保
険システムと同じです。サブプライムローンの証券化商品には、
このCDSがつけられていたのです。インチキ福袋に保証がつい
ていたようなものです。これなら売れて当たり前です。
 それでは、どういうところがCに当たるのかというと、最も大
量に保有していたのがあのAIGであり、ベア・スターンズなの
です。これほどの大どころが保証してくれれば、お金のある人は
誰でも手を出すと思われます。
 もうひとつ不可解なのは、CDSの提供側がどのようにリスク
を計算しているのか、どういう根拠があるのかが、ほとんど不明
な点です。それもプライムローンについて出すならともかくサブ
プライムローンにも出しているのですから、ほとんど無制限に出
していたといわれても仕方がないでしょう。
 したがって、CDSというかたちで保証したローンの総額は驚
くべき巨額な金額になるのです。だからこそ、リーマンブラザー
ズを助けなかった米政府もベア・スターンズとAIGについては
素早く支援を決めています。リーマンブラザーズは、あまりCD
Sを出していなかったといわれます。
 世界一著名な投資家であるウォーレン・パフェット氏はCDS
について、次のように述べています。
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    CDSは金融版の大量破壊兵器である
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 この言葉の意味は、CDSは貸付債券の本来持っているリスク
を隠してしまう商品であり、その取引が企業対企業の相対取引で
行われるため、市場が存在しないことをいっているのです。相対
取引ですから政府の規制はないし、取引報告の義務もないので、
ひとたび信用収縮が起きると、疑心暗鬼が起き、収拾のつかない
事態に陥ってしまうのです。それでは、このCDSの世界取引残
高はどのくらいになるのでしょうか。
 2008年6月の時点でそれは54兆ドルに上るのです。この
額がいかに巨額であるかは、世界全体のGDP50兆ドルを超え
る金額であるといえばわかると思います。さらにもうひとつこの
CDSの取引残高とほぼ一致するのは、53兆ドルに及ぶ米国の
累積財政赤字の額なのです。なんとも不思議な話です。
 CDSの世界取引残高と米国の累積財政赤字が一致するのは、
必ずしも偶然の一致ではないのです。つまり、米国のような借金
大国はCDSのような高配当の金融商品を作り出さないと、借金
をファイナンスできず、ドルが世界を循環しないのです。
 グリーンスパン前FRB議長は10年間在任していましたが、
米国の累積財政赤字は4倍に拡大しているのです。彼は何度もサ
ブプライム問題やヘッジファンドの行き過ぎについて警告は発し
たものの、基本的には何もしないで放置したのです。
 グリーンスパン氏は、米国の金融の現状を十分理解している人
物なのです。すべてのからくりを理解していて、そうしなければ
米国がもたないことをよくわかっていたのです。
 そういうグリーンスパン氏の苦悩を副島隆彦氏は自著で次のよ
うに書いています。
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 遡ること3年前の2005年の5月に既に「大暴落の連鎖の始
 まり」の一連の動きが起きていた。このときアラン・グリーン
 スパンFRB議長(当時)は「イラショナル・エグズジュビラ
 ンス」という言葉を使った。いつもの早朝の風呂に入っている
 ときに見つけ出し思いついていた。早くも1996年には「私
 たち(アメリカ人)は今はもう「根拠なき熱狂」に酔い痴れて
 いるのです」と、アメリカ連邦議会で報告したのである。実際
 には、国民向けの演説のような、教訓話のような感じである。
 だが、アメリカ国民の方は、迫り来る好景気の絶頂で浮かれて
 騒いでいて、「グリーンスパン議長が、また謎(エニグマ)に
 満ちたことを言って、自分たちに説教を垂れている」としか思
 わなかった。2005年5月に彼は再度厳しく「もう危険だ」
 と警告した。               ――副島隆彦著
            『連鎖する大暴落』より/徳間書店刊
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 つまり、グリーンスパン前議長は、2005年の時点でそれが
住宅バブルであることがわかっていたのです。そして、それが間
もなくはじけることを・・・です。そして、警告を発していたの
です。しかし、グリーンスパン氏の警告を誰もまともには取り上
げなかったのです。そして、2006年1月にグリーンスパン氏
はFRBを去ったのです。
 そして、グリーンスパン氏の警告通りに住宅バブルがはじけて
米国は現状のようになっているのです。オバマ次期大統領は本当
にこれを乗り切れるのでしょうか。ドルが世界を循環しないと米
国はもたないのです。     ――[大恐慌後の世界/05]


≪画像および関連情報≫
 ●グリーンスパンの「私の履歴書」
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  「過去10年に日本で起きたように、根拠なき熱狂が過度に
  資産価格を押し上げ、その後予期せぬ長期の収縮を招きやす
  い状況に陥ったということを、どうすれば知ることができる
  のでしょうか。そうした判定をどう金融政策に反映させれば
  いいのでしょうか」。テーブルに戻って、「今の話でどこが
  ニュースになると思うか」と周りの人に問いてみたが、だれ
  も答えられなかった。だが「根拠なき熱狂」はその夜のうち
  に話題になり、東京市場で株価が下がった。だが、反応は半
  日ほどで、株価は再び上昇していった。
  ――アラン・グリーンスパンの「私の履歴書」/2008年
                   1月23日本経済新聞
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アラン・グリーンスパン氏.jpg
アラン・グリーンスパン氏
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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