2009年01月08日

●「米国の個人消費がダウンする恐怖」(EJ第2486号)

 現在、米国の金融危機は、第1フェーズの「流動性の危機」の
段階にあります。これは1997年秋の日本の金融危機によく似
ているのです。少し日本のケースを振り返ってみます。
 日本の場合、バフル崩壊から7年を経て、本格的な金融危機に
陥っています。なぜ、7年後に金融危機に陥ったかというと、バ
ブル時代に安易な審査で競って貸し込んだ銀行の不動産関連融資
の焦げ付きの処理が7年経っても終わっていなかったからです。
 1997年11月3日に三洋証券が会社更生法を申請したのを
皮切りに、17日には北海道拓殖銀行が当時の大蔵省から業務停
止命令を受け、24日には四大証券の一角である山一証券が自主
廃業を申請するなど、一ヵ月の間に大手金融機関が次々に破綻し
深刻な金融危機に陥ったのです。
 しかし、米国の場合、日本の前例もあったので、当時の日本よ
りも明らかにすばやく対応しているのです。それにもかかわらず
信用収縮は今後も相当長く続くと予想されていますが、どうして
でそうなるのでしょうか。
 その理由は、米国の場合、危機の根底に住宅価格の値下がりが
あり、それが現在も続いているからです。これまで米国の経済を
支えてきたのは、旺盛な個人消費なのです。米国経済の規模は世
界のGDPの約50兆ドルの約25%を占めているのです。
 50兆ドルといえば、約5000兆円ですが、米国のGDPは
その4分の1を占めるのです。その米国のGDPに占める個人消
費の割合は実に70%に達し、住宅関連消費はその約半分を占め
るのです。とにかくとてつもない数なのです。
 その住宅価格が値下がりしているので、実体経済とかけ離れて
つくられた金融資産とデリバティブの総額との差がをますます広
がっているのです。バブルを終わらせるには、この差の調整が必
要なのですが、住宅価格が依然として下がっているので、危機は
ますます拡大してしまうことになります。
 一般論ですが、バブルというのは、実体経済の経済成長以上に
資産価格が膨らむことによって発生するのです。かつて日本も土
地や株の異常な値上がりが実体経済と乖離して値上がりしてバブ
ルが膨らんだのです。
 そして、この資産価格の実体経済との乖離は、最終的に何らか
の調整によって解消され、バブルは消滅するのです。しかし、米
国の住宅バブルは、日本を含むこれまでのバブルとはケタ違いに
巨大であり、資本主義体制をも吹き飛ばすほどの破壊力を秘めて
いるのです。
 このあたりのことをもう少し詳しく述べると、米国の住宅バブ
ルの深刻さがわかると思います。
 2008年9月7日――米政府は、政府系住宅金融会社、ファ
ニイメイとフレディ・マックの2社を政府の管理下に置く処置を
とっています。事実上の国有化です。この発表に当たって、ポー
ルソン財務長官は、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国の経済や市場は、住宅市場の調整が終わるまで回復させる
 ことはできない。ファニーメイとフレディマックは住宅市場を
 回復させる上で重要な役割を担っている。
                  ――ポールソン財務長官
―――――――――――――――――――――――――――――
 ファニーメイとフレディマックの2社の持つ住宅ローンは約5
兆ドルであり、その規模は日本のGDPに匹敵するのです。米国
全体の住宅ローンの規模は約10兆ドルであるので、この2社で
その半分を引き受けていることになります。
 断っておきますが、これら住宅金融2社の扱う住宅ローンはサ
ブプライム・ローンではなく、プライムローンなのです。両社は
これを小口の債券にして世界中に売っていたのです。
 これら住宅金融2社の債券は住宅価格が上昇しているときは、
米国債並みの優良債券として大いに売れたのです。とくに中国や
ロシアがこの債券の大口保有者となっているのです。
 しかし、住宅価格が下がって、いわゆるサブプライム問題が起
きると、この債券にデフォルトの可能性が出てきたのです。そう
すると、米国政府は、慌ててこれら2社を実質国有化してしまっ
たのです。何しろ、これら2社の大口所有者者が中国とロシアで
あり、債券を投げ売りされることを何よりも恐れたからです。
 しかし、国有化することによって住宅ローンの貸し手がいなく
なってしまったのです。なぜなら、ファニーメイとフレディマッ
クの2社は、住宅ローンの有力な買い取り手であったからです。
 というのは、銀行は個人などに住宅ローンを貸し付けると、そ
れをファニーメイとフレディマックの2社に持ち込んで、現金化
していたからです。したがって、これら2社が国有化されると、
住宅ローンの引き受け手がいなくなり、銀行は個人に住宅ローン
を貸し付けることができなくなります。そうすると住宅はますま
す売れなくなり、住宅価格は下落することになるのです。
 それでは政府の管理下に置かれると、ファニーメイとフレディ
マックの2社は、なぜ本来の業務であるはずの住宅ローンの引き
受けができなくなってしまうのでしょうか。
 それは、抱え込んだ住宅ローンを処理することに業務の重点が
置かれるからです。5兆ドル――500兆円を処理する作業に何
年かかるか、相当長期間になることは避けられないでしょう。そ
の間は本来業務である住宅ローンの引き受けはほとんどできなく
なると考えるのが現実的といえます。
 米国の経済――というよりも世界経済を支えていたのは、米国
の個人消費だったのです。しかし、それは、借金に借金を積み重
ねる消費だったのです。たとえば、5000万円でローンを組ん
で購入した住宅が7000万円に値上がりすると、その差額であ
る2000万円分を担保とした借り入れ――リファイナンスが可
能になるのです。まさに借金に借金を積み重ねているわけです。
こんなことが長く続くはずもなく、それがいま、突然崩壊してし
まったのです。        ――[大恐慌後の世界/04]


≪画像および関連情報≫
 ●「流動性」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  流動性とは、取引高が少なくて、必要な時に思うような価格
  で売れないリスク。債券でも株でも、売買がほとんどされな
  い銘柄、つまり、流動性の低い銘柄は、必要な時に思うよう
  に売れないことがある。どうしても売りたい場合には、時価
  よりも大幅に安い値段を提示しなければならないことになり
  かねない。債券の場合には満期まで持てば元本が償還される
  が、株の場合には償還もないので、流動性リスクの高い銘柄
  は、その分安い価格で取引されることが多い。この価格差を
  流動性プレミアムという。
            ――オール・アバウトマネー用語辞典
  ―――――――――――――――――――――――――――

値下げしても売れない住宅.jpg
値下げしても売れない住宅
posted by 平野 浩 at 04:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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