2009年01月07日

●「今回の経済危機の2つの側面」(EJ第2485号)

 2008年10月1日のことです。米国において今回の金融危
機がいかに深刻であるかを示す出来事があったのです。それは、
米政府が陸軍の実働部隊を米国全土に駐留させ始めたことです。
 日本人にとっては、自国の軍隊を自国に駐留させることが何で
問題なのかと思うでしょうが、これは米国にとって南北戦争以来
の出来事であり、次の法律で禁じられていることなのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
          Posse Comitatus Act
―――――――――――――――――――――――――――――
 この法律は、軍(州兵以外の連邦政府軍)の実働部隊を米国本土
に配備することを禁ずるものです。それを今回「テロ対策」とい
う名目で、法律の例外事項にしたのです。しかし、それは表面上
の理由であり、本当の目的は国民による暴動を阻止するためだっ
たのです。
 実は米国では、何度も暴動が起きているのです。1929年の
世界大恐慌時にも大きな暴動が起こっています。それより規模は
小さいですが、最近では2005年にハリケーン「カトリーナ」
がニューオーリンズ市を直撃したときにも起きています。
 このときは、市内で略奪や暴動が起きていることが報道された
ので、ホワイトハウスは「有事」と認定し、州知事の権限を剥奪
して軍を派遣しているのです。そのさい、派遣された軍と貧民層
の市民が衝突して、多くの市民の怒りを買っています。
 今回、全米に陸軍の実働部隊を配置したのは、もし、大恐慌に
よって暴動が起きるとすれば、それは全国規模に拡大すると米政
府が考えたからです。しかし、世界一の経済大国である米国が国
民の暴動を恐れて軍隊を配備する――事態はここまで深刻化して
いるのです。
 100年に一度の経済危機といいますが、今回の危機には次の
2つの側面があることを知っておく必要があります。これは、金
融政策論の世界的権威であるアラン・ブラインダープリンストン
大学教授がいっていることです。ブラインダー教授は、元FRB
副議長の経験があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1.金融的側面
          2.経済的側面
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の側面は「金融的側面」です。
 今回起こっている金融混乱は、今まで例をみないものであり、
したがって、これを解決する本当のノウハウが誰もわからない状
況にある――これが深刻な点なのです。そのため、FRBは堤防
のあちこちに穴があくたびにそれを塞ぐ方法を模索していろいろ
な方策を打ち出しているが、確信をもって政策を打ち出している
わけではない――このように金融的側面に対する対応策は依然と
して霧の中にあるとブラインダー教授はいうのです。
 第2の側面は「経済的側面」です。
 ここで「経済的」とは実体経済のことです。米国は、2007
年12月以来、深刻なリセッション(景気後退)に陥っているが
2008年9月までは弱々しい景気が持続していたものの、9月
以降急激な収縮が始ったとしています。
 しかし、このリセッションに対応する処方は既にわかっている
ことであり、政府はまず金融緩和策を講じ、早急にやるべき対策
がとられています。続いて、オバマ政権によって減税、さらに財
政出動という手が適切に打たれることになる――ブラインダー教
授はこういっています。
 ブラインダー教授は、バーナンキFRB議長のこれまでの仕事
ぶりについて、次のように評価しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 バーナンキFRB議長はよい仕事をしてきたと思う。ただ、関
 係の薄かったポールソン財務長官と組むというハンディを負っ
 てきた。TARP(7000億ドルの不良資産買い取り計画)
 はうまくいっていない。バーナンキ議長は、まさに海図のない
 水域を航海しているようなものだ。もちろん、彼は非常に積極
 的かつ創造的に問題に対処していることは高く評価したい。彼
 は外面的な冷静さを失わない。――アラン・ブラインダー教授
            「週刊東洋経済」新春合併特大号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ブラインダー教授のいう今回の危機の「金融的」側面――金融
危機には次の3つのフェーズがあります。現在は、どのフェーズ
にあるのでしょうか。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1.流動性の危機
          2.資 本の危機
          3.本格的な恐慌
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在、米国は第1のフェーズにあります。危機はまだ入口なの
です。クレジット・クランチ(信用収縮)によって金融機関同士
が疑心暗鬼になっており、インターバンク市場が機能不全になっ
ているのです。金融機関は、いわゆる「カウンターパーティリス
ク」に陥っているのです。なお、カウンターパーティーリスクの
詳細については、既に説明しております。次のURLをクリック
してください。
―――――――――――――――――――――――――――――
http://electronic-journal.seesaa.net/article/104763449.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 「流動性の危機」に関しては、1997年秋の日本の金融危機
によく似ています。バーナンキ議長は、もちろん日本のケースに
ついてよく調べています。彼は恐慌の研究家なのです。
 しかも、今回は米国だけでなく、世界中で金融危機が進行して
いるのです。したがって、本当の解決策は米国一国レベルでは解
決できないのです。      ――[大恐慌後の世界/03]


≪画像および関連情報≫
 ●アラン・ブラインダーについてのプログより/本石町日記
  ―――――――――――――――――――――――――――
  アラン・ブラインダーが警告した「自分の尾を追う犬」とな
  った中央銀行の対話の危険性は、基本的には中央銀行が市場
  を尊重しすぎてその近視眼性を取り込んだ場合を指している
  と思われる。日銀の場合、自ら予断を与え、予断を与えられ
  た市場との間で「尾を追う犬」化しているように見受けられ
  ることで、これは何というか、ブラインダーの想像を超えた
  市場との対話の失敗であるような気がする。願わくば、解除
  ができ、景気が良くなり、物価も上がり、預金金利がタンス
  預金を引きつけるほど上昇するような利上げが実現して欲し
  い(リスクマネーとして株や不動産、外貨などに流れてもO
  K)。そうでないと、振り返ってみた場合に、要らぬ予断を
  与えたに過ぎなくなるからだ。
            http://hongokucho.exblog.jp/3657444
  ―――――――――――――――――――――――――――

アラン・ブラインダー教授.jpg
アラン・ブラインダー教授
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 大恐慌後の世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
RDF Site Summary