2008年12月24日

●「CP買い切りの背景を探る」(EJ第2477号)

 「CPの買い切り」について白川日銀総裁は、次のように述べ
ています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 異例中の異例。経済、金融が厳しいがゆえの措置だ。財務の健
 全性や通貨の信認を確保するために十分配慮しなければならな
 いが、今の経済にどう貢献できるか真剣に考えた結果である。
                     ――白川日銀総裁
―――――――――――――――――――――――――――――
 今まで日銀がCPを買い入れるときは、金融機関を通じて「売
り戻し条件付き」で買い入れていたのです。しかし、このような
CPの買い入れ方式では、もし、CPを買い入れた企業が倒産し
てしまうと、金融機関は損をかぶってしまうので、CPを引き受
けなくなるのです。事実、金融危機で市場ではCPの買い手が減
り、十分発行できない状況が続いているのです。
 しかし、今回、白川日銀総裁は「日銀は売り戻し条件を付けず
に買い切る」と言明したのです。日銀が売り戻し条件を付けずに
買い切れば、金融機関は回収不能を心配せずにCPを購入でき、
企業に資金が行き渡ることが期待されるのです。そしてその分だ
け銀行は資金を中小企業向けの融資に回せる――このように日銀
は考えたものと思われます。これは結果として日銀が企業に対し
てダイレクトに資金を供給したことと同じ効果になるのです。こ
れが「CPの買い切り」です。
 CPの買い切りについては、米FRBのバーナンキ議長が先に
表明しており、何となく日銀の発表は米国の後追いのような感じ
が否めないのですが、実際はどうなのでしょうか。
 日銀の政策は、政策委員会・金融政策決定会合が担っており、
政府などの干渉を一切受けない独自のもののはずです。しかし、
今回の日銀の決定の裏側を探ってみると、そこに与謝野経済財政
担当相の影が見え隠れするのです。毎日. JPの次の記事を見て
いただきたいと思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中川昭一財務・金融担当相は16日の閣議後会見で「日銀の独
 立性は承知している」としつつも「(景気悪化を)回避するの
 も日銀の重要な責務」と強調。「経済状況や流動性の問題で、
 あるべき結論を出していただけると期待している」と、日銀の
 一段の金融面での対応を促した。与謝野馨経済財政担当相も同
 日の会見で、麻生太郎首相が12日の「生活防衛のための緊急
 対策」の発表時に日銀の流動性供給策強化への期待感を示した
 ことをあげて、「政府が節度を保ちながら、中央銀行に一定の
 メッセージを送ったもの」と指摘。企業が短期の資金調達のた
 めに発行するコマーシャルペーパー(CP)を買い取る措置な
 ど日銀が一段の景気安定化策に踏み切ることに期待を示した。
              ――毎日. JP(毎日新聞)より
―――――――――――――――――――――――――――――
 政府は、与謝野経財相が中心となり、CPについては、日本政
策投資銀行による買い取り策を打ち出しており、日銀に同調を促
していたのです。そのさい、FRBも同様のことをやるとの情報
が入っていると日銀に伝えているのです。
 しかし、日銀内部では、CP買い切りには企業の破綻リスクを
負うことになるので、頑強な反対意見があったようですが、百年
に一度の危機であること、それにFRBが先行したことによって
日銀は苦渋の決断をしたものと思われます。
 心配なのは、企業倒産が相次ぎ日銀が損失を被ることです。な
ぜなら、国内で唯一紙幣を印刷できる日銀の財務内容が悪くなれ
ば、紙幣の信用を損なう恐れがあるからです。
 歴史を振り返っても、主要国の中央銀行で民間企業の信用リス
クを抱え込んだのは、2003年に企業の資産担保コマーシャル
ペーパー(ABCP)などの買い切りに踏み切った日銀と、今回
の金融危機で大量の民間資産の買い取りをはじめた米FRBの2
つだけなのです。まさに、これは中央銀行の禁じ手なのです。
 12月21日の「サンデープロジェクト」に与謝野経財相が出
演して、今回の日銀の利下げと量的緩和策について面白いことを
いっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日銀はかつては貴公子だったけれど、これらは野武士のように
 やって行くということのあらわれである。 ――与謝野経財相
―――――――――――――――――――――――――――――
 さて、現在時点の主要国の「政策金利」は次のようになってい
ます。「政策金利」というのは、中央銀行がコントロールできる
唯一の金利で、市場の金利を実体経済に合った水準に誘導するた
めに決める基準金利のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     日本 ・・・・・・・    0.1 %
     米国 ・・・・・・・ 0〜0.25 %
     ユーロ圏 ・・・・・    2.5 %
     英国 ・・・・・・・    2.0 %
     スイス ・・・・・・  0〜1.0 %
     オーストラリア ・・   4.25 %
―――――――――――――――――――――――――――――
 0.1 %の政策金利では、追加利下げの余地はもうほとんどな
いのです。それにゼロ金利だけでは景気刺激効果としてはほとん
どないことを当の白川日銀総裁も認めているのです。
 そうなると、残るのは量的緩和策のみですが、それも今までや
ったようなやり方では機能しないので、今回発表しているような
リスクの多いCPの買い切りのようなことを思い切ってやる必要
が出てきているのです。
 FRBは、CPの買い切りのほか長期国債、住宅ローン債権な
どの買い切りも行い、資産取引を通じて流動性供給を行う手段が
あるとしています。日銀もFRBと同じ道を歩まざるを得ないで
しょう。          ――[円高・内需拡大策/35]


≪画像および関連情報≫
 ●「公定歩合」と「政策金利」の違い/日本銀行HPより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  日本銀行が金融機関に直接資金を貸し出す時の基準金利のこ
  とを「公定歩合」と言います。「公定歩合」は、規制金利時
  代には、預金金利などの各種の金利が「公定歩合」に直接的
  に連動していたため、金融政策の基本的なスタンスを示す代
  表的な政策金利でした。しかし、1994年に金利自由化が
  完了し、「公定歩合」と預金金利との直接的な連動性はなく
  なりました。現在は、こうした連動関係に代わって各種の金
  利は金融市場における裁定行動によって決まっており、「公
  定歩合」は、2001年に導入された補完貸付制度の適用金
  利として、日本銀行の金融市場調節における操作目標である
  無担保コールレート(オーバーナイト物)の上限を画する役
  割を担うようになっています。現在の日本銀行の政策金利は
  無担保コールレート(オーバーナイト物)であり、「公定歩
  合」には政策金利としての意味合いはありません。
  −――――――――――――――――――――――――――

与謝野と白川の連携.jpg
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(1) | 円高・内需拡大策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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