2008年12月22日

●「世界はゼロ金利ラッシュである」(EJ第2476号)

 世界同時不況が一段と深刻の度を増しています。米国がゼロ金
利を即断し、量的緩和にも乗り出すことを表明しています。バー
ナンキFRB議長といえば、かつてゼロ金利をとっている日銀を
馬鹿にして、次のようにいっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ・日銀の審議員のなかで耳を傾けるのに値するのはたった一人
  だけで、他はひどいものだ。
 ・日銀はトマトケチャップでも買え!――そうすれば、景気は
  良くなる。          ――バーナンキFRB議長
―――――――――――――――――――――――――――――
 そのバーナンキFRB議長がゼロ金利と量的緩和に踏み切った
のですから、米国の現況がいかに厳しいものであるかが理解でき
ると思います。バーナンキ議長は、米連邦公開市場委員会――F
OMCにおいて、「全手段を動員する」と明言したのです。
 ゼロ金利政策と量的緩和政策は、既に日本が2001年から5
年間にわたって行っているので、日本が経験を持っていますが、
その効果については賛否両論があります。
 当時の速水優日銀総裁は、1999年2月からゼロ金利政策を
行い、2000年8月に解除しています。しかし、米国のITバ
ブルが崩壊し、国内景気が悪化したことによって、2001年3
月から、世界に前例のない量的緩和政策を導入したのです。
 この当時の日銀が実施した量的緩和政策について、2008年
12月18日付の日本経済新聞は次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 (日銀の実施した量的緩和政策の)最大の特徴は、金融政策の
 運営目標を従来の金利から「資金量」に転換した点にある。民
 間銀行が決済のため日銀に開設している「当座預金口座」につ
 いて残高目標を設け、目標額に達するまでお金を大量供給し続
 ける。お金は、銀行がもつ国債などを日銀が買い取る形で供給
 した。量的緩和の開始時に5兆円だった残高目標は段階的に引
 き上げられ、最大35兆円となった。当座預金口座には金利が
 付かないので、銀行は利益を生まない大量の資金を手にしたこ
 とになる。――2008年12月18日付、日本経済新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 日銀の当座預金というのは、民間金融機関が日銀内に開設して
いる預金口座のことです。この口座は、日銀と民間金融機関の取
引で使われるのです。
 もちろん日銀は無担保では民間銀行に資金を供給できないので
銀行の持つ国債などを買い取って、当座預金残高を積み上げたの
です。この資金には利息は付かないので、銀行はそのジャブジャ
ブある資金を企業に貸し出すはずという狙いがあったのです。
 しかし、企業の貸し出しは一向に増えなかったのです。なぜで
しょうか。
 それは日本がバランスシート不況に陥っていたからである――
そのため企業からの資金需要はなかったのです。このように、リ
チャード・クー氏がその原因を解明していることは既に述べた通
りですが、このリチャード・クー氏の理論を積極的に受け入れる
経済の専門家は少ないようです。
 それでは、民間銀行はどうしたのでしょうか。民間銀行はその
お金でわずかでも利息の付く国債を中心に運用したのです。もと
もと銀行の保有する国債を日銀が買い上げて、積み上げられた資
金で再び国債を買う――実に変な話です。
 バーナンキFRB議長は日本のケースもよく調べており、今回
の量的緩和政策については、銀行経由ではなく、直接市場へ資金
を供給することを表明しています。具体的には、企業が発行する
コマーシャル・ペーパー(CP)をFRBが買い切ることです。
正確にはこれを「CPの買い切り」というのですが、その意味に
ついては24日のEJで説明します。
 ところで、CPとは何でしょうか。
 CPとは、ある程度の信用力を有する大企業がオープン市場か
ら短期資金を調達するために発行する無担保の割引約束手形のこ
とです。確かにこれをやれば、資金繰り難に陥っている優良企業
には、FRBが直接資金を供給することができます。
 さらにFRBでは、CPだけでなく、FRBが市場から買い取
れる資産の対象を拡大し、量についても増やすといっているので
す。なにしろバーナンキ議長は「全手段を動員する」と明言して
いるので、やれることは何でもやると思います。
 しかし、この「CPの買い切り」について、欧州中央銀行――
ECBは、定款上問題があるとして難色を示しています。それで
は、公的資金による銀行の不良債権の買い取りはどうかというと
財布を握る各国間で調整がつかない状態です。それでは最後の手
段としての財政出動についてはドイツが反対を表明していて、何
もできない状態であるといわれています。
 それでは、その間日本は何をしていたのでしょうか。
 金融関係者がその必要性を説く「CPの買い切り」について日
銀関係者は、次のようにいっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    米欧に比べると、日本の銀行は健全である
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、信用逼迫の波は大きく日本を襲ってきたのです。そし
て、ゼロ金利や量的緩和に回帰すべきかどうか、あれこれ検討し
ているうちにスイスやFRBに先行されてしまったのです。
 12月11日にスイス国立銀行は、「世界経済は激しく悪化し
ている。スイスも来年はマイナス成長になる」として事実上のゼ
ロ金利で先陣を切っています。これに追随したのは米FRB――
16日のことです。
 そして19日、日銀は0.3 %の金利を0.1 %に下げ、CP
の買い切りについても実施すると発表しています。これは日本に
とって異例の措置といえます。しかし、米国の動きをみて追随し
たと考えざるを得ないのです。――[円高・内需拡大策/34]


≪画像および関連情報≫
 ●CPとは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  コマーシャルペーパー/CPとは、企業が資金調達を行うた
  めに発行される短期の約束手形。コマーシャルペーパーは、
  「CP」という略称で呼ばれることが多い。無担保の割引方
  式(金利分を額面から割り引いて販売する形)で発行される
  短期の約束手形であり、発行体は優良企業に限られる。また
  金融機関、証券会社などが発行を引き受け、販売先は機関投
  資家に限定される。   ――オール・アバウト「マネー」
  ―――――――――――――――――――――――――――

白川日銀総裁.jpg
白川日銀総裁
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(1) | 円高・内需拡大策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Tracked: 2009-01-26 14:26