2008年12月15日

●「ダイエーはどうして潰されたか」(EJ第2471号)

 今から考えると、何もかも最初から計画されていたのではない
かと思われるのです。金融再生プログラムには次の目標があった
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2005年3月の大手銀行の「不良債権比率4.2 %以下」
 にする。         ――金融再生プログラムの目標
―――――――――――――――――――――――――――――
 金融再生プログラムの発表は2002年10月のことです。竹
中平蔵氏は、2002年9月に大臣になると、早くもこの計画を
発表し、「改革」の名の下に物凄いスピードで不良債権の処理に
乗り出したのです。
 「不良債権比率4.2 %以下」の目標は、2001年度の大手
行の不良債権比率8.4 %の半減なのです。ちなみにこの不良債
権比率8.4 %自体が意図的に作り出されたものであることにつ
いては既に述べた通りです。
 この意図的な不良債権比率のかさ上げの道具に使ったのが、D
CF方式と減損会計なのです。それから小泉政権はもう一つの仕
掛けを用意したのです。それは、2003年4月に不良債権処理
機能と企業の再生を目的とする「産業再生機構」の設立です。
 そして、2003年5月にりそな銀行を実質国有化し、同じ年
の11月には足利銀行を一時国有化しています。足利銀行の場合
は、監査法人は「税効果資本はゼロである」と通告したことが破
綻の原因です。しかし、足利銀行は破綻の6ヶ月前に自己資本は
8.5 %あったのです。しかし、監査法人が税効果資本は認めな
いという判断ひとつで破綻してしまったのです。これはまさに、
「会計恐慌」そのものです。
 そして、2004年のUFJ銀行潰しがあったのですが、いず
れも金融庁はDCF方式と減損会計という道具を使い、その不良
債権を産業債機構に肩代わりさせて、不良債権比率を下げてきた
のです。ひたすら、目標の4.2 %以下を狙ったわけです。
 2004年後半の時点で、実は目標の4.2 %以下は達成が困
難だったのです。もっと大きなところを潰す必要がある――そし
て、目をつけられたのがダイエーなのです。
 ダイエーは、新店舗展開のために大量の土地を買い、バブル後
の景気低迷と小売業の競争激化によって収益が伸び悩んでいたの
です。それに加えて有利子負債が非常に多く、経営を圧迫してい
たのです。
 しかし、2002年から2003年にかけて、ダイエーは、当
時の高木邦夫社長が指揮して、一年ちょっとで一兆円を超す有利
子負債を減らしており、経営そのものは順調に推移していたので
す。ダイエーに資金を貸し出しをしている銀行としては、そうい
うダイエーの努力を多として不良債権にしていなかったところも
あるほど経営努力は評価されていたのです。
 しかし、金融庁は血も涙もなかったのです。各行のダイエーに
対する貸出金を強制的に産業再生機構に移すよう強力に働きかけ
たのです。これをやると、ダイエーに対する不良債権となってい
る貸出金を公的資金で肩代わりすることができ、銀行の不良債権
が減るのです。
 その結果、金融再生プログラムに掲げた「不良債権比率4.2
%以下」の目標を達成することができたのです。ダイエーはその
ために潰されたといっても過言ではないのです。
 産業再生機構についてもう少し詳しく述べます。この機構は特
別法によって設立された株式会社です。民間が出資して設立され
たのですが、不良債権を買い取るための借入資金枠は10兆円で
これには政府保証がついているのです。
 不良債権を抱える銀行は金融庁の指示――形式的には銀行から
の申請――によって、不良債権の一部を債務放棄して残りを産業
再生機構に買い取ってもらうのです。同機構としては、その企業
の再生の道を模索し、企業再生の目途のついた企業は、それを健
全債権として買取希望企業に売り渡すのです。
 しかし、いったん産業再生機構に送られて再生できる企業は少
ないのです。しかし、ダイエーは、2006年9月に大手商社丸
紅がダイエーに対する貸出債権を買い取り、現在もダイエーは再
建を進めているのです。
 しかも、丸紅はダイエーが産業再生機構で処理される前から、
ダイエーと再建を協議しており、同機構に送る必要などなかった
のです。しかし、政府は自らが立てた不良債権比率削減の目標を
達成し、小泉政権の改革の成果として強調したいとの野心で、潰
す必要のないダイエーを潰したのです。
 こうした竹中・小泉政権について、既出の菊池英博氏は次のよ
うに述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 金融庁は、小泉デフレ政策であえぐ企業が必死に債務を削減し
 てきたのを無視して、官製の産業再生機構へ貸出債権を売却す
 ることを指示したのである。竹中平蔵氏は市場型行政を盛んに
 唱えながら、実際には「市場原理に反する手法」(金融庁によ
 る偽装恐慌)によってダイエーを潰した。一真性を欠く行政で
 あった。ダイエーはダイエー自身の再生方針に任せておくべき
 であった。ダイエーが金融不安を引き起こしているという状況
 はまったくなかったのだから、再生機構が介入する理由は存在
 しなかった。任せておいたほうが、はるかによい結果になった
 であろう。       ――菊池英博著/ダイヤモンド社刊
          『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』
―――――――――――――――――――――――――――――
 こういう一連の竹中・小泉政権のやり方を見ていると、入念に
仕組まれた計画と考えられます。当局としては、UFJにしても
ダヘイエーにしても外資に買い取らせたかったのでしょうが、そ
れと察した日本企業が必死で引き取ったものと思われます。
 竹中・小泉政権の唱えた「改革」なるものとは、一体何だった
のでしょうか。       ――[円高・内需拡大策/29]


≪画像および関連情報≫
 ●産業再生機構とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  産業再生機構とは、返済が遅延して「要管理先」などに分類
  された金融機関の不良債権のうち、再建できそうな企業の債
  権を買い取りメインバンクと協力してその企業を再生させる
  ことを目的とした株式会社である。企業が複数の銀行から融
  資を受けていると、銀行間で自行の返済を優先させたい思惑
  がからんで再建計画がスムーズにまとまらない傾向があるが
  政府の主導する、多額の資金とタイムリミットを設定した組
  織なら再建しやすくなるというのが設立の狙いである。再生
  機構は7人の委員からなる再生委員会を設置し、再建可能な
  企業かどうかを判定する。
    http://www.wombat.zaq.ne.jp/matsumuro/LEC16-11.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

ダイエー.jpg

posted by 平野 浩 at 04:20| Comment(1) | TrackBack(0) | 円高・内需拡大策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>しかし、2002年から2003年にかけて、ダイエーは、当時の高木邦夫社長が指揮して、一年ちょっとで一兆円を超す有利子負債を減らしており、経営そのものは順調に推移していたのです。

素人目にもがんばって、改善効果も出てきていたようなのにどうし? となんとなく違和感を感じていたことを思い出しました。
Posted by kwin at 2008年12月15日 22:35
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