かと思われるのです。金融再生プログラムには次の目標があった
のです。
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2005年3月の大手銀行の「不良債権比率4.2 %以下」
にする。 ――金融再生プログラムの目標
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金融再生プログラムの発表は2002年10月のことです。竹
中平蔵氏は、2002年9月に大臣になると、早くもこの計画を
発表し、「改革」の名の下に物凄いスピードで不良債権の処理に
乗り出したのです。
「不良債権比率4.2 %以下」の目標は、2001年度の大手
行の不良債権比率8.4 %の半減なのです。ちなみにこの不良債
権比率8.4 %自体が意図的に作り出されたものであることにつ
いては既に述べた通りです。
この意図的な不良債権比率のかさ上げの道具に使ったのが、D
CF方式と減損会計なのです。それから小泉政権はもう一つの仕
掛けを用意したのです。それは、2003年4月に不良債権処理
機能と企業の再生を目的とする「産業再生機構」の設立です。
そして、2003年5月にりそな銀行を実質国有化し、同じ年
の11月には足利銀行を一時国有化しています。足利銀行の場合
は、監査法人は「税効果資本はゼロである」と通告したことが破
綻の原因です。しかし、足利銀行は破綻の6ヶ月前に自己資本は
8.5 %あったのです。しかし、監査法人が税効果資本は認めな
いという判断ひとつで破綻してしまったのです。これはまさに、
「会計恐慌」そのものです。
そして、2004年のUFJ銀行潰しがあったのですが、いず
れも金融庁はDCF方式と減損会計という道具を使い、その不良
債権を産業債機構に肩代わりさせて、不良債権比率を下げてきた
のです。ひたすら、目標の4.2 %以下を狙ったわけです。
2004年後半の時点で、実は目標の4.2 %以下は達成が困
難だったのです。もっと大きなところを潰す必要がある――そし
て、目をつけられたのがダイエーなのです。
ダイエーは、新店舗展開のために大量の土地を買い、バブル後
の景気低迷と小売業の競争激化によって収益が伸び悩んでいたの
です。それに加えて有利子負債が非常に多く、経営を圧迫してい
たのです。
しかし、2002年から2003年にかけて、ダイエーは、当
時の高木邦夫社長が指揮して、一年ちょっとで一兆円を超す有利
子負債を減らしており、経営そのものは順調に推移していたので
す。ダイエーに資金を貸し出しをしている銀行としては、そうい
うダイエーの努力を多として不良債権にしていなかったところも
あるほど経営努力は評価されていたのです。
しかし、金融庁は血も涙もなかったのです。各行のダイエーに
対する貸出金を強制的に産業再生機構に移すよう強力に働きかけ
たのです。これをやると、ダイエーに対する不良債権となってい
る貸出金を公的資金で肩代わりすることができ、銀行の不良債権
が減るのです。
その結果、金融再生プログラムに掲げた「不良債権比率4.2
%以下」の目標を達成することができたのです。ダイエーはその
ために潰されたといっても過言ではないのです。
産業再生機構についてもう少し詳しく述べます。この機構は特
別法によって設立された株式会社です。民間が出資して設立され
たのですが、不良債権を買い取るための借入資金枠は10兆円で
これには政府保証がついているのです。
不良債権を抱える銀行は金融庁の指示――形式的には銀行から
の申請――によって、不良債権の一部を債務放棄して残りを産業
再生機構に買い取ってもらうのです。同機構としては、その企業
の再生の道を模索し、企業再生の目途のついた企業は、それを健
全債権として買取希望企業に売り渡すのです。
しかし、いったん産業再生機構に送られて再生できる企業は少
ないのです。しかし、ダイエーは、2006年9月に大手商社丸
紅がダイエーに対する貸出債権を買い取り、現在もダイエーは再
建を進めているのです。
しかも、丸紅はダイエーが産業再生機構で処理される前から、
ダイエーと再建を協議しており、同機構に送る必要などなかった
のです。しかし、政府は自らが立てた不良債権比率削減の目標を
達成し、小泉政権の改革の成果として強調したいとの野心で、潰
す必要のないダイエーを潰したのです。
こうした竹中・小泉政権について、既出の菊池英博氏は次のよ
うに述べています。
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金融庁は、小泉デフレ政策であえぐ企業が必死に債務を削減し
てきたのを無視して、官製の産業再生機構へ貸出債権を売却す
ることを指示したのである。竹中平蔵氏は市場型行政を盛んに
唱えながら、実際には「市場原理に反する手法」(金融庁によ
る偽装恐慌)によってダイエーを潰した。一真性を欠く行政で
あった。ダイエーはダイエー自身の再生方針に任せておくべき
であった。ダイエーが金融不安を引き起こしているという状況
はまったくなかったのだから、再生機構が介入する理由は存在
しなかった。任せておいたほうが、はるかによい結果になった
であろう。 ――菊池英博著/ダイヤモンド社刊
『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』
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こういう一連の竹中・小泉政権のやり方を見ていると、入念に
仕組まれた計画と考えられます。当局としては、UFJにしても
ダヘイエーにしても外資に買い取らせたかったのでしょうが、そ
れと察した日本企業が必死で引き取ったものと思われます。
竹中・小泉政権の唱えた「改革」なるものとは、一体何だった
のでしょうか。 ――[円高・内需拡大策/29]
≪画像および関連情報≫
●産業再生機構とは何か
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産業再生機構とは、返済が遅延して「要管理先」などに分類
された金融機関の不良債権のうち、再建できそうな企業の債
権を買い取りメインバンクと協力してその企業を再生させる
ことを目的とした株式会社である。企業が複数の銀行から融
資を受けていると、銀行間で自行の返済を優先させたい思惑
がからんで再建計画がスムーズにまとまらない傾向があるが
政府の主導する、多額の資金とタイムリミットを設定した組
織なら再建しやすくなるというのが設立の狙いである。再生
機構は7人の委員からなる再生委員会を設置し、再建可能な
企業かどうかを判定する。
http://www.wombat.zaq.ne.jp/matsumuro/LEC16-11.htm
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素人目にもがんばって、改善効果も出てきていたようなのにどうし? となんとなく違和感を感じていたことを思い出しました。