2008年12月12日

●「メリットの少ないメガバンク統合」(EJ第2470号)

 「日本はオーバーバンキング――銀行過剰である」――これは
竹中元金融担当相が口ぐせのようにいっていたのです。ここでい
うオーバーバンキングというのは、銀行の数が多いということで
はなく、銀行に資金が集まり過ぎて、銀行の資金供給量が多過ぎ
る――すなわち、資金の供給量が需要よりも大きいという意味な
のです。
 しかし、この議論は少しおかしいのではないでしょうか。19
85年から1990年にかけてのバブルのときのことですが、証
券投資がさかんに行われたのです。つまり、銀行の預金が下ろさ
れて証券投資に向かったのですが、そういうときでも銀行の預金
量は増えているのです。
 これは日本人に貯蓄志向のタイプの人が多いことを示しており
オーバーバンキングはそこからきているのです。しかし、そうで
あれば、銀行の数が少ないのは問題です。なぜなら、銀行の数が
少なくなると、ますます銀行に資金が集中し、オーバーバンキン
グの状態になるからです。
 さらに、現在はペイオフが完全に実施されており、銀行の数が
減ると、預金者にとっては資金を分散させることが困難になりま
す。なぜなら、預金保護限度額は一つの銀行が単位となって設定
されているからです。ペイオフでは、銀行が大きいか小さいかは
問題ではないからです。そういうときに、健全行であったはずの
メガバンクを減らす必要がどこにあったのか、非常に疑問に感じ
るのです。
 心配なのは、これからも銀行の統合は進むと考えられます。現
在、地方銀行が大変厳しい状況ですが、もしそういう地方銀行の
いくつかが経営不振に陥ると、銀行の持ち株会社の下でそれらの
銀行が経営統合され、一年後にはひとつの銀行になるというよう
に、銀行の数はますます減って行くと考えられるからです。
 預金者の預金先が減るということは、金融システムの不安要因
につながるのです。したがって、地域銀行を育成強化する政策が
必要なのですが、小泉政権はその地方を徹底的に斬り捨てたので
す。地方銀行を育成・強化し、地方の経済発展の基盤を作る――
そのためには地方分権を一層促進する必要があるのです。このよ
うに考えると、小泉政権のいわゆる「改革」とはいったい何のた
めの改革だったのでしょうか。
 銀行の統合によって何が得られるのでしょうか。それは、次の
2つの利益が得られるとされています。
―――――――――――――――――――――――――――――
         1.「規模」の利益
         2.「範囲」の利益
―――――――――――――――――――――――――――――
 銀行の合併の場合、これら2つの利益により、銀行の収益が増
加し、不良債権処理が可能になって、銀行経営が安定化するとい
われます。本当でしょうか。
 規模の利益とは、合併によって業容が拡大すると、必要経費が
売り上げ増加に比して少なくてすむので、合併前よりも収益は増
加するというのです。また、範囲の利益とは、合併前にはなかっ
た新分野が拓けて、利益が増加する――こういう理屈なのです。
 しかし、実際にそうなっているのかというと、必ずしもそうで
はないのです。
 菊池英博氏は、銀行の合併がうまくいっていない事例として、
現在の三菱東京UFJ銀行のケースを取り上げて、次のように述
べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1996年4月に合併した東京銀行と三菱銀行、その後にグル
 ープ入りした三菱信託銀行の例を見ると、合併直前の1996
 年3月期の業務純益(銀行の広義の営業純益)では、東京銀行
 が2322億円、三菱銀行が4128億円、三菱信託銀行が2
 043億円で、合計8493億円であった。しかし、2004
 年3月期の業務純益は合計6548億円に過ぎず、8年間で約
 2000億円も減少している。
             ――菊池英博著/ダイヤモンド社刊
          『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、UFJ銀行が存続していれば、どうなったでしょうか。
 2004年3月末で、預金額53兆円、貸出は42兆円、預金
と貸出ともに全銀行のシェアは10%、4大メガバンクのシェア
では21%――きわめて安定しており、潰す必要などまったくな
かったのです。対米約束で、どうしてもメガバンクを一行潰した
かったのでしょう。情けない話ではあります。
 つい先日のことです。あのイラクで米軍との間で地位協定が結
ばれたのですが、イラクは米軍に相当厳しい条件を飲ませたとい
うのです。あのイラクでさえそうなのです。
 それに比べて日本はどうでしょう。50年もやっていて、米軍
に必要以上の貢献をしている日本であるのに、依然として屈辱的
な協定内容に甘んじている――政府も情けないが、国民の無関心
もひどいものだと思います。
 大手銀行首脳への揺さぶり、りそな処理、UFJ潰し――この
間に一貫してそれを指揮する最高の権限を有していたのが竹中平
蔵氏なのです。念のため、竹中氏の大臣履歴を示します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪特命大臣として経済財政政策担当相≫
  2002年 9月30日〜2003年 9月22日
 ≪内閣府特命担当大臣(金融担当)を兼務≫
  2003年 9月22日〜2003年11月19日
  2003年11月19日〜2004年 9月27日
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように竹中氏は、問題の期間の最高権力者の地位にいたの
です。そして、最後の仕事は「ダイエー潰し」だったのです。
              ――[円高・内需拡大策/28]


≪画像および関連情報≫
 ●特命担当大臣とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  特命担当大臣とは、中央省庁再編に伴う内閣府設置法の施行
  により、2001年1月6日に法制化された職位であり、国
  務大臣をもって充てられる。内閣府にのみ置かれるため辞令
  (官報への掲載)での正式表記は「内閣府特命担当大臣」で
  あり、実際には「内閣府特命担当大臣(金融担当)」のよう
  に括弧付きで担当事務が付される。定数については特に定め
  られていないが、「沖縄及び北方対策担当」と「金融担当」
  は必置とされている。        ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

「UFJ消滅」.jpg
posted by 平野 浩 at 04:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 円高・内需拡大策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック