2008年12月11日

●「異常に少ない日本のメガバンク」(EJ第2469号)

 海外進出の国内大手銀行は3つではあまりにも少ない――この
ようにいった人は多くいるのです。これに対し、竹中金融担当相
(当時)は、米国、ドイツも3つであるし、英国も4つであると
答えています。次のデータをご覧ください。
―――――――――――――――――――――――――――――
     海外進出大手銀行数   銀行総数  GDP比較
  日 本       3行  1414行    100
  米 国       3行  8000行    260
  ドイツ       3行  3500行     50
  英 国       4行  1700行     40
  カナダ       6行   150行     18
                 ★2006年3月末現在
          GDPは日本を100とした数字である
―――――――――――――――――――――――――――――
 竹中氏という人は頭がよくて頭の回転が早い人です。それにな
かなか弁が立ちますので、一気にまくしたてられると、かなり金
融に詳しい人でもちょっと反論できないのです。しかし、いって
いることには大きな問題があるのです。
 まず、日本の3行はGDPとの比較でいうと、明らかに少な過
ぎるのです。しかし、日本の倍以上のGDPのある米国も3行で
はないかといわれると、米国の金融の事情を知らない人は何もい
えなくなってしまうと思います。
 まず、米国の場合、確かに世界各地に海外進出している国際銀
行は3行ですが、各州の大手銀行が海外取引をしているので、本
当に巨大な国際銀行は3行で十分であるといえます。
 もうひとつ、米国には銀行同士の合併に対して、預金保険機構
の2つのルールがあり、合併による大銀行は作りにくいのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.預金保険機構10%ルールによる合併制限
   2.隣接州預金保険機構30%による合併制限
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の「預金保険機構10%ルールによる合併制限」というの
はどういう制限なのでしょうか。
 これは、全国規模で営業拠点を持つひとつの銀行グループに対
する預金保護額は、預金保険機構の全保護額の10%を限度とす
るというルールです。
 日本の3大メガバンクにこれを置き換えると、各行の預金額が
国内銀行の預金総額に対してどのくらいのシェアを占めているか
を見ればよいのです。昨日のEJの添付ファイルを見ればわかり
ますが、それぞれのシェアは10%を超えているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
            国内預金総額に対するシェア
    みずほFG             12%
    三井住友FG            12%
    三菱UFJFG           17%
              ★2006年3月末現在
―――――――――――――――――――――――――――――
 したがって、米国では、東京三菱銀行とUFJ銀行の合併のよ
うなケースは認められないのです。
 続いて、第2の「隣接州預金保険機構30%による合併制限」
の説明です。
 これは、隣接する州に営業拠点を持つひとつの銀行グループに
対する預金保険機構の預金保護額は、その地域における預金保護
額全体の30%を限度とするというルールです。
 これを日本の3大メガバンクに置き換えて、各行の預金総額が
3大メガバンク全体の預金総額に対してどのくらいのシェアを占
めているかを調べてみましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
              3大銀行に占めるシェア
    みずほFG             29%
    三井住友FG            29%
    三菱UFJFG           42%
              ★2006年3月末現在
               3大銀行合計=100
―――――――――――――――――――――――――――――
 これによると、みずほと三井住友は30%以下ですが、三菱東
京UFJ銀行は42%であり、これに貸出金を加えると、3行中
45%前後まで跳ね上がるのです。米国でいう30%ルールに明
らかに違反しているのです。このような無理で強引な銀行の合併
を金融庁はなぜやったのでしょうか。
 日本の銀行は総数からいっても、その経済規模に比して明らか
に少ないのです。先述しているように、米国の場合は各州の大手
銀行が海外の銀行と直接取引しており、国際銀行としての役割を
果たしているのです。
 これに対して日本の場合は、海外の銀行と取引しているのは、
たったの3行なのです。地方銀行が国際取引をするときはメガバ
ンクを通さないとできないのです。それをわざわざ健全行である
UFJ銀行を難くせをつけて潰し、3行にしてしまったのはその
ウラに米国の影が見えるのです。なぜ、日本は政府もメディアも
国民もこのことに関して無関心なのでしょうか。これらがいずれ
も小泉政権のときに進められたことに留意すべきです。
 ドイツの銀行は日本の2.4 倍の銀行を持っています。ドイツ
は名目GDPは日本の半分ですから、それに引き直すと、ドイツ
の銀行の数は実質的に日本の5倍になるのです。
 日本は、その経済規模から見て、少なくとも6行〜7行の海外
進出銀行が必要なのです。竹中金融担当相は、つねづね「日本は
オーバーバンキングである。だから、バブルが起こった」といっ
ていました。これはどういう意味でしょうか。「オーバーバンキ
ング」は銀行の数のことをいっているのではないのですが、明日
のEJで説明します。    ――[円高・内需拡大策/27]


≪画像および関連情報≫
 ●「預金保険機構」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  預金保険機構は、日本の預金保険方に基づき1971年7月
  1日、アメリカ合衆国における連邦預金保険公社――FDI
  Cをモデルに設立された認可法人。預金者等の保護と信用秩
  序の維持を主な目的とする。補償額もほぼ同様の預金者一人
  当たり1000万円――FDICは10万米ドル。 日本の
  金融機関で預金保険が使用される枠組は、資金援助方式と、
  直接預金保険機構が預金者に保険金を支払う保険金支払方式
  ――ペイオフの2つがある。     ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

三菱東京UFJ銀行本店.jpg
posted by 平野 浩 at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 円高・内需拡大策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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