2008年12月10日

●「寡占化の進む日本の金融システム」(EJ第2468号)

のUFJ銀行に対して、金融庁はどのように考えていたの
でしょうか。菊池英博氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 当時の金融庁は、次のようなシナリオを強行しようとしていた
 と伝えられている。すなわち、UFJ銀行を潰すために、大口
 の不動産関連融資の処理を急がせ、貸倒引当金を追加して積み
 増しさせる。そして赤字に追い込み、自己資本を毀損(減額)
 させ、自己資本比率が国際基準行として要求されている最低水
 準8%を割らせる。そこで公的資金を注入する。こうして事実
 上破綻させ、一時国有化する。その後、外資や国内銀行に譲渡
 する。つまり、政府は金融不安を起こしていない大手銀行を強
 制的に破綻させ、分割して売りさばこうとしていたのである。
             ――菊池英博著/ダイヤモンド社刊
          『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』
―――――――――――――――――――――――――――――
 金融庁は、UFJ銀行を検察庁に告発したのです。理由は「検
査忌避」です。UFJ銀行は金融庁の検査に当たり、不良債権に
関する資料を隠蔽し、検査を忌避したというのです。
 一般論であるが、主力銀行が貸出先の資産査定をするときは、
いくつかのケースを想定して複数の資料を作成し、貸付先の業態
を検査し、メインバンクとしての対応を決めることになっている
のです。
 UFJ銀行もそういう作業プロセスを経て資産査定をしており
採用にならなかった資料が残っていたのです。その資料の存在を
見つけたUFJ銀行内部の人間が「隠蔽資料がある」と内部告発
したのです。
 その内部告発に基づいてUFJ銀行に乗り込んだ検査官と担当
者の間でその隠蔽されているとされる資料をめぐって言い争いに
なったのです。その結果、金融庁は検査忌避と判断し、UFJ銀
行を検察庁に告発したのです。かなり乱暴な措置です。
 しかし、告発されたUFJ銀行首脳は資料の隠蔽を認め、罪を
認めたのです。裁判の長期化による信用の失墜を恐れたのです。
かくして、UFJ銀行は、2004年7月14日に東京三菱銀行
に合併を申し入れ、2005年10月に現在の三菱東京UFJフ
ィナンシャル・グループが誕生したのです。
 両行の合併は2006年1月に行われたのですが、これで日本
はメガバンク3行による世界一の寡占化の進んだ体制になったの
です。この体制がいかに問題があるかは改めて検証します。一体
金融庁は何を狙ってUFJ銀行を潰したのでしょうか。
 既に述べたように、2004年3月期においては、業務純益の
最も少なかった東京三菱銀行が、それより多い業務純益を持つU
FJ銀行を吸収合併したのです。合併後の2006年3月期の決
算によると、三菱UFJフィナンシャル・グループの税引き後利
益は、3大メガバンクの中で最高の1.1 兆円となったのです。
これは、バブル期を上回る収益といわれたものです。
 ところがです。その中身が問題なのです。その税引き後利益で
ある1兆1000億円のうち、7000億円は2年前にUFJ銀
行が金融庁命令によって、貸倒引当金として積み増しさせられた
1兆2000億円の戻りなのです。
 強制的に積み増しされた貸倒引当金の60%が2年後に戻ると
いうことは、それが不良債権から一転正常債権に復帰したことを
意味しています。普通このようなことはあり得ないことです。そ
れは、2004年3月期の検査時の金融庁の貸出金の査定がいか
に不適切であったことを示しているのです。
 もっと重要なことがあります。もし、戻り額である7000億
円の積み増しをしないで済んだと仮定すると、2004年3月期
のUFJ銀行の貸倒引当金の積み増しは5000億円ほどである
ので、経常利益が3000億円は出ていたはずなのです。UFJ
銀行は健全行だったのです。それをなぜ、潰したのでしょうか。
 菊池英博氏は、これについて「金融庁はどう責任を取るのか」
として、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 当時の金融庁担当大臣、検査責任者には重大な責任がある。検
 査の不適正ばかりではない。すでに述べたように、UFJ銀行
 を合併に追い込み、超メガバンクをつくることで、金融システ
 ムを寡占化し、硬直化し、弱体化させたのである。こうした点
 から見ても、金融庁の重大な失政であり、行政の責任は重大で
 ある。         ――菊池英博著/ダイヤモンド社刊
          『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在の日本には、国際基準行は次の5つありますが、メガバン
ク3行のシェアは圧倒的であり、実質的に3行体制です。
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     1.みずほフィナンシャル・グループ
     2.三井住友フィナンシャル・グループ
     3.三菱FUJフィナンシャル・グループ
     4.中央三井信託銀行
     5.住友信託銀行
―――――――――――――――――――――――――――――
 世界第2の経済大国で、国際基準行が3行というのはあまりに
も少ないのです。日本の国内市場で、メガバンク3行が預金と貸
出金でどのくらいのシェアを占めているか知っておく必要があり
ます。2006年3月末のデータでいうと、奇しくもともに41
%なのです。添付ファイルの表をごらんください。
 3大メガバンク3行で預金も貸出金も4割を占有しているとい
うことは、金利、手数料といった料率を3大メガバンクが独占的
に決定できるポジションを占めているということです。
 それに預金総額でいうと、こういう独占状態は、米国では承認
されないのです。このような金融システムはきわめて不安定であ
るといえます。       ――[円高・内需拡大策/26]


≪画像および関連情報≫
 ●日本経済を破壊する巨艦メガバンク
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  たった2年前の春のことだ。バブル崩壊後の不良債権問題が
  片付いたメガバンクは、2006年3月期決算において、そ
  れぞれ約1兆2066億〜5200億円の最終利益を計上、
  大手銀行合算の最終利益は、バブル景気前を含めて過去最高
  を記録した。これを受けて大手マスコミは、「バブル崩壊後
  の痛手からメガバンクが立ち直った」と喧伝、東京・日本橋
  本石町の日銀本店内にある金融記者クラブに姿を見せた各メ
  ガバンクのトップは、「これからは攻めの経営に転じる」と
  一様に笑顔を見せた。       ――「日刊サイゾー」
  http://www.excite.co.jp/News/society/20080612/Cyzo_200806_post_624.html
 ●グラフ出典/寡占化が進む日本の金融システム
   。         ――菊池英博著/ダイヤモンド社刊
          『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』
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寡占化が進む金融システム.jpg
寡占化が進む金融システム
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 円高・内需拡大策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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