2008年12月02日

●「竹中大臣が目をつけた監査法人」(EJ第2462号)

 竹中大臣――金融担当相の行動を見て、大手銀行の首脳は強い
危機感を抱いたのです。「下手をすると国有化される」――この
ように判断した大手銀行の首脳は、自衛策を講ずる必要があると
考えて早速行動に移したのです。それというのも竹中金融担当相
は、大臣就任直後から次のようにいっていたからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ツウ・ビック・ツウ・フェイルということにはならない!
―――――――――――――――――――――――――――――
 大手銀行の首脳のやったことは、なりふり構わない増資だった
のです。とくに額の大きさで目立ったのは、みずほホールディン
グス(HD)だったのです。みずほHD社長の前田晃伸氏は、竹
中大臣と一番激しく対立した人であったからです。
 みずほHDは2003年3月期には約2兆円の赤字決算になっ
ていたのです。そこで自己資本比率9%台を維持するために、国
内最大規模の優先株による1兆円の増資に踏み切ったのです。と
てつもない規模であるので、最初は実現不能といわれたのですが
取引先3500社が積極的に増資を引き受けて1兆円の増資は達
成されたのです。他の主要銀行も同様に増資を行い、竹中改革に
対して自衛手段を講じたのです。
 竹中金融担当相は、主要行のこうした動きに対して、『エコノ
ミスト』誌に次のようにコメントしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「金融システムの強化を目指し、昨年10月に『金融再生プロ
 グラム』を作った。そのなかに『資産査定の厳格化』『自己資
 本の充実』『コーポレートガバナンスの強化』を規定しており
 その枠組みのなかで、3月末決算に向け、目に見える形で銀行
 側がとった最初の行動が一連の資本増強策だ。それまでには考
 えられなかったことで、銀行が新たな努力を始めたという点で
 は、新しい変化として評価している。ただ、最初のアクション
 で終わるわけではなく、さらに銀行システム全体が健全な方向
 に進んで行くために、増資だけでなく、資産の厳格な査定、収
 益力のアップなどが必要になる」。
     ――『週刊エコノミスト』/2003年3月18日号
―――――――――――――――――――――――――――――
 大手銀行の首脳が国有化を恐れるのは、経営者の当然持つべき
企業防衛本能からだけではなく、銀行の事実上の倒産で不正会計
が発覚したりすると、経営者は刑事訴追され、収監される可能性
があることを長銀のケースで学習していたからです。それに株主
代表訴訟のこともあったのです。
 大手銀行の首脳の猛烈な反対で事実上棚上げになった税効果資
本の圧縮について竹中金融担当相は、次なる手として監査法人に
目をつけたのです。驚くべき執念です。監査法人は銀行が破綻し
た場合に多額の国家賠償を請求される立場であり、重要な利害関
係者ということになります。
 竹中氏は、奥山章雄・日本公認会計士協会会長に対し、「繰り
延べ税金資産の査定の厳格化」を要請したのです。ちなみに奥山
章雄氏は、金融再生プログラム(竹中プラン)を作成した金融庁
の「金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム」のメンバーのひ
とりなのです。
 奥山氏は、早速竹中氏の要請に基づいて、日本公認会計士協会
として、2003年2月25日、「主要行の監査に対する監査人
の厳正な対応について」という「会長通牒」を出したのです。そ
こには、次のように書かれていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 『金融再生プログラムー主要行の不良債権問題解決を通じた経
 済再生−』(平成14年10月30日金融庁)では、繰延税金
 資産の合理性の確認のため、また、資産査定や引当・償却の正
 確性、さらに継続企業の前提に関する評価については、外部監
 査人が重大な責任をもって厳正に監査を行うことを求めており
 ます。このため、日本公認会計士協会では、金融庁からの要請
 に基づき、『主要行の監査に対する監査人の厳正な対応につい
 て』を会長通牒として取りまとめ、主要行の監査人に通知いた
 しました。                ――山口淳雄著
     『りそなの会計士はなぜ死んだのか』/毎日新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 この「会長通牒」が2003年3月決算以降の監査法人の判断
を事実上拘束したことになるのです。そして、ターゲットは、り
そな銀行に絞られたのです。
 小泉政権における経済運営は、次の2つの柱を軸に展開された
のです。第1の柱は「国債は30兆円以上は発行しない」という
ことばに代表される超緊縮財政政策運営であり、第2の柱は「退
出すべき企業は市場から退出させる」ということばに代表される
企業の破綻処理推進なのです。
 小泉政権のこの政策について、最初から疑問視し、警鐘を鳴ら
していたのは、あの植草一秀氏です。彼は自分のブログに次のよ
うに書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私は小泉政権の発足時点から、「小泉政権の政策が実行されて
 ゆけば、日本経済が最悪の状況に向かうことは間違いない。金
 融恐慌も現実の問題になるだろう」と発言し続けた。権力迎合
 の殆どの付和雷同のエコノミストは、「改革推進で株価は上昇
 するし、経済もも明るい方向に向かう」と大合唱していた。
           ――UEKUSAレポート第10回より
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かに、小泉首相が国会で所信表明演説で政策方針を発表した
2001年5月7日から、日経平均株価はどんどん下がっていき
2003年4月28日には遂に7607円になってしまっていた
のです。これは1989年12月29日の史上最高値の5分の1
にまで下がったのです。これは明らかな政策の失敗といえると思
います。          ――[円高・内需拡大策/20]


≪画像および関連情報≫
 ●監査法人とは何か
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  監査法人とは、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監
  査又は証明を組織的に行うことを目的として、公認会計士法
  34条の2の2第1項によって、公認会計士が共同して設立
  した法人をいう。また、2008年4月1日以降、一定の財
  務要件や情報公開義務等を満たしている場合に監査法人の損
  害賠償責任額をその出資の額を上限とすることが認められた
  のである。これらの法人は有限責任監査法人を名称として用
  いなければならない(34条の3)。 ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

奥山章雄氏.jpg
奥山章雄氏
posted by 平野 浩 at 04:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 円高・内需拡大策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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