サブプライムローンを証券化すること――すなわち、優先劣後
構造――について、もう少し具体的に考えてみましょう。
添付ファイルの図を使って説明します。この図は、春山昇崋氏
の次の本に掲載されているものです。
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春山昇崋著/宝島社新書/270
『サブプライム後に何が起きているのか』
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15個(A〜O)のサブプライムローンで組成されているファ
ンドがあります。これらのサブプライムローンはそれぞれのリス
クに応じて3つに分けられ、X、Y、Zの3人が次のように所有
しています。X、Y、Zのそれぞれの保有部分は「トランシェ」
と呼ばれています。
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●X氏所有 1、2、3、4、5、6、7、8
利回り=1%
●Y氏所有 9、10、11、12
利回り=2%
●Z氏所有 13、14、15
利回り=6%
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X氏は、A〜Oまでのどのローンの利息が支払われた場合も8
人まで優先して受け取ることができます。しかし、優先権を持っ
ているので、利回りは1%と一番低いのです。
Y氏は、2番目に受け取る権利を持っていて、15人中9人以
上利息を払ってくれれば、利息は受け取れるのです。利回りは2
%となっています。
Z氏は、最後に――これを劣後という――受け取る権利を有し
ていて、もし、全員が支払ってくれれば利回りは最高の6%にな
ります。まさしくハイリスク・ハイリターンです。この場合、Z
氏は、X氏やY氏よりも多い信用リスクを負担しているので、そ
の分、高いリターンの可能性を有しているのです。
このようなファンド内での信用の移し替えを「優先劣後構造」
というのです。
このX氏、Y氏、Z氏の保有するトランシェは、証券化商品で
は、次のように呼ばれているのです。
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X氏のトランシェ ・・・・・ シニア
Y氏のトランシェ ・・・・・ メザニン
Z氏のトランシェ ・・・・・ エクイティ
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サブプライムローンの3分の1が破綻するという予測があるの
です。そうするとこのケースでは、X氏は当初の利益を享受でき
ますが、Y氏の受取りは半減し、Z氏は何ももらえないことにな
ります。しかし、2007年後半から2008年にかけて、X氏
の保有するトリプルAの部分でも大幅な価格の下落が起こってい
るのです。それにはいくつかの原因があります。
さて、X、Y、Zの3氏の持ち分のうち、X氏のトランシェは
トリプルAなので、世界中の投資家は競って購入したのです。こ
れに対してZ氏のトランシェは、リスクはきわめて高いが法外な
利回りがつけられているので、リスクの許容度のあるプロの投資
家の間では買う人は少なくないのです。
一番売れ残ってしまうのが、メザニン――Y氏のトランシェな
のです。どうしてかというと、トリプルAでもなく、利回りも中
途半端であるからです。
そこで、これらの売れ残りのメザニンを中心に集めて、もう一
回優先劣後構造の手法を使い、トリプルAを作り出して販売する
業者があらわれたのです。これが再証券化です。
添付ファイルの右側の図がそれをあらわしています。これは、
まさに料理の使い回しそのものです。売れ残ったケーキにトリプ
ルAというきれいなラップをつけて、新品のケーキとして店頭に
並べる――これとまったく変わらないと思います。
再証券化には大きな問題があります。しかし、春山昇崋氏は、
「証券化の歴史は不良債権の歴史である」とし、次のように述
べています。
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一見すると見苦しい不良債権を、魅力ある商品に仕立てて、投
資家に買ってもらわなければ、処理が進まない。これは悪意で
はなく、必要に迫られたギリギリの苦闘だったと思う。今は悪
事と思われることも、最初は良かれと思ってやったことがほと
んどなのだ。この言葉は今回の証券化バブルにも当てはまると
思う。証券化は常に、魅力を持たせる数々の努力がなされてき
た。標準化、均質化、格付け付与による高品質化−これら全て
は「臆病な投資家の資金を呼び込むための打ち出の小槌」とし
て働いた。 ――春山昇崋著/宝島社新書/270
『サブプライム後に何が起きているのか』
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証券化そのものはけっして「悪」ではない――このように春山
氏は主張しています。なぜなら、それは「リスクを適正に再配分
する優れた金融技術である」からです。しかし、行き過ぎた再証
券化は問題があります。あくまで再証券化は「適正に」行われな
ければならないのですが、とても適正に行われているとはいえな
いからです。
それに証券化商品にトリプルAを与えた格付け機関の責任は大
きいと思います。また、トリプルA格付けの前提となったモノラ
イン保険会社は、どのように判断して支払い保証を決めていたの
でしょうか。サブプライム問題が世界的なパニックに拡大した原
因は、証券化商品の問題だけでなく、モノライン保険会社、格付
け機関のあり方にもメスを入れる必要があります。
――[サブプライム不況と日本経済/12]
≪画像および関連情報≫
●サラリーマンのマネー・ブログ/証券化は悪にあらず
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今日のサブプライムローン問題がここまで深刻になった背景
には、アメリカの住宅バブルやローン自体の商品性に問題が
あったことはもちろんですが、証券化が問題をさらに加速さ
せたという意見も挙がっています。アメリカのサブプライム
ローンは、RMBSとして証券化された後に他の金銭債権と
プールされ、さらにCDO――債務担保証券として再証券化
されて幅広く売られました。
http://ebisumoney.blog25.fc2.com/blog-entry-69.html
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●図の出所/春山昇崋著/宝島社新書/270
『サブプライム後に何が起きているのか』
2008年08月29日
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