2008年08月26日

●「リチャード・クー氏と麻生幹事長」(EJ第2397号)

 今回のサブプライム問題のテーマは、リチャード・クー氏の理
論に基づいて書いています。しかし、このクー氏――橋本政権や
小渕政権のときは、休日の政治番組には毎回のようにテレビに登
場していたのですが、小泉政権以降はほとんどテレビに登場して
いないのです。どうしてでしょうか。
 それは政権与党である自民党――というより財務省一派という
べきかもしれませんが――に嫌われているからです。あってはい
けないことですが、日本のテレビは、政権与党から何らかの圧力
があると、与党の基本政策に反対の意見を持つ人を目立たないよ
うに少しずつテレビから遠ざけていくのです。リチャード・クー
氏もその一人であると思います。
 そのリチャード・クー氏が久しぶりにマスコミに登場したので
す。2008年8月23日の朝日新聞の朝刊にです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  財政再建は企業の投資意欲戻ってから
  野村総研チーフエコノミスト/リチャード・クー氏に聞く
      ――2008年8月23日付/朝日新聞朝刊より
―――――――――――――――――――――――――――――
 今回の記事の特徴は、リチャード・クー氏が自民党幹事長であ
る麻生太郎氏の政策ブレーンとして紹介されている点です。現在
政府与党は、先の参院選の大敗北を受けて、選挙目当ての感もあ
る大型経済政策を打ち出そうとしています。その先頭に立ってい
るのが麻生幹事長であり、その理論を支えるブレーンがクー氏で
ある――そういう事情から新聞に登場したものと思われます。
 「解説」の冒頭には次のようにあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小泉構造改革路線が岐路にある。方向転換の旗振り役は自民党
 の麻生幹事長だ。麻生氏は、自らが党政調会長や総務相を務め
 た小泉政権時代の経済路線について一定の評価をする一方、小
 泉元首相のブレーン、竹中平蔵元経済財政担当相を「全く意見
 が違う」と切り捨て、景気対策の必要性を唱えている。こうし
 た考えを支えるのが親交が深いリチャード・クー氏。財政再建
 より景気回復優先の政策を主張するのも、クー氏が唱える「バ
 ランスシート不況論」が背景にある。
       ――2008年8月23日付/朝日新聞朝刊より
―――――――――――――――――――――――――――――
 何週間か前の政治番組に竹中平蔵氏が登場して、麻生氏が幹事
長になったことに対し、「あの方は改革とは対極にいる人」と批
判していたのを覚えています。同じ自民党にいて、よくよく意見
が合わなかったものと思われます。
 ところで、同じ8月23日の日本経済新聞の第一面に「株譲渡
益/高齢者、500万円以下非課税」のタイトルの次の記事が出
ています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 金融庁が月内にも財務省に提出する2009年度の税制改正要
 望案が22日分かった。焦点の証券税制は高齢者の株式投資を
 対象に、500万円以下の譲渡益と、100万円以下の配当金
 にかかる税金(現行10%)をゼロにするよう要望する方向で
 ある。原則的にすべての個人投資家を対象に、投資額で100
 万円までの配当を非課税とすることも求める。個人金融資産が
 潤沢な高齢者を中心に手厚い優遇措置を講じ、東京市場の活性
 化を促す。 ――2008年8月23日付、日本経済新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 金融庁のこの「税制改正要望案」の提案者は、ほかならぬ麻生
幹事長なのです。そして、それを支えるのがリチャード・クー氏
であることが、朝日新聞・田伏潤記者の「日本のバランスシート
不況は今でも続いているのですか」に対するクー氏の答え方の中
にあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 今はだいぶ改善されたが、金利はかなり低いのに民間の資金需
 要が出てこない。十数年間、借金返済に追われた企業経営者は
 「二度と借金なんかするもんか」という心境になっている。こ
 れを元に戻すには投資減税が必要だ。例えば、今後3年間のう
 ちに設備投資をするなら、その投資に対して通常の償却期間の
 半分でいいとか、3分の1でいいとか、何かきっかけをつくる
 べきだろう。           ――リチャード・クー氏
       ――2008年8月23日付/朝日新聞朝刊より
―――――――――――――――――――――――――――――
 麻生幹事長は、クー氏のいう「投資減税」を実施しようとして
いるのです。しかし、財務省は反対するでしょうから、実現する
かどうかは福田首相の判断にかかっているといえます。
 それでは、財政再建はどうするのかという点に関して、クー氏
は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 財政再建に手をつけても、景気が崩れないことが前提になる。
 民間の資金需要がない時に無理やり財政再建を進めても景気が
 悪化しかねない。そうなれば税収も落ち込み、事態は雪だるま
 式に悪化する。民間企業に資金需要を発揮する動きがみえ、そ
 れが金利にも反映されてきたら、財政再建に踏み込むべきだ。
 その順番でやらないと絶対失敗する。
       ――2008年8月23日付/朝日新聞朝刊より
―――――――――――――――――――――――――――――
 最近は何かというと「財源はどうする」と言葉が一人歩きして
いるように思えます。財政出動などといおうものなら、これ以上
国の借金を増やすのかという大合唱になる。そういう方はぜひ次
の記事を読んでいただきたいものです。
―――――――――――――――――――――――――――――
http://electronic-journal.seesaa.net/category/5565085-1.html 
―――――――――――――――――――――――――――――
         ――[サブプライム不況と日本経済/09]


≪画像および関連情報≫
 ●リチャード・クー氏について
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  このリチャード・クーというエコノミストは、どういう人物
  なのでしょうか。一般的にはリチャード・クー氏といえば、
  伝統的な財政政策を唱えるケイジアン――ケインズ政策信奉
  者として知られています。しかし、最近の日本では、ケイジ
  アンは時代遅れのエコノミストとして見られるようになって
  おり、クー氏についてもそういう評価があります。
      http://intec-j.seesaa.net/article/41111392.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

麻生幹事長.jpg
posted by 平野 浩 at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | サブプライム不況と日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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