2004年の米国――この年は住宅価格が異常なほど高騰する
起点に当たっていたのです。こういうときに次のような話を持ち
かけられたらどうでしょうか。
―――――――――――――――――――――――――――――
現在住宅価格が上昇しつつあります。現在金利が下がってお
り、住宅を購入するなら今がチャンスです。少しでも早く住宅
を手に入れておくと、それで財産形成ができるのです。
住宅価格は年率10%ずつ上がっていきます。頭金ゼロでロ
ーンが組めます。仮に2000万円の住宅であれば、次の年は
2200万円、その次の年は2400万円――わずか2年間で
400万円――資産の20%のエクイティ――自分の持ち分を
居ながらにして手にすることができます。
このローンは少し金利が高いのですが、住宅価格が上がって
いますから、それで十分カバーすることができます。それに最
初の○○年間(2〜3年間)は優遇金利の適用があるので金利
は安いですし、それでも支払いが困難であるなら、金利のみ支
払うことも可能です。
現在住宅価格は上昇しており、2〜3年後には資産の20%
のエクイティを十分取得できます。20%のエクイティがある
と信用力が増すので、金利が有利なプライムローンに切り替え
ることを受けることが可能です。「アメリカの住宅価格は70年
間下がったことはない」とグリーンスパンFRB議長もいってい
るのです。住宅を手に入れるとしたら今をおいてありません。ま
ず住宅を確保することです。
―――――――――――――――――――――――――――――
どうでしょう。これがサブプライムローンのセールストークで
す。良いことづくめの話です。頭金なしで住宅が購入できて、最
初の数年間は優遇金利、住宅価格は上がっているので、数年後に
は金利が低いプライムローンに切り替えられる――このようにい
われれば、このさい購入しようかという気持ちになります。まし
て、米国の住宅ローンは昨日のEJで述べたように、ノンリコー
スローンであって、いざというときは「リターン・ザ・キー」を
すれば負債は残らないのです。やってみる価値はあると考えても
おかしくはないと思うのです。
しかし、すべては住宅価格が上がり続ければの話です。住宅価
格が大きく上昇すれば、当該住宅を転売してローンを返済し、さ
らに売買差益も得ることも可能なのです。
企業の資金需要がなくなり、行き場を失った資金は少しでも利
益が出るところに集まるものです。現在、巨額な資金が原油市場
に集まっているのと同じです。そういうわけで、2004年〜2
006年までの2年間に、実に1兆ドルの資金がこのサブプライ
ム市場に流れ込んだのです。
このサブプライム市場の狂乱について、リチャード・クー氏は
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
そこで、なんと二年間で一兆ドル(邦貨換算100兆円以上)
の資金がこのサブプライムのマーケットに注ぎ込まれたのであ
る。従来、細々とやっていたサブプライム市場にはそれなりの
規律とインフラがあったのだが、一兆ドルもの資金が流れ込ん
できたために、それらの規律は完全に押し流されてしまった。
質などは無視して、とにかく量を確保しようという雰囲気が業
者間に蔓延していった。なかには、借り手の所得も資産も過去
の返済履歴も何も調べないまま、とにかくローンを押しっけて
しまおうという荒っぼい連中も大勢登場した。本来であれば、
家など持てないような人にまでサブプライムローンで家を買わ
せ、またこの種の買い手が現れたことで住宅市場はさらに過熱
し続けることになったのである。 ――リチャード・クー著
『日本経済を襲う二つの波/サブプライム危機とグローバリ
ゼーションの行方』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
EJ第2392号の添付ファイルのグラフを見ていただけばわ
かるように、実際に住宅価格は2004年6月から急上昇をはじ
め、2006年6月にピークに達し、あとは自己の重さに耐えき
れず、一挙に暴落してしまったのです。
ところでサブプライムローンには次の2つの種類があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.変動金利住宅ローン
2.固定金利住宅ローン
―――――――――――――――――――――――――――――
固定金利ローンは、毎月の返済額が決まっているので、それが
支払えない人は申し込んできませんが、変動金利ローンの方は問
題があるのです。購入の決断をさせるために、最初の数年間は優
遇金利を設けたり、返済額を低く抑えたりしているからです。
こういうローンでは、数年後に金利が上がる時期にローンが支
払えなくなる可能性が高いからです。添付ファイルのグラフは、
変動金利住宅ローンの延滞率をあらわしたものです。サブプライ
ムローン、プライムローンともに2006年以降に延滞率が急上
昇しています。
変動金利のサブプライムローン(右目盛)を見ると、既に全体
の20%以上が延滞していますが、これらすべてデフォルトして
いると考えてよいと思います。
しかし、プライムローン(左目盛)の方も2006年から延滞
率は急増しており、全体の5%を超えています。サブプライムロ
ーンに比べれば低いようですが、プライムローンの場合は市場規
模が違うので、その分を勘案すると、サブプライムローンの延滞
率20%とほぼ同じレベルになると考えられます。
2007年第4四半期の差し押さえ件数を見ると、全体の54
%がサブプライムローンであり、46%はブライムローンなので
す。このように考えると、これは住宅ローン全体の問題であると
考えるべきです。 ――[サブプライム不況と日本経済/06]
≪画像および関連情報≫
●サブプライムローン焦げ付き急増/読売新聞
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「魔法のつえで住宅価格を10%上昇させられれば、この問
題は解決する」米連邦準備制度理事会(FRB)のアラン・
グリーンスパン前議長は2007年3月15日、フロリダ州
での講演で、サブプライムローン問題の本質は、住宅価格の
下落にあると指摘した。このサブプライムは住宅投資ブーム
に乗ってここ数年で急膨張した。住宅ローン全体に占めるシ
ェア(占有率)は、2000年は2・8%に過ぎなかったが
現在は13・6%に達し、融資残高は約1兆3000億ドル
に上っている。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20070319mh09.htm
―――――――――――――――――――――――――――
●サブプライムローンとプライムローンの延滞率
リチャード・クー著/『日本経済を襲う二つの波/サブプラ
イム危機とグローバリゼーションの行方』/徳間書店刊より
2008年08月21日
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