で破綻してしまう状況を見て、余剰資金を持つ銀行が不安を感じ
資金を抱え込んで市場に回さなくなる――これが現在の欧米の金
融市場の状況なのです。
インターバンク市場の参加者である銀行がお互いに疑心暗鬼に
なり、相手を信用しなくなっているわけです。こういうリスクの
ことを「カウンターパーティーリスク」といいます。
これは決済システムにとって大変深刻な状況なのです。これに
よってインターバンク市場の金利が通常よりも高めに設定される
ようになっていますが、それでも資金を持つ銀行が資金を流さな
いと、経済の血流が止まってしまうのです。
そうなってしまうと大変なので、各国の中央銀行は必死になっ
て資金を供給しています。中央銀行は「最後の貸し手」といわれ
ますが、資金不足になっている銀行は中央銀行から直接借り入れ
することができるのです。しかし、中央銀行が乗り出してくるこ
とは異常であり、インターバンク市場が機能しなくなっているこ
とを意味しているのです。こういう状態が今のところ見られない
のは東京市場だけなのです。
こんな異常事態がいつからはじまっているのかというと、20
07年の秋からなのです。そして今も資金供給は続いているので
異常な状態が継続していることになります。どうして、こんな事
態になってしまったのでしょうか。
もちろん最大の原因はサブプライム問題です。これによって、
多くの金融商品の価格が暴落し、各銀行にすさまじい損失が発生
しているのです。そして、何よりも困ることは、お互いに相手が
どのくらいの損失を負っているかがわからないことなのです。そ
のため疑心暗鬼が生まれるのです。
2007年秋から欧米の大手銀行は、いわゆるソブリン・ウェ
ルス・ファンド――政府系投資ファンドから続々と資本投入を受
けているのです。こんなことは珍しいことです。
ところで、ソブリン・ウェルス・ファンド/SWFというのは
何でしょうか。
ソブリン・ウェルス・ファンドというのは、政府が出資する投
資ファンドのことであり、政府系投資ファンドと呼ばれます。石
油や天然ガスによる収入、外貨準備高を原資とすることが多いの
で、近年、世界的な資源価格急騰によって、資源供給国の割合が
増えつつあります。なお、SWFは、次の言葉の頭文字です。
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ソブリン・ウエルス・ファンド
―Sovereign Wealth Fund/SWF
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サブプライムローンを組み込んだ証券化商品の市場が急激に収
縮したことにより、欧米の銀行は大幅な損失引当金の計上を迫ら
れ、増資が必要になっているのです。SWFはその増資要請に積
極的に応じているのです。
SWFの中で最も大きいのは、ADIA――アブダビ投資庁で
すが、シティバンクは2007年12月にADIAから資本投入
を受けているのです。これによって、それまで苦境が伝えられて
きたシティバンクの情勢は一息ついたかたちとなり、市場には一
時安心感が広がったのです。
しかし、シティバンクは、今年になってADIAから2度目の
資本投入を受けようとしているのです。問題を解決するために資
本投入を受けるのですから、当然一回で済ますべきですが、それ
が2回となると、予測が甘かったことになってしまいます。そう
なると、他の銀行がお金を回すのをためらい、インターバンク市
場が機能しなくなってしまうのです。
このシティバンクに続いてサブプライム問題への関与が大きい
といわれるUBS――スイスに本拠を置く世界有数の規模を持つ
名門金融グループ――このUBSがシンガポールとアラブのSW
Fから資本投入を受けることを発表しています。
しかも、シティバンクが支払う利息は11%、UBSは9%と
いうのです。何しろシティバンクやUBSといえば、名門中の名
門金融機関で超一流ブランドです。それほどの銀行がこのように
高い金利を支払ってやっと資本調達ができるということは、それ
がいかに深刻な事態であるかを物語っています。
これは実は日本の銀行にとってチャンスなのです。日本の3大
メガバンク――三井住友FG、みずほFG、三菱UFJ・FGは
サブプライム問題を逆手にとって、投資と融資の面で欧米市場で
存在感を高めようとしているのです。
今年に入って、みずほコーポレート銀行は、米証券メリルリン
チに1300億円を投資しているし、三井住友銀行もこの6月に
英銀バークレイズへ1000億円の出資を決めているのです。ま
た、三菱FGJ・FGについては、2008年8月13日の日本
経済新聞が次のように報じているのです。
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三菱東京UFJ銀行は12日、連結子会社でニューヨーク証券
取引所に上場している米金融持ち株会社ユニオンバンカル・コ
ーポレーション(UNBC、米カリフォルニア州)を、TOB
(株式公開買い付け)で完全子会社化する、と発表した。三菱
UFJフィナンシャル・グループで保有する約65・4%を除
く全株式を買い付ける。買い付け金額は約30億ドル(約33
20億円)となる見通し。完全子会社化で意思決定の迅速化を
図り、米国での事業展開を強化するのが狙いだ。
――2008.8.13/日本経済新聞より
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日本の大手銀行は、こういう出資だけでなく、欧米の銀行が貸
し出しにも慎重になっているのを受けて、本業の融資でも積極的
に行い、海外金融市場において存在感を高めているのです。
来週は、すべての元凶であるサブプライム問題にメスを入れよ
うと思います。 ――[サブプライム不況と日本経済/02]
≪画像および関連情報≫
●ソブリン・ウェルス・ファンドについて
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各国のSWFは資源による収入が多く、資源を持たない国の
場合は外貨準備や年金を運用している。日本の場合、後者に
あたる。いわば元手は借金で運用に伴うリスクは国民にある
という構図が成り立つ。財務省は反対している。現在100
兆円に膨らんだ外貨準備の運用先として検討されているが、
外貨準備の大半は米国債であり、外貨準備の運用をSWFに
切り替えた場合の債券市場に与える影響は大きい。150兆
円に上る年金積立金の一部運用も検討されているが年金積立
金管理運用独立法人(GPIF)は人件費削減対象で高給の
ファンドマネージャーの採用は困難でSWFの導入には体制
見直しの可能性もある。SWFは資源国以外の先進国では現
在のところ少数派である。 ――ウィキペディア
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