2008年08月15日

●「高まるカウンターパーティーリスク」(EJ第2390号)

 社員1万4000人を擁する大企業ベア・スターンズが2日間
で破綻してしまう状況を見て、余剰資金を持つ銀行が不安を感じ
資金を抱え込んで市場に回さなくなる――これが現在の欧米の金
融市場の状況なのです。
 インターバンク市場の参加者である銀行がお互いに疑心暗鬼に
なり、相手を信用しなくなっているわけです。こういうリスクの
ことを「カウンターパーティーリスク」といいます。
 これは決済システムにとって大変深刻な状況なのです。これに
よってインターバンク市場の金利が通常よりも高めに設定される
ようになっていますが、それでも資金を持つ銀行が資金を流さな
いと、経済の血流が止まってしまうのです。
 そうなってしまうと大変なので、各国の中央銀行は必死になっ
て資金を供給しています。中央銀行は「最後の貸し手」といわれ
ますが、資金不足になっている銀行は中央銀行から直接借り入れ
することができるのです。しかし、中央銀行が乗り出してくるこ
とは異常であり、インターバンク市場が機能しなくなっているこ
とを意味しているのです。こういう状態が今のところ見られない
のは東京市場だけなのです。
 こんな異常事態がいつからはじまっているのかというと、20
07年の秋からなのです。そして今も資金供給は続いているので
異常な状態が継続していることになります。どうして、こんな事
態になってしまったのでしょうか。
 もちろん最大の原因はサブプライム問題です。これによって、
多くの金融商品の価格が暴落し、各銀行にすさまじい損失が発生
しているのです。そして、何よりも困ることは、お互いに相手が
どのくらいの損失を負っているかがわからないことなのです。そ
のため疑心暗鬼が生まれるのです。
 2007年秋から欧米の大手銀行は、いわゆるソブリン・ウェ
ルス・ファンド――政府系投資ファンドから続々と資本投入を受
けているのです。こんなことは珍しいことです。
 ところで、ソブリン・ウェルス・ファンド/SWFというのは
何でしょうか。
 ソブリン・ウェルス・ファンドというのは、政府が出資する投
資ファンドのことであり、政府系投資ファンドと呼ばれます。石
油や天然ガスによる収入、外貨準備高を原資とすることが多いの
で、近年、世界的な資源価格急騰によって、資源供給国の割合が
増えつつあります。なお、SWFは、次の言葉の頭文字です。
―――――――――――――――――――――――――――――
      ソブリン・ウエルス・ファンド
     ―Sovereign Wealth Fund/SWF
―――――――――――――――――――――――――――――
 サブプライムローンを組み込んだ証券化商品の市場が急激に収
縮したことにより、欧米の銀行は大幅な損失引当金の計上を迫ら
れ、増資が必要になっているのです。SWFはその増資要請に積
極的に応じているのです。
 SWFの中で最も大きいのは、ADIA――アブダビ投資庁で
すが、シティバンクは2007年12月にADIAから資本投入
を受けているのです。これによって、それまで苦境が伝えられて
きたシティバンクの情勢は一息ついたかたちとなり、市場には一
時安心感が広がったのです。
 しかし、シティバンクは、今年になってADIAから2度目の
資本投入を受けようとしているのです。問題を解決するために資
本投入を受けるのですから、当然一回で済ますべきですが、それ
が2回となると、予測が甘かったことになってしまいます。そう
なると、他の銀行がお金を回すのをためらい、インターバンク市
場が機能しなくなってしまうのです。
 このシティバンクに続いてサブプライム問題への関与が大きい
といわれるUBS――スイスに本拠を置く世界有数の規模を持つ
名門金融グループ――このUBSがシンガポールとアラブのSW
Fから資本投入を受けることを発表しています。
 しかも、シティバンクが支払う利息は11%、UBSは9%と
いうのです。何しろシティバンクやUBSといえば、名門中の名
門金融機関で超一流ブランドです。それほどの銀行がこのように
高い金利を支払ってやっと資本調達ができるということは、それ
がいかに深刻な事態であるかを物語っています。
 これは実は日本の銀行にとってチャンスなのです。日本の3大
メガバンク――三井住友FG、みずほFG、三菱UFJ・FGは
サブプライム問題を逆手にとって、投資と融資の面で欧米市場で
存在感を高めようとしているのです。
 今年に入って、みずほコーポレート銀行は、米証券メリルリン
チに1300億円を投資しているし、三井住友銀行もこの6月に
英銀バークレイズへ1000億円の出資を決めているのです。ま
た、三菱FGJ・FGについては、2008年8月13日の日本
経済新聞が次のように報じているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 三菱東京UFJ銀行は12日、連結子会社でニューヨーク証券
 取引所に上場している米金融持ち株会社ユニオンバンカル・コ
 ーポレーション(UNBC、米カリフォルニア州)を、TOB
 (株式公開買い付け)で完全子会社化する、と発表した。三菱
 UFJフィナンシャル・グループで保有する約65・4%を除
 く全株式を買い付ける。買い付け金額は約30億ドル(約33
 20億円)となる見通し。完全子会社化で意思決定の迅速化を
 図り、米国での事業展開を強化するのが狙いだ。
         ――2008.8.13/日本経済新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の大手銀行は、こういう出資だけでなく、欧米の銀行が貸
し出しにも慎重になっているのを受けて、本業の融資でも積極的
に行い、海外金融市場において存在感を高めているのです。
 来週は、すべての元凶であるサブプライム問題にメスを入れよ
うと思います。  ――[サブプライム不況と日本経済/02]


≪画像および関連情報≫
 ●ソブリン・ウェルス・ファンドについて
  ―――――――――――――――――――――――――――
  各国のSWFは資源による収入が多く、資源を持たない国の
  場合は外貨準備や年金を運用している。日本の場合、後者に
  あたる。いわば元手は借金で運用に伴うリスクは国民にある
  という構図が成り立つ。財務省は反対している。現在100
  兆円に膨らんだ外貨準備の運用先として検討されているが、
  外貨準備の大半は米国債であり、外貨準備の運用をSWFに
  切り替えた場合の債券市場に与える影響は大きい。150兆
  円に上る年金積立金の一部運用も検討されているが年金積立
  金管理運用独立法人(GPIF)は人件費削減対象で高給の
  ファンドマネージャーの採用は困難でSWFの導入には体制
  見直しの可能性もある。SWFは資源国以外の先進国では現
  在のところ少数派である。      ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

アブダビ投資庁本部ビル.jpg
posted by 平野 浩 at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | サブプライム不況と日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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