2008年08月13日

●「米国が日本に仕掛けた3つの罠」(EJ第2388号)

 日本は世界第2位の経済大国といわれています。しかし、国民
の暮らしは経済大国の割にはけっして良いとはいえないのです。
それは、同じように第2次世界大戦の敗戦国であるドイツと対照
的であるといえます。なぜなら、ドイツの国民の方が日本よりも
はるかに良い暮らしをしているからです。
 ドイツと日本の間には通貨に対する認識の相違があります。ド
イツを含むヨーロッパ諸国では、金本位制の時代には金を外貨準
備として保有することが原則だったのです。第2次世界大戦前の
ヨーロッパでは、英国のポンドが準備通貨として圧倒的な地位を
確立していたのです。
 第2次世界大戦後しばらくしてからドイツは自国通貨のマルク
を準備通貨として大事に育てていたのです。自国通貨が準備通貨
である意味をドイツはよく知っていたのです。
 これに対して日本は、純債権大国になりながら、準備通貨とし
ては円ではなく、ドルを保有したのです。日本では歴史的に「在
外正貨」という方針をとっており、金を国内に持ち帰えらなかっ
たし、外貨を円に交換して持ち帰ることもしなかったのです。
 もうひとつ、ドイツを含むヨーロッパと日本をはじめとするア
ジアでは通貨の考え方は次のように異なるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ヨーロッパ ・・・ 製品やサービス等の購入手段
    アジア ・・・ 通貨こそは蓄財の手段である
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本はあくまで輸出立国の経済モデルにこだわっており、日本
経済は外需依存体質から抜け出せないのです。しかし、こういう
考え方に立脚している限り、日本は米国の植民地的ポジションか
ら脱却できず、国民の暮らしは豊かにならないのです。
 これについて、経済同友会元副代表の三国陽夫氏は次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 一方、(ニクソン・ショック以後も)日本はアメリカに対し円
 での支払いを求めない。円で支払いを求めると、アメリカの輸
 入業者が外国為替市場でドルを売って円を買い求める。そうな
 ると、日本はすでに輸出超過のためドルが大量に供給されてお
 り、円相場が切り上がり、輸出・採算が悪化する。しかも、日
 本が保有するドルは、アメリカ以外の国への支払いにも使える
 し、運用も有利になるため、日本は多額のドルを持つことに問
 題があるとは考えなかった。実際はアメリカの買い物の支払い
 代金を立て替えることになり、その資金繰りに追われることに
 なるが、日本はそれに気がつかない。決済上はアメリカがドル
 を支払い、日本はそのドルを受け取る。しかし、このドルは、
 ドルのままでは日本国内の経済活動には使えない。したがって
 日本はアメリカにドルを貸し置くしかなく、巨大赤字国アメリ
 カは巨大黒字国日本からいくらでも輸入することが可能になる
 のである。     ――三国陽夫著/文春新書/481
        『黒字亡国/対米黒字が日本経済を殺す』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 既出の副島隆彦氏によると、米国は日本に対し、次の3つの罠
にはめて、抜け出せないようにしていると指摘しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
           1.超低金利
           2.円高攻撃
           3.財政赤字
―――――――――――――――――――――――――――――
 まず、米国は日本との金利差をつねに3%以上開かせるように
しています。こうしておけば、自動的に日本から米国に資金が流
れるからです。
 しかし、現在米国は深刻なサブプライム・ローンによる不況に
襲われつつあり、金利を下げざるを得ないのです。しかし、あま
り下げてしまうと、インフレの心配があるし、日米の金利差も小
さくなってしまうのです。
 輸出代金をドルで受け取り、それを円に替えて日本に持ち帰ろ
うとすると、上記の三国氏の指摘の通り円高になるし、米国も何
かことがあると円高攻撃を仕掛けてくる――副島氏によると、日
米で次の暗黙の了解があるそうです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1ドルは110円を中心に上下10円の幅で動く
―――――――――――――――――――――――――――――
 もうひとつ、副島氏は「日本の財政赤字によってドル暴落が回
避されている」と指摘しています。これについて、副島氏は次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の財政破綻状態を考える上でしっかり押さえるべきは「日
 本の公的債務残高(財政赤字)が積み上がっているために、ド
 ル暴落が回避されている」という事実である。日本の公的債務
 残高は対GDP比で200%を超えている。現在のGDPは実
 質で420兆円ぐらいだから、880兆円の中央政府(日本財
 務省)の分の赤字国債発行高のちょうど2倍になっているだか
 ら200%である。そのために、資金の国際的な移動の面だけ
 から見た場合は、日米間の国際収支不均衡(ワールド・トレイ
 ド・インバランス)の拡大が、かえって抑制されているのであ
 る。だからドル暴落が回避されているのである、という厳然た
 る事実である。         ――副島隆彦著/徳間書店
       『ドル覇権の崩壊/静かに恐慌化する世界』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、「金の戦争」で敗れた米国は今後どうなっていくので
しょうか。それは日本にも大きな影響があります。
 47回にわたって連載した「金の戦争」は今回で終了すること
にします。明日からは、これからの米国経済はどうなっていくの
か――日本との関連でとらえます。[金の戦争/47/最終回]


≪画像および関連情報≫
 ●準備通貨とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  準備通貨(じゅんびつうか)は、各国政府もしくは金融当局
  の外貨準備において相当量を占める通貨を指す。準備通貨高
  は石油や金のような国際間で取引される商品の価格に大きな
  影響を与える。近年では特にアジア諸国が自国通貨のレート
  を下げて輸出競争力を高めるため、およびアジア通貨危機の
  ような事態に備えるために外貨準備高を引き上げる傾向にあ
  る。準備通貨は発券国の国力を考慮して選択されるが、その
  変遷には長い時間がかかる。     ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

「ドル覇権の崩壊/副島隆彦著」.jpg
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 金の戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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