2008年08月07日

●「金の戦争を終わらせる鐘の音」(EJ第2384号)

 1999年9月26日のことです。ワシントンにおいて、ヨー
ロッパの14の中央銀行が「金に関するワシントン合意」を宣言
したのです。これは何のための合意なのでしょうか。
 14の中央銀行とは次の国の中央銀行です。これにECB――
ヨーロッパ中央銀行が加わって15の銀行になります。
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    1.オーストリア     8.ドイツ
    2.イタリア       9.スペイン
    3.フランス      10.イギリス
    4.ポルトガル     11.フィンランド
    5.スイス       12.オランダ
    6.ベルギー      13.アイルランド
    7.ルクセンブルグ   14.スウェーデン
―――――――――――――――――――――――――――――
 「ワシントン合意」の内容は次のようなものなのです。一見す
ると、金の売却を規制する合意のようです。
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 1.参加15の中央銀行は参加国の金売却について今後の売
   却量を合計で年間400トンまでとし、参加中央銀行は
   5年間で2000トンを上限とする。
 2.参加15の中央銀行は、参加中央銀行が今まで行ってき
   たリース市場――金の貸出市場への貸出量を、今後は増
   加させずに現状の水準を上限とする。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1999年末時点で、この15銀行の所有する金は1万594
1トンとされています。注目すべきは、スイスがこの合意に入っ
ていることです。スイスはこの時点で金をまったく売っていない
のに参加しているのです。実はスイスは2000年に入るや、憲
法を改正してまで金を放出するのです。
 もうひとつの注目点は、米国が入っていないことです。「ワシ
ントン合意」と銘打ちながらなぜ米国が参加していないのでしょ
うか。文書には一応次の前提は入っているのですが、いまひとつ
釈然としないものがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
  アメリカ、日本、IMF、BISの同意のもとに・・・
―――――――――――――――――――――――――――――
 既出の鬼塚英昭氏は、米国が加わらなかったことについて、次
のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 どうしてアメリカが加わらなかったのか。私は幾度も書いた。
 この1999年9月の時点でアメリカは金を持っていなかった
 からである。「金の戦争」で敗北に次ぐ敗北を強いられていた
 金デリバティブの戦士たちは、この「金の戦争」を終わらせる
 鐘の音がワシントンから鳴り響くのを、ウォール街で聞いたの
 である。各国の中央銀行は底をつきかけた金の保有を金デリバ
 ティブの戦士たちに伝えたのである。
     ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解ら
            /金の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 鬼塚氏はここで大変なことをいっています。米国は金を持って
いないというのです。「金の戦争」で敗北に次ぐ敗北を強いられ
て、金を失ったというのです。それどころか、米国は各国から預
かっている金まで手をつけた疑いもあるのです。
 もうひとつ、この「ワシントン合意」は、それまで中央銀行が
行ってきた「金のリース」を認めたということです。それまで各
国とも正式に中央銀行の金の貸し出しを発表していなかったので
す。したがって、この合意は中央銀行の金の貸し出しの問題を広
く世界に知らしめたことにもなるのです。
 金には「リアルの金」と「バーチャルの金」があります。前者
は、中央銀行の金であり、後者はCOMEXに溢れる金のことで
す。COMEXでは、1日に800トンから1000トンの金が
売買されていたのです。そのバーチャルの金がヘッジされ、ヘッ
ジファンドの中に組み入れられて、巨大金デリバティブが形成さ
れていたのです。
 ここで「金の戦争」の構図をもっと明確にしてみる必要がある
と思います。戦争で対峙する一方は、もちろん米国の銀行、証券
会社です。彼らはウォール街で金ヘッジファンドにより各種のデ
リバティブをやっていたのです。
 彼らのバックには、財務省、IMF、FRBなど、米国そのも
のがついているのです。これら国際通貨体制を支えるバックグラ
ウンドとして、ロックフェラー財閥があるのです。
 さて、もう一方は、ロンドン、チューリッヒの国際通貨マフィ
ア――デル・バンコ一族とここまで書いてきています。具体的に
はヨーロッパをベースとするロス・チャイルド財閥ということに
なると考えられます。つまり、ロックフェラー財閥対ロス・チャ
イルド財閥の対決の構図――2大勢力の激突の構図です。
 米国は、1944年に発足したブレトンウッズ体制――ドル・
金本位制が崩壊したあと、1971年のニクソン・ショックを契
機にドル・石油本位制に移行し、ドルを基軸通貨とする通貨体制
を長年維持してきたのです。
 そういう米国のドル・石油本位制に対して、ヨーロッパのデル
・バンコ一族が金で米国に戦争を仕掛けたのです。これが「金の
戦争」なのです。
 これまで見てきたように、金の戦争によって金デリバティブの
戦士たち――米国の銀行や金融機関およびヘッジファンドは、敗
北に敗北を重ね、20世紀の終わりには限界に達しつつあったの
です。そして、この「金の戦争」を終わらせる鐘の音が「ワシン
トン合意」であると、鬼塚英昭氏はいうのです。
 そういう意味で「ワシントン合意」をもう一度慎重に見直す必
要があります。            ―[金の戦争/43]


≪画像および関連情報≫
 ●ゴールド・セッション/アンディ・スミス氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「ワシントン合意」の内容は「本来なら不可能なはず」のも
  ものだった。それは金市場にとっては「強気な内容」であり
  (金価格が上昇に向かい始めていた)タイミングの良さもあ
  って、非常に大きな効果をあげた。「公的売却の不透明さ」
  への怖れが消えたことによって、金の「現在価値」が大幅に
  上昇した。しかし、まだ不明な点は残されている。「今後5
  年間で2000トン以内」の売却枠には、英国とスイス以外
  からの売却の余地が残されている。
  http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Kaede/2764/gohkon.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

鬼塚英昭の本.jpg
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 金の戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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