1980年1月の「1オンス=850ドル」の最高値をつけた
金は、その後実に20年間にわたって下がり続けるのです。
1982年から普通株式が上昇相場に転じます。そして、ダウ
・ジョーンズ指数は800ポイントから1万1000ポイントま
で実に140%も上昇します。
その後、1987年10月の暴落を経験したものの、FRBの
ポール・ボルカー議長の積極的な金融政策によって、株価は間も
なく復調するのです。
このポール・ボルカーFRB議長――金が史上最高値をつけた
1979年に就任したのです。1981年には米国のインフレ率
は頂点に達したのですが、その14%のインフレ率を3〜4%に
下げることに成功しているのです。さらに債券利回りも長期国債
はピーク時の15%から6%を割り込む水準に安定させるなどの
手腕を発揮し、1987年に後任のアラン・グリーン・スパンに
FRB議長を譲っています。
それでは、金価格はなぜ低下したのでしょうか。その原因とし
ては、一般的には次の5つが上げられています。
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1.各国の金融機関が金を売却したこと
2.世界経済がデフレ経済になっている
3.株式市場が好調で、金より魅力あり
4.各国中央銀行による金売却と貸出し
5.金保有者の人口動態が変化している
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3番目の「株式市場が好調で、金より魅力あり」――一面の真
理を衝いていますが、これは金融緩和のように株価上昇をもたら
す政策の結果でもあるのです。それなら、金融緩和によって信用
膨張が起こり、普通であれば金の価格を押し上げてもいいのに下
がっているのはどういうことなのでしょうか。
5番目の「金保有者の人口動態が変化している」――これは、
金に投資するのは比較的年配者が多いのですが、そういう人たち
が亡くなると、相続人は金を売却してしまう現象のことをいって
いるのです。
一番説得力があるように見えるのは、4番目の「各国中央銀行
による金売却と貸出し」です。なかでも衝撃的であったといえる
のは、1997年11月にスイス国立銀行がその膨大な金準備を
売り出したことです。それに続いて1999年にイングランド銀
行も保有する金の大部分を売却してその資金を外国債の購入に充
当すると発表しています。
スイスの金売却のニュースが流れた時点の金価格は386ドル
――当時各国の中央銀行やIMF、BIS(国際決済銀行)など
の公的機関の保有する金準備は3万4726トンであったので、
その資産価値は4160億ドル相当となります。
その翌日、金価格は376ドルに下落するのです。これによっ
て、110億ドル以上の評価損が発生したことになりますが、そ
の後も金価格は回復することはなく、290〜300ドルの水準
まで下落したのです。
しかし、1999年末時点における全世界の通貨当局の金準備
を合計すると、3万3500トンであり、1997年当時と比べ
てもほんの少ししか減っていないのです。
その理由は、スイス国立銀行やイングランド銀行が売却した金
は、そのほとんどを他の中央銀行が買い取っていたからです。し
たがって、各国の中央銀行から金が逃避したことが金の価格下落
の原因であるとはとても思えないのです。
といっても、50年前には世界の金の70%は中央銀行にあっ
たのですが、現在ではそれが25%未満に減っているのです。そ
うであると、中央銀行が金市場の動向――たとえば価格に与える
影響もそれに比例して少なくなっているはずであって、中央銀行
主犯説には疑問が残るということになります。
それでは、何が原因で金価格は下落を続けたのでしょうか。
7月9日のEJ第2363号でご紹介したフェルディナント・
リップスと、司会者のジム・パプラバとのラジオでのやりとりで
このことが語られています。
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ジム:1990年代には金に対する需要が盛り上がりました。
需要は新規供給を上回りましたが、それでも価格は下がり続
けました。なぜそのようなことが可能だったのでしょうか。
リップス:それが可能だった理由は、ウォール・ストリートの
利口な投資銀行家たちが、金相場が弱気におちいっている時
期に金を使って利益を稼ぐ方法を考え出したことにある。彼
らは、いわゆる「金キャリートレード」を開発した。この取
引では、中央銀行がブリオンバンクに金を貸し、今度はブリ
オンバンクがその金を売却して高利回りの米国財務証券を購
入した。新しいビジネスが始まった。金鉱山会社も金を先物
で売るよう説得された。そのようにして金市場には常に圧力
がかかるようになった。しかし、中央銀行にも売却に向けて
圧力がかかっていた。
――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解らない/金
の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
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ブリオンバンクについて説明をする必要があります。直訳する
と「金地金銀行」となります。金などの貴金属を扱う銀行のこと
をブリオンバンクというのです。
しかし、日本の銀行は法令上貴金属の取引は禁止されていて、
商社がブリオンバンクの業務をしているのです。ブリオンバンク
の収入源は取引仲介手数料ですが、そのうちブリオンバンクは金
鉱山のヘッジや中央銀行からの金借り出しの仕事に手を出すよう
になったのです。ブリオンバンクは貸し出された金を売却し、そ
のドルで米国財務省証券などを購入したとリップスはいっている
のです。 ――[金の戦争/36]
≪画像および関連情報≫
●TOCOMナビ/金の特徴
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過去6000年以内に人類が産出した金の総量は約15万2
000トンと推定され、そのうち約15%が消失したとされ
ています。現在地上に存在する金は推定約12万9000ト
ンで、これは50メートルのオリンピック・プール3杯分し
かありません。世界の埋蔵量は9万トンと推定されています
が、経営面で採算が取れるのはそのうち4万2000トンで
年間2500トン採掘すると20年もたたないうちに枯渇す
ることとなります。海底などに未発見の鉱床があるとみられ
ますが、新規の産出が見込めなくなれば、地上在庫を再利用
するしかなくなり、金の希少価値はさらに高まるとみられま
す。 http://www.tocom-navi.com/guide/gold/
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2008年07月29日
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