2008年07月28日

●「スティグリッツの世銀・IMF批判」(EJ第2376号)

 「金の戦争」というタイトルで34回書いてきましたが、『日
経ビジネス』/2008.7.21号は、次のタイトルで金を特
集しています。今や「金」は旬の重要な話題なのです。
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            「ドル凋落/金本位再び」
   ――『日経ビジネス』/2008.7.21号
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 ジョセフ・スティグリッツという米国の高名な経済学者がいま
す。彼は、1993年3月、発足後間もないクリントン政権の大
統領経済諮問委員会の委員に任命され、1995年6月には同委
員会の委員長に就任したのです。
 そして、1997年には世界銀行に移り、2000年1月まで
の3年間、世銀の上級副総裁と主任エコノミストを同時に務めた
のですが、世銀在職中から当の世銀とIMFのあり方について痛
烈な批判を繰り広げたのです。
 何しろ、スティグリッツは、2001年には情報経済学という
新分野での業績で、ジョージ・アカロフ、マイケル・スペンスと
共にノーベル賞を受賞したので、彼による世銀とIMFの批判は
国際的な注目を浴びることになったのです。
 2002年には、スティグリッツは『グローバリズムとその不
満要因』という本を米国で出版し、公式に世銀・IMF――とく
にIMF批判を展開したのです。この本の日本語版は次の題名で
出版されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
        ジョセフ・スティグリッツ著/鈴木主税訳
 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 スティグリッツは、この本のなかで、IMFの推し進めた資本
市場の自由化は、米国の金融セクターのために広範な市場の開拓
に寄与した反面、その本来の使命であるはずのグローバルな経済
の安定には何ら寄与しなかったとしています。さらにIMFは、
G7の債権国の代理者であるとし、貧しい国々が貧しいままであ
るような制度設計をした米国の金融セクターに対する不満を表明
しているのです。
 世銀やIMFは、開発途上国の経済開発に対し、貿易の自由化
資本の自由化、国内の経済の自由化、民営化などのグローバルな
市場経済至上主義を押し付けたのです。すなわち、構造改革とい
う改革の強要が行われたのです。
 しかし、開発途上国にとっては、貿易の自由化による市場開放
は、国際競争力のない産業分野に壊滅的な打撃を与え、雇用体系
を破壊し、資本の自由化は銀行システムが機能していない途上国
に大混乱をもたらしたのです。
 1997年のアジア金融危機でもIMFは被害国の救済に「構
造調整融資」と称して過激な改革と自由化の措置をとることを条
件に融資を行っています。しかし、こうした自由化の押し付けは
無理が多く、かえって被害国の経済を壊してしまう結果になって
いる――スティグリッツはこのように主張しているのです。
 日本は途上国ではないし、もちろんIMFから融資など受けて
いませんが、同じようなことを米国から押し付けられ、やらされ
ていないでしょうか。いわゆる小泉――竹中改革なるものは、ま
さにこのグローバリズムの先兵であるといえます。スティグリッ
ツはこういうやり方を批判しているのです。
 また、スティグリッツは、アジア的とされる日本の縁故主義や
不透明な企業統治についても頭から否定せず、その効用を認め、
当時日本の大蔵省が提案してすぐ米国に潰された「アジア通貨基
金」の発想にも賛意を表しており、日本についてはとても理解が
あるのです。
 スティグリッツは前掲書を書くにあたって、多くの学者や世銀
とIMFの関係者などに聞き取り調査をしているのですが、この
書の「謝辞」のところで、「それらの人たちの助けなしにはこの
本は完成しなかった」として、その氏名をリストアップしている
のです。
 最初はビル・クリントン大統領とジム・ウォルフェンソン世銀
総裁の名前があり、その他に163人の学者、官僚、政治家、言
論人、世銀・IMF職員などの名前が上がっているのです。
 しかるに、その163人中日本人はたったの1名しか上がって
いないのです。それも世銀やIMFとは直接何の関係もない、ス
タンフォード大学での同僚だった青木昌彦氏だけだったのです。
 どうしてこのようなことになるのでしょうか。どうやらスティ
グリッツは、日本人のスタッフとは聞き取り調査すらしていない
のです。これについて、日本人のベテラン正規職員は次のように
見解を述べています。
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 スティグリッツ氏が日本側の代表からはまったく話を聞いてい
 ないということは、世銀やIMFの政策討議の場では日本代表
 がまったく重視されていない、プレゼンスがない、ということ
 だといえる。日本代表はイコール財務官僚だから、やはり官僚
 主導の日本のアプローチは国際経済・金融機関の世界では、ほ
 とんど認められていないわけだ。他の主要国はみなトップには
 開発や金融に一家言を持つ学者や論客を送り込んでいる。
        ――古森義人著、『国連幻想』/産経新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かに世銀やIMFに派遣されてから、ワシントンで仲間内で
英語や経済学を勉強しているようでは、政策会議でプレゼンスな
どできるわけはないのです。
 金の話と少し離れましたが、世銀やIMFにおける日本人代表
のお粗末な一面を古森義人氏の情報を借りてご紹介しました。か
つて財務官僚といえば、秀才の代名詞であったはずですが、どう
なっているのでしょうか。これでは日本の評価がどんどん下がっ
てしまいます。           ――[金の戦争/35]


≪画像および関連情報≫
 ●大野和基氏のサイトより
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  「グローバリゼーションは世界の人々に幸福をもたらすはず
  だった。だが、実際にはごく少数の金持ちがますます裕福に
  なって、格差を広げただけだった。そしてこういう結果を招
  いた背景にはアメリカの横暴がある」――2001年、経済
  活動への情報の影響について扱う学問「情報の経済学」の分
  野の功績を評価されて、ノーベル経済学賞を受賞したジョセ
  フ・E・スティグリッツ氏は、グローパリゼーションの「失
  敗」と、その「理由」についてこう説明した。
   http://globe-walkers.com/ohno/interview/stiglitz.html
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ジョセフ・スティグリッツ.jpg
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 金の戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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