ているのです。その点が国連とは違うわけです。日本の拠出金は
世銀もIMFについても米国に次いで第2位なのです。
しかし、日本が世銀やIMFにおいて目立って何かをしたかと
いうと、ほとんど何も聞こえてこないし、見えていないのです。
日本はまさに顔のない巨額出資国になっているのです。
その原因のひとつは、世銀とIMFへの日本のかかわりが年来
財務省の硬直した官僚たちの手に委ねられていることにあると思
うのです。現在、官僚の天下りの問題が問題視されていますが、
世銀やIMFの方にそれが及んでいることに多くの人は気がつい
ていないと思います。外交ジャーナリストの古森義久氏は、次の
ようにいっています。
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財務官僚たちにとってワシントンは「世界最後の桃源郷」
である ――古森義久氏
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世銀の日本人専門職員百数十人のうち、副総裁、理事、理事代
理、専務理事特別顧問、局長、局次長、多国間投資保証機関(M
IGA)長官――こういった枢要の地位のほとんどは財務官僚に
よって占められているのです。
IMFでは日本人専門職員43人のうちの14人が財務官僚で
日本人全体の3分の1を占めており、しかも、副専務理事、理事
理事代理などの要職を独占しているのです。
一般的に考えた場合、財務省や外務省の官僚でワシントン勤務
になる人といえば、英語が堪能なことは当然として、国際政治・
金融経済、外交問題などについて、欧米の大学の修士号や博士号
のレベルが要求されると普通は考えます。一般の日本人が世銀や
IMFに職を求める場合、こういうことが要求されるからです。
しかし、財務官僚の場合は、この種の条件は満たさなくても、
日本政府の出資金の特権を背景に一定のポストに優先的に就くこ
とができるのです。なかには英語ですら十分に話せなくてもワシ
ントン勤務になる財務官僚も多くいるのです。
既出の古森義久氏によると、ワシントン勤務になる官僚の派遣
人事には次の2つのパターンがあります。
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1.若手や中堅の官僚に経験を積ませる目的の派遣
2.財務省内のベテランの最後のポストとして派遣
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1については教育と経験ということであるので、英語や知識面
に問題があっても仕方がないと財務省はいうのです。そのため、
1998年から「ブルームズベリー昼食会」という名の会合を作
り、そこで英会話や経済学の研究会をしているのです。
正規のルートから世銀やIMFに入ろうとする一般の日本人に
は厳しいレベルを求めながら、財務官僚には単なるキャリアパス
のひとつとして平均3年で交代させる――その程度で国際感覚が
身に付くものでしょうか。
そもそも世銀やIMFに務めながら、英語と経済学の能力が足
りないというのはおかしな話なのです。その英会話や経済の勉強
をワシントンにいながら日本人同士でやるという――周りは外国
人ばかりなのですから、なぜその中に飛び込んで仕事を通じて英
語でも経済でも学ぼうとはしないのでしょうか。
それでいて3年経って日本に帰ると、世銀○○とかIMF勤務
とかいう箔が付くのです。若くても英語はもちろんのこと、国際
政治にも経済にも通じている若手はたくさんいるはずであり、そ
ういう人をなぜワシントン勤務にしないのか疑問に思います。
上記2に関しては、形を変えた天下りそのものであり、論外で
す。古森氏は2に関して次のようにいっています。日本で問題を
起こしたので、米国に逃がすというパターンがあるのです。
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この第2のパターンとしては、1997年に旧大蔵省の金融検
査をめぐる汚職事件で、戒告処分を受けた元金融検査部管理課
長の日下部元雄氏がその後すぐ世銀の専務理事顧問に任命され
99年には財務省のバックアップで副総裁になった。このとき
は日本人の正規採用職員の間で怒りの声が起きた。
――古森義人著、『国連幻想』
産経新聞社刊
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世銀やIMFでの財務省による人事中枢独占の慣行に対し、日
本人正規職員から次のような抗議が出ているのです。こういうこ
とは新聞やテレビはほとんど伝えないのです。
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大蔵省(財務省)からの出向職員は日本人正規職員にくらべて
語学力、専門性、倫理観、途上国の開発への熱意などではるか
に劣る。そのような官僚を資金力をちらつかせて政治的圧力に
より多数任用することは国際機関での日本人職員全体の評価を
下げる結果となる。多くの出向官僚は出向期間を長期の休暇と
勘違いしており、実績次第では常に解雇の危険にさらされてい
る正規職員とはまったく対照的な存在なのだ。
――古森義人著、『国連幻想』
産経新聞社刊
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財務省という特定の官庁が世銀やIMFを独占的に担当し、そ
れらの国際機関の一定のポストがあたかも自省に帰属しているよ
うに定期人事で送り続ける――こんなことを許しているから、巨
額の拠出金を出しながら、日本の顔の見えない国際機関になって
しまっているのです。
世銀とIMFの人事は速やかに財務省から切り離し、国会での
議論をして、どこに出しても恥ずかしくない優秀な人材を送り込
むべきであると考えます。来週は世銀やIMFについての高名経
済学者の反論を取り上げます。 ――[金の戦争/34]
≪画像および関連情報≫
●国連中心主義の幻想/プログより
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戦前、日本は国際連盟にどの国より先駆けて、人種差別法案
を提出したがあっさりと拒否された経過があり、当時の白人
優位と帝国主義中心の国連は自国優先のための組織でしかな
かった。差別的な環境の中で日本は国連を脱退することにな
る。このような歴史的な過程を経験してきていることは日本
の政治家たるものにはご存知だろうと推察するが、国連が平
和を確立する唯一の組織と認めることで果たして良いのかと
いう疑問である。
http://morimoto.mo-blog.jp/yutaro/2006/04/post_0bad.html
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