2008年07月24日

●「IMFにおける役割の変質」(EJ第2374号)

 ここで、ブレトンウッズ体制によって誕生した世界銀行と国際
通貨基金――とくにIMFの現状について、あまり知られていな
いことについて述べておくことにします。
 現在、世界銀行とIMFは米国の首都ワシントンにともに本社
ビルを並べています。しかし、その威風堂々たる外観とは裏腹に
現在創設以来の試練にさらされているのです。それは、毎年のよ
うに繰り返される世銀・IMF総会への暴力や抗議デモの激しさ
を見てもわかることです。
 IMFは、国際通貨基金という名前からわかるように、加盟国
が通貨に関して協力し、為替相場の安定を図ることで、国際金融
秩序を維持することが役割であるといえます。
 しかし、その前提は金本位制をベースに、強いドルを前面に押
し出し、経常収支赤字国に資金を補い、国際収支を調整する役割
を果たすことなのです。この前提条件によると、明らかにIMF
は、米国のための米国に利する機関であるといえます。
 ところが、1970年代に入ると、その前提条件である金本位
制が崩れてしまったのです。為替は固定から変動の相場制へと移
り、異端の是正は市場に任せればよいことになって、外部からの
調整は必要ではなくなってしまったわけです。
 本来であれば、ニクソン・ショック後においてIMFの役割は
終えるべきであったのですが、IMFはその役割を開発途上国の
経済支援に変更したのです。しかし、そうなると、世銀の役割と
あまり変わらなくなってしまったのです。
 IMFでも世銀でも加盟国の議決権は拠出金の金額に比例する
のです。IMF、世銀ともに第1位は米国であり、第2位は日本
です。とくにIMFでは米国は全体の18%を占めており、日本
は第2位ながら6%に過ぎないのです。実質的に米国主導ですべ
て決まってしまうのです。
 ここで、重要なことは、IMFの役割が、ある国の経済危機に
関して支援を行うことではないということです。しかし、韓国や
インドネシアに対してIMFは介入しています。そして、そのや
ったこととは、ちょうど日本国内で行われた「銀行に政府資金を
投入して助ける」ことと、まったく同じの先送り策以外のなにも
のでもなかったのです。
 経済危機に陥った国に対し、いわゆる「アメロリカン・スタン
ダード」の枠組みを受け入れさせることを条件に資金を投入する
やり方をIMFはとっていますが、これに関しては米国内からも
多くの批判が噴出しているのです。
 こういうIMFのやり方について、ニクソン、フォード両政権
下で国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー博士は次のよう
にいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 支援の条件として、各国に求める経済政策は厳しすぎる。すで
 に高い失業率などで苦んでいる国々をさらに締め付けるもので
 これでは(アメリカに反抗しようとする)アジア各国にナショ
 ナリズムを呼び起こしかねない。(中略)市場万能主義が世界
 を覆い尽くしてもいいのか。韓国にはこれまで独自の発展モデ
 ルがあった。それで充分うまくやってこれたではないか。この
 時期に、なぜそれに完全に代わるシステムを新たに建設しなく
 てはならないのか。            ――副島隆彦著
            『悪の経済学/覇権主義アメリカから
          いかに日本が自立するか』より 祥伝社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 実際にIMFは1965年からの30年だけでも総額1700
億ドルの資金を投入していますが、開発途上国の経済開発という
目的だけをみても、IMF融資を受けた89ヶ国のうち48ヶ国
の経済は30年間に何も向上していないことが判明しています。
 「フィフティ・イヤーズ・イズ・イナフ」という妙な名前の国
際的NGOがあります。攻撃の対象をIMFに絞っており、その
ためにこのような名前を付けたものと思われます。「50年で十
分」――IMFが発足したのは、1946年5月のことであり、
既に60年以上経っていますが、半世紀以上経過している組織は
解体せよと訴えているのでしょうか。
 このNGO組織は、IMF総会のたびに多くのNGOとともに
激しい抗議行動を繰り返すのです。途上国の経済開発は、ワシン
トンのIMFという「上」からではなく、途上国の国民レベルと
いう「下」からの発想で動かさなければ途上国の民衆の受益は少
ないという主張なのです。
 確かにIMFの途上国に対する融資というものは、その途上国
を助けるというよりも、日米欧の大銀行を助けることが狙いであ
るといえます。「50年で十分」組織のケニア人女性、ジョキ・
ジェフ氏は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 IMFが第三世界に押し付ける政策は、途上国の債務を円滑に
 し、第三世界の富が先進工業諸国の銀行へと間断なく流れるよ
 うにしている。この富の移転は第三世界の多数派の貧困層に破
 壊的な結果をもたらした。  ――古森義人著、『国連幻想』
                       産経新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 韓国の経済危機のとき、IMFは570億ドル(8兆円)を出
しているのですが、実はこの総額を米国、ヨーロッパ、日本の銀
行が融資しているのです。もっと具体的にいうと、米国とヨーロ
ッパと日本の大銀行が570億ドルという金額の資金を韓国に不
良融資残高として抱えていたということです。
 何のことはない。IMFの融資というのは、それぞれの国の大
銀行が融資あるいは政府保証債の形で出している借款を回収する
ためのお金なのです。国際NGOはそういうIMFの融資のから
くりを見抜いていて、総会のたびに激しい抗議デモを展開してい
るのです。その非難される側に日本も入っていることを忘れては
ならないのです。          ――[金の戦争/33]


≪画像および関連情報≫
 ●韓国の経済危機について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  1997年のアジア危機のため、韓国経済は大きな危機に直
  面し、大量倒産や失業と財閥解体が起こり、国際通貨基金―
  ―IMFの管理下に入った。IMFの経済支援や「朝鮮戦争
  以来の国難」を受けて発足した野党政権である金大中政権に
  よる、現代財閥の分割や大宇財閥の解体に象徴されるような
  大規模な構造改革により、危機を脱し、IMFによる支援資
  金を2001年8月までに全て償還し、当初の予定より早く
  IMFの管理から脱却した。     ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

ヘンリー・キッシンジャー.jpg
posted by 平野 浩 at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 金の戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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